<今月のトピックス2010(楽器編)>


・”今月のトピックス(楽器編)”は、楽器に関する注目すべき話題を思うままに書いてみようというコーナーです。何かみなさんの参考になればと思っております。 (尚、誤字/脱字や、誤った内容/好ましくない内容が後日発見された場合には、断り無く修整することがありますので、御了承ください。)


<目次>

(1月分) <実用的に音楽理論を学ぼう(第6回:度数による音程表記の話(その1))>

(2月分) <実用的に音楽理論を学ぼう(第7回:度数による音程表記の話(その2))>

(3月分) <実用的に音楽理論を学ぼう(第8回:度数による音程表記の話(その3))>

(4月分) <実用的に音楽理論を学ぼう(第9回:度数による音程表記の話(その4))>

(5月分) <実用的に音楽理論を学ぼう(第10回:度数による音程表記の話(その5))>



(2010年 1月分)


<実用的に音楽理論を学ぼう(第6回:度数による音程表記の話(その1)>


 2010年の第1回目は、音楽理論の世界においては、一般のかたにとって最も壁になるであろう「度数」による音程表記の話しです。

 「度数を理解し、使いこなせるようになれば、もはや音楽理論の世界に慣れ親しめたのも同然」と言われるほど、この部分は全てのカギとなるようなものであります。

 これに関しても、なるべく初心者のかたにとってわかりやすいように書いてみますので、「あまりカタイことは言いっこナシ」ということで、お願いできればと思います。
 とは言え、やはり、この項目は一番の難関と言っても良いもの。 少しずつ話しを進めていくことにしましょう。


6−1.度数とは何?


 「2つの音の間の隔たりの大きさ」のことを音程(インターバル)と呼びます。
 度数とは、この音程を表す際の単位です。

 すなわち、もう少し詳しく書けば、任意の2つの音が存在し、片方の音を基準とした場合のもう一方の音までの音楽的な距離が「音程」であって、これを表記する際の単位が「度」であるということです。


 我々の日常の世界では、2つの点(2つの部分)の間の長さを測ろうとする場合、Fig 6−1−1のように、目盛りの付いた定規(物差し)を使い、一方の点に定規の原点を当て、もう一方の位置が〜cmの目盛り位置になるか?で判断する、ということを行います。

 
  Fig.6−1−1  2点間を定規で測る 


 音楽の世界でも、同様なことを行うことが可能です。
 つまり、2つの音がある場合、その間が、音楽的な距離としてどれくらい離れているか?を測ることができるということです。

 これにおいては、Fig 6−1−2のように、音楽の世界における定規も存在し、それを使って、2つの音間の距離を測ることになってきます。

 
  Fig.6−1−2  音楽の世界でも、2つの音の間を定規で測れる 


 ここで、このようなことを読んでいくと、「音の間の距離を測ったりして、何のためになるのか?」と思うかもしれません。

 しかし、この「音楽的距離」の考え方を学んでおけば、「和音(コード)の名称を判断する場合」、「指板上で自分でコードフォームを作る場合」、また、「メジャースケール/ナチュラルマイナースケール以外の各種のスケールも理解して演奏に使う場合」、などにおいて、たいへん便利なことになるものなのです。

 従いまして、これ無くしては、音楽理論は語れないものなのです。



6−2.定規はCメジャースケール


 この音楽(音楽理論)の世界における定規の正体とは、実は、ドレミファソラシド、すなわち、おなじみのCメジャースケールです。(⇒やっぱり、ここでもCメジャースケールが大事ということでありますね。)

 よって、Cメジャースケールという定規の様子をまずは知るべき、ということになりますが、もう少し詳しく言えば、「この定規の各目盛りに書いてある数字(度数)をよく知っておく必要がある」という感じでしょうか。

 まずは、Cメジャースケールの音に順番に番号をつけますと、Fig 6−2−1のようになりますが、これが各度数の発生原理(?)と考えていただければ良いです。
 「Cが1度の音」、「Dが2度の音」といったことになりますが、「1まわり上(オクターブ上)のCの音を8度と数えること」は、後で重要なポイントとなります。(ちょっと不思議なことですが・・)


 
  Fig 6−2−1. Cメジャースケールの音に番号を付ける 


 つまり、音楽の世界には、下のFig 6−2−2のような定規が存在し、これを当てて、2つの音の間の(音楽的)距離を測れば良いと考えるわけです。


 
  Fig 6−2−2. Cメジャースケールをもとにした音楽(理論)の世界での定規 



 このように、各音名の部分に目盛りがふってある定規と考えるのですが、上記のオクターブ上のCを8度と数えることに加え、またもや音楽理論の世界ならではの不思議な現象が発生していることには注意です。

