<今月のトピックス2008(楽器編)>


・”今月のトピックス(楽器編)”は、楽器に関する注目すべき話題を思うままに書いてみようというコーナーです。何かみなさんの参考になればと思っております。 (尚、誤字/脱字や、誤った内容/好ましくない内容が後日発見された場合には、断り無く修整することがありますので、御了承ください。)


<目次>

(1月分) <チューブ搭載のフロアタイプ マルチエフェクターの近況>

(2月分) <基本に戻って、練習方法の特集(その1)>

(3月分) <基本に戻って、練習方法の特集(その2)>

(4月分) <基本に戻って、練習方法の特集(その3)>

(5月分) <新方式ネックジョイントのストラト製作(第1回)>

(6月分) <新方式ネックジョイントのストラト製作(第2回)>

(7月分) <新方式ネックジョイントのストラト製作(第3回: 最終回)>

(8月分) <当方の演奏の音源を公開します。(その1)>

(9月分) <当方の演奏の音源を公開します。(その2 :ライブ音源編)>

(10月分) <チューブ(真空管)による歪みの話あれこれ (第1回:チューブの歪み系エフェクター/プリアンプ回路の形式の概要)>

(11月分) <チューブ(真空管)による歪みの話あれこれ (第2回:回路図で見る、歪み系エフェクター/プリアンプ回路の構成例)>

(12月分) <チューブ(真空管)による歪みの話あれこれ (第3回:プリアンプ回路を構成する素子の解説@)>


(2008年 1月分)

 <チューブ搭載のフロアタイプ マルチエフェクターの近況>


 スウィープの記事がなかなか終わらなくなってしまった(?)ため、記事にするのがずいぶんと遅くなってしまったのですが、昨年中に、当方の生徒のみなさんのおかげで、チューブ(真空管)の回路を搭載したフロアタイプのマルチエフェクターを2種類ほど試奏できました。(楽器店でできる程度の試奏の範囲ですと、なかなか見えないところがありますので)
 つきましては、その報告をしたいかと思います。


 試奏したのは、ZOOMの”G9.2tt”、そしてVOXの”TONELAB SE”で、現在では後継機が出ていたりするものですが、現在市場にあるチューブ回路搭載のまともなフロアタイプのマルチはこの2社しか出していないので、この2種の系列で全てということにはなるのかと思います。 おそらく、後継機もそれほど音は変わっていないでしょう。


    ZOOM G9.2tt 


    VOX TONELAB SE 



 ということで、それぞれの感想を述べたいわけですが、まず残念なこととして、2機種共に、”チューブの回路で歪ませる機能は、モデリングの機能とは分離できない”ということがあります。 
 もともと、アンプモデリングの音はほとんど期待していなかったので、モデリング機能はOFFにして、チューブの回路での単体のディストーションやオーバードライブの機能で歪ませたほうが良い音が出るのでは?と考えていたのですが、それはできないものでありました。(ガックリ)

 したがって、評価のポイントは、”モデリング過程でチューブの歪みが使用された状態にて、どれくらいの音質にまで高められるか?”といったことになるものです。


 最初に、ZOOMさんの”G9.2tt”なのですが、これまた残念ながら、この音質ではなかなかにきびしいところです。
 チューブ(12AX7)を2本も搭載していながら、ほとんどチューブならではの音質の効果が現れていないようでして、これであれば、BOSSのGTシリーズのほうがマシかもしれませんです。

 モデリングでの歪みの音に、チューブでの歪みの音をミックスするような形になっているようですが、チューブのミックスの比率を少々上げただけで、明らかにサチュレーション状態(入力オーバーで音が崩れてしまうような状態)になったりしてしまうので、回路系の検討を十分に行う余裕がない状態での発売だったのでしょうか。
 過去の反省があまり生かされていないように思えて、ZOOMさん残念。

 ただし、幸いにも、G9.2ttにはエフェクトループ(EXループ)の機能がありますので、これに単体のチューブディストーション等を入れてやれば、実用的なシステムにすることは可能です。
 とりあえず、当方のRTD-1を入れて試してみましたが、G9.2ttの空間系のエフェクツをプラスしても、そこそこいけそうな感じで、これならばライブでも十分に使えそうではあります。(もちろん、ループの回路その他での音質の劣化はある程度発生しますが)

 まあ、そのようにして使うとなると、BOSSのGTシリーズ等と同じになってしまうわけですが、いずれにしても、”エフェクトループ(EXループ)の機能は、マルチエフェクターにはあるに越したことは無い”と、本題とは外れる部分にて、あらためて痛感した次第。(Digitechのものをはじめ、最近のマルチにはエフェクトループが無いものが多いので、不便なんですよね。)


