テクニック裏のウラ(各種テクニックをさらに極めるためのヒント集)


 このページは、通常の教則本等では載っていないことや、通常の音楽教室、さらにはミュージシャンも、あまり教えてはくれない各種技等の裏話的な内容を書いてみました。普段、何気なく使っている技等も、見直してみると色々な要素が隠されています。
 既に認識されているものもあるかもしれませんが、よろしければ、参考にしてみてください。(順次、内容を増やしていきます)


(その1) ”ピックスクラッチ”裏のウラ(⇒1弦〜3弦で行う!)

 ・ピックスクラッチというのは、弦をピックの端(ピック側方の直線に近い部分)でこすることによって独特の効果音的なものを出す技ですが、エレキギターの初期(特にハードロック系の創世記)には多用されたものの、近年ではあまり使われなくなってしまったものです。しかし、教則本の各種技のページには、大概載っておりますし、稀にこれを使用しているギタリストもいます。

 さて、そのようなピックスクラッチの方法の説明を見ますと、たいていは”4〜6弦の巻き弦にピックをこすりつける”と書いてあります。 しかし、そのようにして行うと、とりあえずそれっぽい音が出ますが、”ゴリゴリ”とか”ジャリジャリ”といったような音にしかならず、決して往年のリッチー・ブラックモアのスクラッチのようなspacyな音は出てくれません。また、ピックが削れてミゾが出来てしまうのもイヤなものであります。

 実は、ピックスクラッチは、4〜6弦の巻き弦では無く、1〜3弦の単弦を使用したほうがカッコ良い音がするのです。
 もちろん、1〜3弦の表面はなめらかですので、単純にピックをこすりつけても、大した音は出てきません。そこで、弦が振動して音が出るためのきっかけを作ってやる必要が出てきます。
 この方法としては、ピックスクラッチの動作の最初に、スクラッチを行うのと同じピックの側方部分にて、弦を直角方向に切るように動かしてから、続いて通常通り弦に平行にピックをこすりつけて滑らすと、実にspacyなピックスクラッチらしい音が出ます。
 最初の動作は、バイオリンにおいて、弓で弦をひくような感じで良いわけですが、1〜3弦に対して斜め垂直という感じの方向で切るようにすると良いです。また、左手(フィンガリング側の手)に関しては特に弦を押さえる必要はなく、開放弦状態としてokです。
 もちろん、音を歪ませるほど好ましい音となりますし、一連の動作には色々とコツがあるので、タイミング等も含め、色々と条件を変えて実験してみてください。

 近年、あまり使われない技だけに、マスターすれば、かえってインパクトが大いにあるかも。


(その2) ”スケールポジションフォーム(シェイプ)移動”裏のウラ(⇒弦に垂直方向にも移動可能!)


 スケールを使ってアドリブ演奏を行うといった場合、(どこかの弦上にトニックのある)自分の知っているスケールポジションフォーム(シェイプ)を、keyに合わせて移動させるようにして位置を決定するわけですが、通常は弦に平行な方向にずらして(シフトさせて)、そのポジションフォームの中のトニック位置がkeyに一致するように、という行為を実施すると思います。

 すなわち、1つのスケールにおけるスケールポジションフォームは、オクターブの範囲内で(12フレットの幅の範囲内で)いくつかの形(通常は5つか6つでしょう)になるわけですが、それぞれについては、”弦に平行な方向の移動(⇒ネックまたはブリッジ方向への移動)”ということで、その使い方をとらえていることが多いものです。

 しかし、この各々のポジションフォームは、弦に平行な方向の移動だけでなく、弦に垂直な方向の移動も行えることは、意外と盲点であり、あまり利用していないかたも多いのではないでしょうか。


 fig1−1は、6弦上にトニックを持つナチュラルマイナースケールのポジションフォームの1つです。(●がトニックとなります) 
 これは、通常はナチュラルマイナースケールの基本ポジションフォーム等と呼ばれ、最も馴染みのあるものかと思います。(若いかたやジャズ系のかたには、各弦に3音ずつ配置したfig1−2のような形のほうがおなじみかもしれません)

 これを、弦に対して垂直方向に動かすということを考えてみます。つまり、各弦の音の並びを、そのまま1本高音弦側に移す(⇒6弦上の音位置は5弦上へ、5弦上の音位置は4弦上へというようなことです)わけです。
 ただし、これにおいては、3弦から2弦に移すときは、3弦と2弦の音程が他の弦とは異なるために、1フレット上げるようにするので注意です。(⇒あくまでも、レギュラーチューニング時の話ですが、他が完全4度であることに対して、2弦と3弦の音程だけは長3度になります)





 このような作業を行うと、fig2−1のような5弦上にトニックを持つポジションフォームになりますが、これは、みなさんがおなじみであろうfig2−2のポジションフォームの5弦から1弦の部分であります。
 例えば、fig1−1が5フレットから始まるAナチュラルマイナースケールであったとしたら、そのまま垂直方向に持ち上げてfig2−1の形にすると、Dナチュラルマイナースケールということになります。しかし、その状態から弦に平行に移動させて、12フレットからの位置にもってくれば、これは5弦にトニックを持つAナチュラルマイナースケールのポジションフォームということになり、fig1−1を覚えておくだけで、fig1−1とfig2−1(fig2−2の6弦以外に部分)の2通りのAナチュラルマイナースケールのポジションフォームの形がほとんど使えてしまうことになります。






 また、同様にして、さらに弦に垂直に移動を繰り返せば(いずれの場合も3弦から2弦に移動する際には、1フレット上げることには注意してください)、fig3,fig4,fig5のようになり、これらはいずれもナチュラルマイナースケールの各ポジションフォームのどこかの部分となっていることに気が付かれるかと思います。

 もちろん、例えばfig2−1では6弦上の音が不明になってしまい、また、fig1−1において1弦上に配置されていた音も無くなってしまうことにはなりますが(他の移動したポジションでは、もっと音が無くなる)、1つのポジションフォームを覚えるだけで、他のポジションフォームもかなりカバーできるということは、想像以上にメリットがあることになります。(ただし、基本ポジションフォームでのトニックの位置と、各弦の何フレットが何の音名かは覚えておくことが前提ではありますが)







 確かに、最初はスケールポジションフォームについては、各ポジションフォームの形をまる覚えするということになってしまいますし、逆にそのほうが後々のことを考えても効率が良いのですが、ペンタトニックスケールやメジャー/ナチュラルマイナースケールあたりならばともかく、さらに複雑なスケールとなると全ポジションフォームを全て覚えるのには、たいへん時間がかかるものです。
 特に、ドミナントコードで使用するオルタードテンション系のスケール等となると、使用する部分も限られた区間となるので、全てのポジションフォームを覚えていなくても十分となりますから、この”基本ポジションフォーム1つだけを覚えておいて、弦に垂直にも動かすというのはたいへん有効になります。

 ジャズ系の人ならば、当たり前のように認識されていて、使われているかと思いますが、このことはコードフォームに関しても利用可能ですので、ロック系のかたも大いに活用してみてください。(ペンタトニックスケールについても有効となります。)