 我々が現実の世界で使う定規の目盛りにおける原点(端点)は、0mmや、0cmです。 しかし、音楽理論の世界の定規には0度(ゼロ度)というものは存在しません。
 原点は、0度では無く、1度ということになっています。

 めんどうなことですが、ちょいとガマンして、「このような事実であって、仕方がない。」と受け入れましょう。
 慣れていけば、いつの間にか抵抗は無くなるものです。



6−3.ただし、半音部分を忘れてはならない


 しかし、まだ考慮しておくことがあります。

 既におなじみとなったでしょうが、下図Fig 6−3−1のように、Cメジャースケールの各音は、全−全−半−全−全−全−半で並んでおりますから、全音程の部分には、さらに半音程で分けられた音が存在しています。


 
  Fig 6−3−1. Cメジャースケールの各音の音程 


 よって、これらも考慮して、音楽(理論)の世界の定規をより正確に書こうとしても、Fig 6−3−2のように、C♯(D♭)やD♯(E♭)といった音の度数名が不明となってしまうことになります。


 
  Fig 6−3−2. 半音部分の目盛りの度数名がない 


 ということで、この欠けている部分にも、何らかの方法で名称を付けなくてはなりません。

 そこで登場するのが、「完全1度」とか、「長3度」といった名称でおなじみの、「完全」、「増」、「減」、「長」、「短」といった、度数の数字の前に付くことになる記号のような(?)言葉です。
 これが出てくると、またもや一気に元気が無くなり、投げ出したくなる人も多いかと思いますが、基本原則さえ理解すれば、意外と簡単な概念です。

 次回は、これを説明していきましょう。

⇒以下、次回に続く


(2010年 2月分)


<実用的に音楽理論を学ぼう(第7回:度数による音程表記の話(その2)>



 今回は、前回において「音楽理論の世界での定規」と表現したモノについての、さらなる説明となりますが、まずは、これまた一般の解説とは異なるアプローチをとりましょう。


 7−1.度数の添え文字の英語名は?


 既に御存知のかたも多いかと思いますが、この定規における目盛りの名称に付いているものは、「完全」やら「増」やら「減」やら、そして、「長」やら「短」やら、何だかわかりにくい言葉ばかりとなります。

 しかし、これらの言葉の英語名を見れば、けっこうわかりやすくなるかもしれません。

 完全= perfect

 長= major

 短= minor

 増= augmented

 減= diminished


 まだ、「完全」の英語名”perfect”って何なの?という感じでしょうが、少なくとも、「長」と「短」はピンとくるのではないでしょうか?
 そう、「長」とは”major”、要は「長調」の「長」なわけです。(同じように、「短」とは”minor”で、「短調」の「短」。)

 よって、「長」が付くものは、メジャースケールやメジャーのコードに関係する音になるのかな?とか、「短」が付くものは、マイナースケールやマイナーコードに関わりのある音になってくるのかな?とか、想像ができるかと思います。

 あと、”augmented”は、”aug”という文字が付くオーギュメントのコードに関係するもの、”diminished”は、”dim”がつくディミニッシュのコードの関係かな?、なんていうことにも気づくでしょう。



 7−2.まずは1度と2度の名称から


 最初に、定規上の目盛りを、Cメジャースケールの音のみとしてみまして、CとDの2つの音について、見てみます。(Fig.7−2−1参照)

 前回までにも説明したように、この定規の原点はCの音の位置で、この目盛りの名称は「0度」ではなく、「1度」であるわけですが、正確に表すと「完全1度」という名称のものになります。
 英語表記では、”perfect 1st” ですが、通常は”1st”と書けば完全1度の意味になるものです。

 「完全」という言葉の意味は、まだ気にしないでください。(笑)


 
  Fig.7−2−1  完全1度と長2度 



 次にDですが、Dの目盛り位置は、この定規としての話ですから、あくまでも、Cの位置を原点(基準)とした場合に、全音1つだけ離れた位置という扱いとなります。

 この場合のDの位置を「長2度」と呼びます。(とりあえずは、メジャースケール上の音だから、「長(major)」であると意識しましょう。
 英語表記では、”major 2nd ”、通常は、”2nd ”でokです。
 より明確に言えば、「Cを基準とした時に、CとDは長2度の音程関係にある」ということになります。