 そして、VOXさんの”TONELAB SE”。
 これも、上述したように、チューブの音を使おうとすればモデリングの機能も使わざるを得ないわけですが、その音は、意外にもモデリングにしてはそこそこいけるものです。
 
 プリセットのプログラム(パッチ)にはスピーカーシミュレーションの機能が入っているので、これをOFFにしないとまともな音にならないことには注意ですが、わりと良いチューブらしい倍音の音が出ます。 モデリングで選択するアンプのタイプにもよりますが、同じVOXの電池作動の単体チューブディストーションのシリーズのものとは別の音質です。(⇒電池作動のVOXのものは、どうしてもチューブの回路でのゲインがとれず、チューブの歪みという点においては、通常のオーバードライブ系のエフェクタークラスの音質です。)

 TONELAB SE にはエフェクトループも付いておりますが、これ単体でJC等のアンプに接続して音を出しても、ライブ演奏にも何とか対応できるのではないでしょうか。(大音量で試していないので、確証を持っては言えませんが)

 1点気づいたこととして、ボリュームペダルの設定を変えていたら、パッチの割り当てが不能になるトラブルが発生しました。ソフト上のバグかと思われますが、ちょいと注意です。もっとも、後継機(TONELAB LE)等では改善されているのかも。(このトラブルは電源をOFFにしても、リセットをかけても直りません。パッチの再設定をしていたら突然直ってビックリ。)


 このようなわけで、モデリング機能がからんできてしまう以上、その音には限界があるわけですが、実用性で言えば、ZOOMさんのものは申し訳ありませんが、エフェクトループで他のエフェクターを外付けしない限り×、VOXさんのものはとりあえず△といったあたりになるのでしょうか。

 以前に、モデリング系機器の心臓部の設計をされているかたから、”メーカーは初心者にウケが良く、かつ値段も安く抑えられるような設計をせよ、と要求するのでたいへん”といった話を聞いたことがあります。
 しかし現状では、少なくとも実用的な構成を持つマルチエフェクターに関しては、複雑な仕組み、かつ高額ということで、あまり初心者用にはなっておらず、それではベテラン向きか?と言えば決してそうでもなく、何だか中途半端なものばかりになってしまっています。(1〜2万円といった価格のものでは、ライブ演奏等では使えないものですし)

 このようなことの裏には、ラインでのレコーディング対応用やネット上での公開用の音源での音と、ライブ演奏用の音とのギャップにて、”好ましい機器とは何か?”が、よりわかりにくくなってしまっているということもあるように思いますが、とりあえずは、ライブ演奏用と特定して、初心者でも使いやすいようなものが安価で販売されることを望むところです。


 何十年も、これだけ苦労してきたにもかかわらず、未だに初心者のかたが簡単に良い音を出せる状況が作れないというのも妙な話かと思ってしまいますが、やはりまずは企画する人のセンスの問題でもあるよねぇ。
 結局、高価なチューブのヘッドに、これまた高価なブースターをかまして、極シンプルな曲ばかり演奏している若者を見ると、私はちょっと悲しい。


(2008年 2月分)

 <基本に戻って、練習方法の特集(その1)>

 昨年のこのコーナーにおいては、スウィープ奏法等に関して書かせていただきましたが、スウィープのようなものはあくまでも応用テクニックであり、練習方法等も含め、各種基本事項を理解していてこそ可能となり、また、その上達も早いことになるものです。

 そこで、今一度、基本的な内容に戻りまして、今回から数回に渡って、日々の練習方法に関することをあらためて書いてみたいと思います。 当サイトの他のコーナーやトピックスで既に書いてあることとも重複するかと思いますが、さらなる詳細も含めて解説してみます。



1.日々の練習の流れこそが重要


 ギターやベースを始めてから、少なくとも最初の2〜3年は、毎日練習を継続することが必要で、1日でも間が空いてしまうと、とたんに後退してしまいがちです。
 したがって、日々練習を絶やさないことが必修となってきますが、さらに毎日の練習をどのような流れで行なっているか?は、上達のスピードを決める要因にもなり、非常に重要です。

 ”まずはフィンガリングやピッキングの基礎練習を出来る限り長く行って、時間が余ったら曲の練習”といった人もいらっしゃるでしょうし、その逆に、”最初から曲の練習に入って、気が向けば基礎練習”という人もいるでしょう。

 また、”基礎練習は最初の1年でみっちりやったから、今は曲の練習のみ”、なんて人もいるかもしれませんし、既にバンド活動を行っている人などでは、”とりあえずはスタジオやライブで弾くべき曲の練習で手一杯で、じっくりと基礎練習をやる時間など無い”、といった場合もあるかもしれません。