 ここでの注意点は、CとDは、あくまでも、この、”Cメジャースケールを利用した音楽的な定規の目盛り上の話”であって、CとDのペアだけが、「長2度」の音程を形成するわけではないということです。

 すなわち、「長2度」とは、あくまでも、1全音離れた2つの音の距離(音程)の名称です。だから、例えば、Dを基準にした場合は、Eが「長2度」の音程関係にあるとも言えるわけです。
 とにかく、このCとDは、定規を説明する上での基本的な話です。(Fig.7−2−2参照)


 
  Fig.7−2−2  D基準での長2度 



 7−3.CとDの間の半音部分は?


 いよいよ、CとDの間の半音部分の目盛りの名称をいきましょう。(Fig.7−3−1参照)

 まず、このC♯とD♭のように、実際の音は同じでも名称が異なる音のペアのことを「異名同音」と呼び、何かと重要な語句となってきます。
 そして、耳に聴こえる音は同じでも名称が異なるということですから、目盛りの名称も異なってくるわけです。

 この際の最大のポイントは、”♯や♭によって、もともと何であった音が変化したか?”ということです。

 例えば、C♯とは、Cという音に♯が付いて半音上がったものですから、C♯の名称も、完全1度の変化形として表します。 要は、1度という部分は同じままで、「〜1度」と表す、という話なのです。

 ということで、「完全1度」であるCの半音上のC♯の名称は、「増1度」というものになります。


 
  Fig.7−3−1  増1度と短2度 


 同じくD♭は、「長2度」であるDの変化形(Dが半音下がったもの)で表し、「短2度 (♭2nd)」となります。

 「異名同音が、どのような場合に有効になるか?」、また、上記において、「C♯とD♭のどちらを選べば良いか?」等については、次回以降で説明いたしますが、まずは、この区別は、”コードの種類を決定する上で重要になる”といったことでとらえておいてください。



 7−4.変化名称の規則を覚えれば全てok


 7−1項でも書きましたように、「長」とは”major”のことで、メジャースケール上の音にも大いに関係があることになります。
 従いまして、まずはここで、メジャースケール上の音の(目盛りの)名称を全て書いてしまいますと、以下のFig.7−4−1のようになります。


 
  Fig.7−4−1  メジャースケール上の各音の目盛り名称 


 要は、メジャースケール上には、「完全〜度」と、「長〜度」の2種しか存在しないわけです。
 よって、これらに♯や♭が付いて、半音上がったり下がったりした位置のものが、その他の音の位置となるものです。

 ”完全は、1 4 5 8”なんていうように覚えてしまっても良いでしょう。(残りは、長と思えば良いわけです。)

 これにおいては、上述したように、「完全1度」の半音上は「増1度」、長2度の半音下は「短2度」などとなるのですが、数字部分が他のものになっても、これらの変化名称は決まったものとなります。
 したがって、数字をXで表した、以下の表のようなものを覚えれば、全ての目盛り位置の度数の名称は直ちに分かってしまうことになるわけです。


 
  表7−4−1 名称変化の様子 



 ということで、これをFig.7−4−1のそれぞれの名称に適用すれば、異名同音も含め、以下のように半音部分も表せることになります。(Fig.7−4−2)


 
  Fig.7−4−2  半音単位での各音の目盛り名称 



 これで、音楽理論の世界での定規の様子がほぼわかってきたことになるわけです。

 次回は、定規の様子の追加事項、並びに、これら度数表記の使い方での注意事項を書きたいかと思います。


 ⇒ 以下、次回に続く


(2010年 3月分)


<実用的に音楽理論を学ぼう(第8回:度数による音程表記の話(その3)>


 今回は、もうおなじみとなったであろう、音楽の世界の定規の様子の追加事項、並びに、これら度数表記の使い方での注意事項を書きます。

 要は、定規の実際の使い方といったことです。


8−1.まだまだある異名同音!