 しかし、まず重要なこととして、”フィンガリングやピッキングの基礎練習は、楽器を続ける限りは毎日行うべき”ということがあります。
 ”基礎練習は、楽器を始めた最初だけ行えば良い”と思われがちですが、実は一生付いてまわるものということでして、これらを通じて、色々な部分を絶えずチェックしていくことが、上達への近道、そして演奏技術のレベルの維持につながるものとなります。

 よって、そのような意味も含め、一日の練習は、次のような流れで必ず行うようにすると、大きな効果を得ることができるかと思います。


     ”基礎練習” ⇒ ”曲の練習”


 これは当たり前、かつ単純なものですが、意外に実施していないことであるかもしれません。
 これが意味する最も重要なところは、”この逆の順序ではあまり好ましくなく、毎日最初に基礎練習を行ってから曲の練習に入れば大きな効果が出る”ということです。

 もちろん、”基礎練習”及び”曲の練習”のどちらか片方だけの実施でも、あまりよろしくなくて、”この順序で両方がペアになって行われない限り、本来出るべき効果が出ない”ということでもあります。

 まあ、簡単に言えば、”一日の最初には、準備運動/ウォーミングアップをある程度行ってから曲の練習に入ったほうが、何かと良いことが多いぞ”といったことになるでしょうか。


 ということなのですが、まず、基礎練習の具体的な内容については、実施するべき最低限の項目及び事項として、次のようなものが挙げられます。

[フィンガリングの練習]

 ・クロマチックパターンでの練習
 ・メジャースケールでの練習

[ピッキングのみの練習]

 ・単一音でのオルタネイトピッキングの練習



 そして、曲の練習に関しては、次のような手段で実施すると、遥かに早く、曲を弾けるようになるものです。(いつも書いていることばかりですが)

・メトロノームを使用してスローテンポから徐々にテンポを上げていく

・可能な限り録音して聴き、問題点を改善していく


 以上、項目は少ないように見えますが、それぞれは多くの重要事項を含んでおります。(⇒基礎練は、”量より質”ということです。 これ以外については、曲の練習の中で随時実施可能という理由もあります。 )

 それでは、上記のそれぞれの項目/事項の解説を書いていきます。


2.クロマチックパターンでのフィンガリング練習

 まずは定番ですが、”クロマチックパターン(半音階パターン)でのフィンガリング練習”は必修であります。 EX.2−1に、2弦上における5フレットからのクロマチックパターンでの1例を挙げます。(⇒ベースの場合も弦の本数に合わせて適用させていただければ、同様に実施できるものとなります。)
 これを弾く際のピッキングに関しては、オルタネイトピッキングを基本としますが、フィンガリングのみに集中するために、ダウンピッキングのみということでも良いでしょう。


    EX.2−1 


 極端なことを言えば、”クロマチックパターンさえ行っておけば、メジャースケール等でのフィンガリング練習はサボッても良い”といった感じともなるのですが(⇒スケール練習的なものも、曲の練習の中で、けっこうできることになるからです。)、とにかく、それほどクロマチックパターンは全ての基本となり、あらゆることにつながっていきます。

 これを怠ったばかりに、後日泣きを見ている人は非常に多いですぞ。(クロマチックパターンで弾き過ぎて、腱鞘炎になったといった話もあまり聞きませんし、準備運動としてはやはり最適でしょう。)


 教則本等においては、クロマチックパターンについて、下のEX.2−2〜EX.2−4のように、弦移動を含む様々なバリエーションが載っていることが多いものです。
 要は、色々な運指で、同一弦あるいは他の弦に色々な方法で移動しながら、各指を均等に使いながら弾き続けるということになりますが、これにおいては、重要ポイントを把握した上で行わなければ、いくらやっても全てがムダに終わってしまう恐れがあることには、くれぐれも注意です。



  EX.2−2 



  EX.2−3 



  EX.2−4 


 ということで、把握するべき重要ポイントを以下に挙げていきます。



2−1.クロマチックパターンでの練習の目的

 まずは、このパターンでの練習の目的を明確につかんでおくべきです。

 クロマチックパターンでのフィンガリング練習はあまりに定番のものなので、プロのかたでも、その意味をあまり考えずに、”ウォーミングアップとして、とにかく実施すべき練習”ととらえて、義務的に流しているだけの状況も多いようです。

 しかし、クロマチック練習は、決して”夏休みの朝のラジオ体操”のような義務事項ではなく、重要ポイントを意識しながら実施すればするほど、その本来の効果も出ようというものであります。


@ いかなる場合にも、4フレット幅(以上)で均等に指が開いておける状態を作る

 まずは、これが最大の目的です。
 押弦していない時にも、常に4フレット幅で指を開いておくようにすると、将来的に良いことがたくさんあります。

 例えば、Fig2−1−1に示すようなCメジャースケールの1オクターブ分を弾く際にも、最初から指を4フレット幅で均等に開いてスタンバイさせておけば、スケール上の全ての音は、各指を下ろして押弦するだけで、直ちに出すことができます。(⇒押弦していない時でも、各指をそれが担当するフレット位置の上方に配置し、スタンバイさせておくということです。)


  


 もし、指が4フレット幅の均等開きになっていなければ、イチイチ指を伸ばしたり、手首の位置を変えながら押弦しなくてはならなくなりますから、これでは、弾く速度を上げることや、各音をきれいにつなげることができなくなる恐れが高まります。

 指板上のポジションフォームによっては、さらに指を開いて5フレット幅での対応となる場合もありますので、まずは4フレット幅が出来ていなければ、どうしようもないというわけです。


 また、ペンタトニックスケールを多用するギタリスト等では、小指を使わずに残りの3本の指でのフィンガリングで対応する場合が多いものですが、下のFig2−1−2に示すように、人差し指と薬指で4フレット幅で開く必要のある部分も存在します。(プリング・オフを使う場合等を想定すれば、あらかじめ人差し指と薬指で4フレット幅で開いていたほうが良いといったことになります。)
 よって、なおさら人差し指〜小指での4フレット幅開き程度は出来ていないと、対応不可となってしまう可能性があるということです。

 コードワークを連続して行う時等は別として、”常に少なくとも4フレット幅に指は開いて、そのまま必要なポジションに移動する”といった体勢を作るように心がけましょう。


 



A 各指を独立して、自由に動かせるようにする

 これが次なる目的です。 当たり前のように思えますが、応用性のあるフィンガリングということに関しては、本当に重要なこととなります。

 例えば、上記のFig2−1−1で示しましたように、メジャースケール等の一般的なスケールの指板上のフォームでは、各弦ごとに見ると、配置される音は3つずつですので、必ずどれか1本の指の担当フレット位置は空きとなります。
 このFig2−1−1の4弦上で見ると、薬指の担当位置がありませんので、小指で押弦動作を行う際には薬指が小指と同時に動いていてもokとなります。 すなわち、ここの部分については、小指と薬指は分離して動作する必要が無いわけですので、この2本の指を独立して動かす練習にはなりません。

 メジャースケールを使う限り、このような状況は常に存在しますから、”各指を独立して自由に動かす”という点では、全てにおいて各指を1本ずつ動かす必要のあるクロマチックパターンでの練習のほうが、ある意味ハードなものとなります。

 しかし、逆に言えば、”大は小を兼ねる”で、クロマチックパターンで十分な練習を積んでおけば、メジャースケールのフィンガリングなど軽い、なんてことになってくるのでは?
 やはり、何かとクロマチックパターンのほうが効率が良いことになるものです。


B どのようなフィンガリングテクニックにも柔軟に対応できるようなフォームを確立する

 これは、グリップのフォームの詳細等にも絡んでくる話となりますが、フォームを変えずに、演奏時に使われる各種のフィンガリングテクニックに直ちに対応できれば、これまた効率が良いことになります。

 よって、クロマチックパターンでの練習時に、このフォームも確立するように努めれば良いわけで、少なくとも、シェイクハンドグリップにて人差し指から小指までの4本の指を4フレット幅で配置した好ましい体勢を作っておけば、一般的なハンマリング・オン、プリング・オフ、そしてチョーキング等が絡むフレーズにはほとんど直ちに対応できるはずです。(極端に指を開く場合や、特殊奏法等の場合を除いてですが。 →これらには、クラシックスタイルのグリップでの好ましい基本フォームを作っておけばだいたいok。)

 このような意味でも、クロマチックパターンでの練習は意義があるわけです。 応用性の高い基本フォームさえしっかりと作っておけば、その後にどのようなものに出合っても短時間で対応できますから、これは何よりも重要なことであるかもしれません。(⇒最初に苦労しておけば、あとで楽ができるってことです。)



 以上のようなことが目的となりますが、次に、実際に弾いていく際の注意点を挙げます。


2−1.実際に使用するグリップ方法で弾かないと意味がない

 ネックのグリップの方法には、シェイクハンドスタイルのグリップとクラシックスタイルのグリップの2種が存在しますが、クロマチックパターンでのフィンガリング練習(また、その他のパターンの練習でも)を行う際には、通常自分が使うグリップにて行わないと意味がないことになってしまいます。