 前回、音としては同じでも名前が異なる「異名同音」というものを取り上げ、度数による音程表記においては、「どの音名がどのように変化するか?が重要である」ということを説明しました。

 前回分においては、定規におけるCメジャースケール以外の音における異名同音のみを書きましたが、異名同音は、その性質上、Cメジャースケール上の音に対しても存在します。

 例えば、完全4度であるFの音は、Eの音の半音上でありますから、E♯がFの異名同音となります。
 これを度数で表せば、E♯は、長3度であるEが半音上がったものですので、前回で書いた名称変化を適応させると、E♯は、「増3度」ということになるわけです。(Fig.8−1−1参照)


 
   Fig.8−1−1  FとE♯の音程表記 



 また、逆に、長3度であるEの音は、Fの音の半音下でありますから、F♭がEの異名同音となります。
 度数で表せば、F♭は、完全4度であるFが半音下がったものですので、これまた名称変化を適応させて、F♭は、「減4度」ということになります。(Fig.8−1−2参照)


 
  Fig.8−1−2  EとF♭の音程表記 



 ということで、この要領で行けば、BとCの異名同音も、以下のように表せます。(Fig.8−1−3)


 
  Fig.8−1−3  BとCの異名同音の音程表記 



8−2.重増と重減


 上のFig.8−1−3においては、CやDの異名同音は書いていない状態です。
 しかし、これにも、やはり異名同音は存在しまして、フラットのさらに半音下であるダブルフラットで表される「重減」や、シャープのさらに半音上であるダブルシャープによって表される「重増」等も用いられ、これに対応することになります。

 すなわち、前回の名称変化の表を、より詳しく書くと、以下のFig.8−2−1のようになります。


 
  Fig.8−2−1  重減と重増を含めた名称変化 



 ということで、定規上にこれを反映させていくと、やたらと異名同音だらけになり、収拾が付かなくなってしまうのですが、とりあえず、C,D,G,Aの音部分に書き入れたものを、以下のFig.8−2−2に示します。(ダブルシャープは、記号が無いので、]にて代用させていただきます。)

 ”ダブルフラットならば必ず「重減」というわけでもない”といったこともありますから、上記の変化の図も見ながら、十分に慣れていってください。(C♭♭は重減1度、G♭♭は重減5度といったことになります。)


 
  Fig.8−2−2  ダブルフラット、ダブルシャープを含めた定規の図 



8−3.”2音間の全音と半音の数で判断”ということ


 これで、ほとんどの場合の2音間の度数による音程表記ができるようになったはずです。

 これまでにも書きましたように、このあたりの話は、実際には、コード(和音)の構成音の表記といった場面で慣れていけば良いのですが、まずは、基本練習ということで、以下のような問題に答えることから始めても良いでしょう。
(基準音から、低い音のほうに向かう度数の表記も可能ですが、とりあえずは、基準音よりも高い方向の音までの音程とします。)


問1.Dを基準とした場合、Fとの間の音程は?

問2.Eを基準とした場合、Gとの間の音程は?

問3.Dを基準とした場合、E♯との間の音程は?


問4.Gを基準とした場合、G♯との間の音程は?



<回答>

問1.

 いずれの問題にしても、まずは、2音間に全音と半音がいくつ分あるか?を確認することが必要なのですが、その前に、実は、「度数の数字の部分は簡単に捜し出せる」という事実があります。

 問1は、DとFですので、基準であるDを1(1度)とすれば、アルファベット順に数字を当てはめて、”D(1)⇒E(2)⇒F(3)”となりますから、Fは3度の音程であることがわかるということです。 すなわち、Fは、「〜3度」ということです。(Fig.8−3−1参照)


 
  Fig.8−3−1  DとFの度数の数字部分 


 したがって、「〜3度」の〜が長なのか短なのか?、または、増なのか減なのか?といったことになりますゆえ、あとは、2音間の全音と半音の数を確認し、例の定規上の表記と見比べてみれば良いわけです。
 D−全音−E−半音−Fとなりますから、DとFの間は、1全音+1半音、つまり1全音半です。

 これに相当する3度は何かと言えば、定規上の原点Cが、問1でのDに相当すると考えれば良いことから、Cの1全音半上はE♭、要は、「Dに対するF」は「Cに対するE♭」と同じということになり、答えは、「短3度」ということになります。(Fig.8−3−2参照)


 
  Fig.8−3−2  定規にてDとFとの度数を見つける 



問2.