 ギターを始めた最初の頃は、どうしても指が開きにくいので、クラシックスタイルのグリップで弾きがちで、そのままずっと基礎練習はクラシックグリップで行っているかたをよく見かけますが、実際に曲を弾く場合にはシェイクハンドということであれば、基礎練習もシェイクハンドで行うべきです。(チョーキングを行う際には、やはりシェイクハンドグリップのほうが有利となりますので)


 理想的には、両者のグリップにて練習すれば良いわけですが、4〜6弦においてはシェイクハンドスタイルではなく、クラシックスタイルのみで行っているかたもいらっしゃいますから、とりあえずは、”少なくともチョーキングを多用する1〜3弦はシェイクハンドスタイル/クラシックスタイル両者で行っておくべき”となるでしょうか。

 もちろん、ベースの場合には、全ての弦においてクラシックスタイルのグリップ主体でも構いません。


   シェイクハンドスタイルのグリップ 


   クラシックスタイルのグリップ 



2−2.できるだけゆっくりと弾く

 基本練習や曲の練習において、どうしてもいきなり速く弾こうとしてしまう人は多いです。

 しかし、よほどシンプルなパターンならばともかく、通常はいきなり速くは弾けないでしょうし、あるいは、速く弾けているつもりでも、フォームが崩れた状態で不正確なリズムになってしまっていることが多いものです。

 いかなるフィンガリングパターンにおいても、各場面での押弦の状態や、その他のフォームの状態を作るための各部の力の入れ方等は、手や腕、そしてこれらに動作命令を出すことになる脳に、しっかりと覚えこまさねばならないことになりますが、これはまずはゆっくりと弾くことによって達成しやすくなるはずです。
 いきなり速く弾いたのでは、各場面は一瞬にして通り過ぎてしまいますので、先に書いた”指を4フレット幅で開くこと”の感覚も含め、なかなか覚えられず、再現性が向上しません。


 これに関しては、メトロノームを使わなくても良いですから、可能な限り、1音1音ていねいにゆっくりと弾くことから始めてください。(EX.2−1の場合、テンポ60以下という感じ)


2−3.一度押弦した指は、その位置から離さない


 例えば上記のEX.2−1を弾く場合は、一度押さえた指はその押弦位置/フレット位置を保持したまま、次の指での押弦を行うことを基本と考えたほうが良いものです。
 複数の指で1本の弦を同時に押さえると、ビビリ等の無い安定した音を出しやすくなるわけで、ベースの場合はなおさら実施すべき事項となりますが、ハンマリング・オンを行う際等にはこのようにしないと音がうまく出ないということや、リズムの安定にもつながるといったことも、その理由となります。

 特に、親指と人差し指及び中指あたりで、ネックを上下からはさむようにし、支点的なものを作るクラシックスタイルのグリップにおいては、この”押さえたままにしておくこと”は、自然と使っているのではないでしょうか。(⇒こうしないと、薬指や小指の押弦時に非常に不安定になってしまいますので)


 下に、EX.2−1において、人差し指から1フレットずつ順番に押弦する様子を示します。(画像では、様子がよくわかるように、スタンバイ時の指板から指までの距離を高めにとっていますが、実際にはもっと低い位置でスタンバイさせたほうが、より無駄な動きを無くせて良いことになります。 また、シェイクハンドスタイルのグリップとしてありますが、クラシックスタイルのグリップ使用時でも同様です。)


   人差し指押弦時 

  

   中指押弦時 

  

   薬指押弦時 

  

   小指押弦時 



2−4.小指まで行ったら、一度止まって手全体を眺めてみる

 これら、ウォーミングアップ的な基本練習としてのクロマチックパターンでは、何よりも運指とフォームの精度を上げることが重要です。
 よって、EX.2−1で小指まで押弦したら、その状態のまま一度止まり、自分の目で見て、その時のフォームの状態に問題が無いかどうかを確認するべきです。

 確認すべき内容は、以下のようなものです。


    確認項目 


 @ 各指は均等間隔で開いているか?

 シェイクハンドグリップ/クラシックグリップ共に、やはり各指は均等間隔で開いた状態で押弦することが必要です。
 初心者のかた、あるいは、これまでフォームにあまり気を使ってこなかったかたは、中指が薬指に近づいてしまって、4本の指が均等に開いていないといったことが多いものです。

 均等間隔で開いていないと、いざ各指のフレット位置での音を出そうとした際に、フレット上に指が被さってしまったり、または、フレットから遠くの位置で押さえ過ぎていたりして、しっかりした音が出ない恐れが高くなります。


 A 各指共に指先の同じ位置で押弦しているか?

 通常の押弦時でも、もちろんですが、ハンマリング・オンを実施する場合等には、毎回正確に指先の好ましい位置で押弦するようにしないと、音量の低下を招いたり、あまり指の腹に近い部分で押弦すると、ミュート状態に近くなって音を止めてしまうこともあります。
 また、次のBのことも含め、指板に対して垂直方向に力を加えられるような指先の位置で弦を押さえないと、チョーキング時のように弦を押し上げたり引っ張り下げたりしてしまって、ピッチ(音の高さ)がズレてしまうことになります。

 したがって、各指共に、指先の適した位置で押弦しているかどうかはチェックすべきでしょう。

 各指の指先位置を並べて見て、あまり凹凸がなく直線上にそろっていればokです。 慣れないうちは、小指あたりは指の腹で押弦してしまって指先が他の指よりも飛び出してしまったりするものですが、気がつくたびに修正していけば次第に良好になっていくはずです。


 B指板に対する指の角度は良好かどうか?

 押弦しながらの指の腹部分での弦のミュートや、チョーキング時の動作のしやすさ等に関連して、指板に対する指の角度は重要です。

 とりあえず、人差し指については、押弦している弦よりも高音弦側の弦は、できるだけ指の腹でミュートするようにするべきですし、各指を寝かしぎみにしてチョーキングを行わないと、戻す際に、指先に上の弦が引っ掛かってノイズが出てしまったりすることになります。

 よって、基本的には、”適度に指先を寝かす”ということが大切となりますので、各指共に好ましい角度(30°〜60°程度)になっているかどうか?を繰り返し確認してみてください。(もちろん、コードフォームを押さえる際には、セーハの体勢等を除き、指は寝かさずに立たせることが多くなります。)



2−5.戻りのパターンでは、全ての指で押さえてから、1本ずつ離していく

 下のEX.2−5−1のように、小指から人差し指までを逆行するパターンにおいては、4本の指全部で一度押さえてから、小指から順次1本ずる離していくようにすることを基準に考えたほうが良いです。


   EX.2−5−1 


 この理由としては、上記2−3項の内容と同様に、”1本の弦はなるべく複数の指で押さえたほうがきれいな音が出る”ということと共に、”プリング・オフでの指の動作”あたりを考えてみれば、わかるかと思います。

 例えば、薬指から人差し指へのプリング・オフの動作においては、薬指で押弦した状態にてピッキングした後、薬指でプリング・オフの動作を行う時には、人差し指は既に押弦している体勢にしておかねばならないわけで、このような場合への対応のためにも、複数の指で押さえてから離すということを基本としたほうが何かと良いものです。

 もちろん、実際の演奏においては、常にこのようなことができるわけではなく、前後の運指状況によっては、指1本ずつで押弦することになるケースもあります。 しかし、複数の指で1本の弦を押さえるようにすることは、リズムの安定等にもつながってくるものですから、やはり、なるべく心がけたほうが良いものとなるでしょう。


 

 EX.2−5−1は、この体勢からスタートするように努める



 また、下のEX.2−5−2のような、弦を移動しながらの逆行パターンにおいても、次の弦への移動時には、次の弦を一度4本の指全てで、すばやく押弦した後、小指から順次離していくようにしたほうが良いわけです。
 これは、”必ず行わなければならない”ということでは無く、”可能な限り”ととらえていただければけっこうですが、リズム面も含め、確実に安定感のある演奏につながります。

 ”4本の指で一気に押弦する”ということで、一見たいへんそうに思えるかもしれませんが、4フレット幅で均等に指を開くことさえ出来れば、意外に簡単に実施できるものです。

 
  EX.2−5−2 



 以上、極めてシンプルにみえるクロマチックパターンでのフィンガリング練習も、非常に奥が深いことがおわかりいただけましたでしょうか。

 上述したような内容をおさえることを考えれば、EX.2−1のような、たった1箇所での練習だけでもけっこうな時間を要するものとなってきますから、基本練習に当てる時間があまり無い時などは、これのみでも良いでしょう。
 不完全な状態で何となく多くのパターンをやっても、あまり意味がありませんから、やはり、基本練習は、”最小限のネタにて、短時間で最大限の効果を得られるように工夫するべき”というものです。


 それでは、次回は、グリップのフォームの重要事項の補足と、メジャースケールによる練習パターンの解説あたりを書こうかと思います。


 ⇒以下次回に続く


(2008年 3月分)

 <基本に戻って、練習方法の特集(その2)>


 先日、クラシックギターにてドイツに短期間留学されたかたに、お話をきく機会がありました。

 その時、”ドイツでのギターの指導内容で、印象に残ったことはありませんか?”という質問をしてみたのですが、そのかたが言われたことは、”各種フィンガリングにおいて、どの指を使ってどのような順で使うべきか?等について、かなり詳細な説明/指導を受けたが、これは日本ではあまり無かったことであった。”ということでした。

 そう言われて思い出したのですが、私もこれまで、都内及び近郊におけるエレキギター教室/スクールの様子を色々と聞いてきましたが、このような超基本的なことに関して、詳細な説明を行っているところは意外に少なかったのです。
 それだからこそ、当方では、このあたりに力を入れようと思ったという経緯もあるわけですが、やはり本場の国では、ちゃんと指導しているんじゃん、と思った次第であります。(⇒このあたりが、日本のエレキギター演奏の発展性における欠点か?)