 問1と同じように、まずは、度数の数字探しから。

 ”E(1)⇒F(2)⇒G(3)”となりますから、Gは3度の音程です。 Gは、「〜3度」ということです。(Fig.8−3−3参照)


 
  Fig.8−3−3  EとGの度数の数字部分 


 そして、これも同じく、2音間の全音と半音の数を確認し、定規上の表記と見比べます。
 E−半音−F−全音−Gとなりますから、EとGの間は、1半音+1全音、つまり1全音半です。


 ここで注意なことは、今回も全音と半音の総計は、「1全音半」ということです。 問1のように「1全音+1半音」であっても、問2のように全音と半音の順序が逆になって「1半音+1全音」であっても、総計はどちらも「1全音半」です。

 すなわち、2つの音間で、全音と半音の出てくる順番は、度数には関係無いということであり、これは、当たり前とは言え、けっこうな重要事項となるものです。


 よって、これに相当する3度は何かと言えば、定規上で見ても、結局、問1と同じことで、答えは、「短3度」ということになります。(Fig.8−3−4参照)


 
  Fig.8−3−4  定規にてEとGとの度数を見つける 



問3.

 これは、2音間が1全音半であっても短3度にならない例であって、これまた重要です。

 まずは、以前にも書いた「もともと何の音がどう変化したか?」ということが、大いに関係するものですが、E♯ですからして、あくまでもこれはEの音が変化した(半音上がった)ものです。

 よって、このような場合、アルファベットにおいては、♯や♭等の変化記号が付いても同一のものとみなしまして、”D(1)⇒E(2)⇒E♯(2)”となり、E♯は「2度の音程の何か?」ということになります。


 
  Fig.8−3−5  DとE♯の度数の数字部分 


 そして、2音間の全音と半音の数の確認となりますが、定規上の表記と見比べます。
 D−全音−E−半音−E♯となりますから、DとE♯の間も、先の問と同じく「1全音半」です。

 でも、「〜3度」ではなく、「〜2度」であることがわかっていますから、それに注意しながら定規上の度数に照らし合わせてみるわけです。
 すると、長2度の半音上、すなわち、「増2度」であるということがわかります。(Fig.8−3−6参照)


 このように、単純に2音間の全音と半音の数で計るには注意となることもあるものです。 やはり、最初に度数の数字を求める際に気を付けるべきとなるでしょう。


 
  Fig.8−3−6  定規にてDとE♯の度数を見つける 



問4.

 これは、意外と戸惑うかもしれません。

 でも、音楽世界の定規では、原点は0度ではなく、1度(完全1度)であることを今一度確認していただければ、別にたいしたことはないはずです。

 またもや、♯は考えずに、G(1)⇒G♯(1) となり、G♯は「〜1度」ということがわかります。
 今回は、Gが基準点ですから、Gが「完全1度」、その半音上がG♯ですから、答えは「増1度」です。

 図を書くまでもないでしょう。



 このような感じで、様々な場合における度数関係でのたくさんの問いを自分で作ってトライしていくと良いと思います。
 自分なりに、その他の色々な注意点も見えてくるでしょう。

 そして、この度数による音程表記の概念も、当たり前の話に感じられるようになってくると思います。


 次回は、今回書いたことを含めての、定規の完成図、ならびに定規の便利な使い方、そして、音程表記の項のまとめです。

 ⇒以下、次回に続く


(2010年 4月分)


<実用的に音楽理論を学ぼう(第9回:度数による音程表記の話(その4)>


 4月に企画ライブを実施したあおりで、ものすごくアップが遅れてしまいましたが、4月分/5月分を一気に掲載しての、度数表記の話の続きです。 (って、もう既に6月ですが、たいへん申し訳ありません!)

 とは言え、4月/5月分で掲載するのは、実用新案もとれそうな(?)、NGS考案の便利器具の記事ゆえ、時間をかけてちゃんと書きたかった、ということもあるのです。



9−1.度数の定規の完成


 まずは、これまでのまとめということで、音楽世界の定規の完成形を載せましょう。

 各部分の度数表示を含めて、目盛りごとに記載したものがFig9−1−1です。

 ただし、ダブルフラットやダブルシャープの部分等に関しては、ゴチャゴチャしてしますので、とりあえず、♯と♭は1つずつまでにとどめます。(これに付加記載すればダブルフラット/重減あたりのものも簡単に作れますので、各自で作ってみていただければと思います。)


 
   Fig.9−1−1  定規の完成形 (クリックにて拡大します) 



9−2.超アナログ度数早見器を作ろう!