 ということで、そんなことも気になる今日この頃、今回は、まず、ネックのグリップとフィンガリングにおける隠れたポイントの話からいきたいかと思います。


3.フィンガリングとグリップにおける隠れたポイント


 1〜2項の補足的な話として、フィンガリング時とネックのグリップ時に、ポイントになる事項を2つほど挙げておきたいかと思います。


3−1.指を動かす際には、根元の関節主体で行うとムダがなくなる

 初心者のかたでは、フィンガリングの動作において、指の第二関節を主体として、ここから先の指の上げ下げで行っているかたが多く見られます。
 しかしこれでは、指先がより大きく上がってしまい、無駄な動作を増やしがちとなってしまうことに気づかれていらっしゃるでしょうか?

 この問題に関しては、指の根元の関節の動きを主体とし、他の指の関節は幾分固める(固定する)ようにした上で、指全体での上げ下げを行うと、指先は指板上であまり上がらずに、最短距離で次の場所に行きやすくもできます。

 下の画像に、一例として、クラシックスタイルのグリップでの中指の上げ下げの動作状態を示します。(⇒画像では、中指をよく見えやすくするため、薬指と小指は引っ込めた状態としてあります。 実際には、前回説明したように、4フレット以上の幅で4本の指が均等に開く体勢が基本となります。)


  


  



 また、この方式を使うと、指を動かす際に、手首や腕にかけての広い範囲の神経や筋肉を使うことになり、負担が分散しますので、長時間の動作でも疲れにくくなるものです。
 第二関節の動きを主体に行うと、下に示す画像のように、指先が大きく上がってしまうだけでなく、動作に関して指に集中した部分のみを使うことになりますから、バテやすく、長時間安定した動作を行えなくなる可能性も出てきてしまいます。

   


 もちろん、これはシェイクハンドグリップ/クラシックグリップ両者で共通したことになりますが、この動作をマスターすれば、スムーズな運指によるかなりのスピードアップ、そしてノイズ音の低減等も図れるはずです。


3−2. 1弦や2弦押弦時にネックと手の平の間に余裕を設ける

 これも、シェイクハンドグリップ/クラシックグリップ両者で共通です。

 1弦や2弦の押弦時に、ネックの端部に指や手の平部分をぴったりと付けた状態で押弦している人がよくいらっしゃいます。
 しかしこれでは、他の弦の押弦に移行する際に手首全体を動かして行わねばならず、各弦を頻繁に移動する場合等には、スムーズな動作の妨げとなってしまいます。

 このような場合、指板のエッジ(端部分)と手の平の間に十分な余裕を作っておけば、4弦〜6弦等への押弦に移行する際にも、指を主体とした移動で行うことができ、手の平や手首全体の動きをあまり使わなくても済むことになりますから、効率が良く、臨機応変に対応できるフィンガリングを達成できます。

 ぜひ、現在のフォームをチェックし、検討してみてください。


   

  


 このようなことで、上記のポイントは、マスターしておけば、かなり有効な要素となるかと思います。(もっとも、無意識にも、このようにしている人も多いかもしれませんが)


 ちなみに、前回書いたことも含め、ここで述べている各種フォーム等に関しては、”これらを完全にマスターしておかなければ曲をうまく弾くことはできない。”というわけではありませんです。
 基本が十分に出来ていなくても、弾けるような曲はありますし、あくまでも曲の練習を進める中で徐々にマスターしていって、完成度を高めていただければ良いものです。

 とりあえずは、無視するのは良くないけれど、あくまでもマイペースで進めて行ってください、ということです。(と言うか、数年かかるような内容のものもありますので)