 さて、この定規の完成形を応用すると、昔の雑誌の付録的(?)、超アナログな「度数早見器」(ドスウ ハヤミキ)を作ることができます。

 要は、任意の2音間の度数が何か?を一瞬にして捜すことができる便利な道具であります。


 ということで、上記の定規の図に加え、これをさらに上に折り返すような形で目盛り部分をもう1つ並べて置いた図を作ります。

 以下のFig9−2−1がそれですが、これを、厚めのプリンター用紙にプリントアウトしましょう。


 
   Fig.9−2−1  度数早見器の図 (クリックにて拡大します) 



 
  Fig.9−2−2  厚めの用紙にプリントアウトする 


 そして、上下2種の定規の図共に、アウトラインに沿って切って、定規の図の部分のみを切り抜きます。(Fig.9−2−3 参照)


 
  Fig.9−2−3  外形に沿って切り抜く 


 このようなことで、切り抜かれた2種の(実体化した?)定規の図が出来ることになります。


 
  Fig.9−2−4  切り抜かれた定規の図 


 以上、まずは、準備完了です。

 これをどのように使うか?は、次回にて説明いたしましょう!


 ⇒以下、次回に続く
 


(2010年 5月分)


<実用的に音楽理論を学ぼう(第10回:度数による音程表記の話(その5)>


 いよいよ、前回作った「度数早見器」の使い方です。

 超アナログながら、こんなに便利なものはありません。(まあ、度数について理解すれば、こんなものを使わなくても良いわけですが・・(笑))



10−1.2つの定規を並べてスライド


 まずは、以下のFig.10−1−1のように、切り抜いた2種の定規を、それぞれの目盛り部分を密着させるようにして平行に並べます。

 これにおいて、上下の部分をあえてずらして置いているのは、下半分の定規部分に対して、上半分の部分を左右にスライドさせて使うからです!


 
  Fig.10−1−1  2種の定規を密着させて並べる 



10−2.例題にて実践!


 では、3月分の記事にて書いた例題をネタに、さっそく使ってみましょう!


問1.Dを基準とした場合、Fとの間の音程は?


 3月分にて書いた手計算(?)での度数の求め方においては、「まずは、2音間をアルファベット順にて勘定すれば、度数の数字の部分はわかる」ということを書きました。

 これは、「度数早見器」においても、残念ながら(?)同じで、度数の数字の部分は、暗算的に出しておく必要があります。 とは言え、アルファベット順にて数えるだけですから、簡単なことでしょう。
 3月分の記事と同じく、以下のFig10-2-1のようになりますゆえ、度数の数字は3で、求めるものは「〜3度」ということが分かることになります。

 
 
  Fig.10−2−1  DとFの度数の数字部分 


 次に、いよいよ、早見器の出番です。

 2種の定規のうち、上部の定規をスライドさせ、下部の定規のC(原点)の位置に、上部の目盛りのDが来るようにします。
 そして、この時、上部の目盛りがFの位置の真下の、下部の定規上にて、〜3度になっている記載を探せば良いのです。

 3度が付くものは、短3度のみです。 つまり、答えは「短3度」というわけです。(Fig10-2-2参照)


 
  Fig.10−2−2  早見器上でのDとFの度数 



問2.Eを基準とした場合、Gとの間の音程は?


 問1と同様にして、まずは、度数の数字は3です。

 定規の上部をスライドさせ、下部の原点にEを合わせれば、Gの位置の真下で3度のものは、「短3度」です。(Fig10-2-3参照)
 よって、答えは「短3度」であります。


 
  Fig.10−2−3  早見器上でのEとGの度数 



問3.Dを基準とした場合、E♯との間の音程は?


 度数の数字は2です。

 定規をスライドさせ、原点にDを合わせれば、E♯の位置の真下で2度のものは、「増2度」です。(Fig10-2-4参照)


 
  Fig.10−2−4  早見器上でのDとE♯の度数 



問4.Gを基準とした場合、G♯との間の音程は?


 度数の数字は1です。

 定規をスライドさせ、原点にGを合わせれば、G♯の位置の真下で1度のものは、「増1度」です。(Fig10-2-5参照)


 
  Fig.10−2−5  早見器上でのGとG♯の度数 



 というわけで、この「度数早見器」はいかがでしょう。

 度数の概念に慣れてしまえば、このようなものを使う必要はないのですが、まだ慣れていないうちは、度数の考え方を理解する上でも、便利なものになるかと思います。

 度数を求めるソフトなんかもweb上には存在しますが、そのようなものを使うだけでは、理屈で理解しにくいですので、こんなプリミティブな代物でも、けっこう役に立ったりします。


 次回は、もう少しだけ、今回の器具の使い方も含め、度数に関する補足事項を書いて、この項を終わりにしたいと思います。

 ⇒以下、次回に続く