4.メジャースケールでの練習


 スケール練習は、ピッキングする弦の移動時の動作も含め、結局はフィンガリングとピッキングの総合練習となるものです。

 まずは、下図のような4〜5フレット幅の範囲で分割したメジャースケールの色々なポジションで行うもので良いでしょうが、これらにおいては、トニック(スケールの先頭の音)から、オクターブ上のトニックまでといっただけのポジションフォーム(シェイプ)ではなく、各ポジションフォーム共に、弦全てに渡って、めいっぱいの音を加えた形にしてあるところが大切なポイントです。(⇒ペンタトニックスケールは、音数が少ない分、フィンガリングの練習の効果が低いので、総合的な基本練習としては、メジャースケールを利用したほうが良いです。)

 4弦ベースの場合は、1弦と2弦部分をカットしていただければOKです。









 ●:トニック



 例えば、これらの1つでCメジャースケールでのものを fig.4−1に挙げますが、最も低い音は6弦の1フレットであるFの音としてあります。
 この中において、6弦3フレットをトニックとすれば、これは直ちにGミクソリディアンスケールのポジションフォームの1つとなりますし、最低音の6弦1フレットのFをトニックとすれば、これはFリディアンスケールのフォームとなってくるわけで、このような範囲でのフォームでとらえたほうが、単にメジャースケールの練習だけに終わることのない、応用性のあるものになるということです。(⇒後で楽ができるということです。)


  


 ということで、これにて、フィンガリング&ピッキング練習をするわけですが、これらのフォームをただ下から上へ、あるいは上から下へ弾くだけでは不十分です。

 その理由は、実際のアドリブの際に、フォームの途中から弾けなくなってしまう恐れがあるためです。

 要は、ただ全体を通して弾いているだけでは、一番下や一番上の音から弾かないとフォーム全体の形を思い出せなくなる、ということなわけですが、この対策としては、下のようなパターンにて、フォーム内を上ったり下がったりを繰り返しながらスケール練習を行うようにすれば、各部の様子を完全に暗記でき、いかなる所からでもスケールを弾き出せるようになってくるものです。(⇒教則本等にもよく載っているものかと思います。)


 


 


 最初はたいへんでしょうが、慣れれば、勝手に指が動くようにもなりますし、また、このままでアドリブ時のフレーズネタにもなりますので、一石三鳥くらいにはなるはずです。

 毎日、ウォーミングアップ時に、クロマチックパターンと共に、上記のような上り/下りのパターンで全てのポジションを1回ずつ弾き、同時にマイナスワン(ギター用カラオケ)等を使ったアドリブの練習も行い、1年も経てば、各ポジションは自然と覚えてしまうでしょう。
 そして、各ポジションを連結させ、指板全体に渡るメジャースケールの音の分布も見えてくることかと思います。


 また、ナチュラルマイナースケールも、トニックの位置が異なるだけで、メジャースケールと同じフォームになりますので、とりあえずは、どちらか一方での練習で良いです。(洋楽ロック系ではマイナーkeyの曲が多いので、メジャースケールよりもナチュラルマイナースケールを使ったほうが良いかもしれません。)


 クロマチックパターンでの練習は必ず行うとして、時間に余裕があれば、このようなメジャースケール/ナチュラルマイナースケールでの練習も行ってみてください。(上記のもの以外の様々なパターンにて行っていただいても良いです。)



 次回は、ピッキングのみに絞った練習の話、及び、曲の練習時のポイント等を書いてみたいと思います。


 ⇒以下、次回に続く


(2008年 4月分)

 <基本に戻って、練習方法の特集(その3)>


 練習方法特集、今回で最後です。

 最終回は、ピッキング練習に関しての追加事項、そして、曲の練習における注意事項に関して書いてみたいと思います。


5.ピッキングのみに絞った練習


 前回書いたスケール練習は、フィンガリングとピッキングの総合練習となるものでしたが、一般的な話として、練習においては、本題と関係の無い要素をできるだけ排除し、中心となる事項に絞って行ってみると、良い結果を生むことが多いものです。(⇒”必要項目のみ、まずは切り離して練習してみる”ということです。)

 このような考え方に基づき、ピッキングの練習というものを考えると、以下のEX.5−1に挙げるようなものは、極めてシンプルながら意外にも効果的だったりします。


 方法の概要としては、メトロノームに合わせて、1つの音のみを4分音符、8分音符、16分音符でそれぞれ2小節ずつ連続して弾き、これをサイクル的に何度も繰り返すというもので、遅いテンポから次第に速いテンポに上げていって、どのあたりまでのテンポまで安定して長時間弾けるか?といったことがまず第一の目標です。

 ダウン/アップ交互(ベースの指弾きの場合は、2本の指交互)のオルタネイトピッキングで弾くことを基本としますが、少なくとも、4分音符の部分はダウンピッキングのみとし、拍のウラ(8分単位でのウラ)では、アップピッキング方向での空ピッキングを意識して入れるべきとなります。
 16分音符の部分のピッキング動作を基準と考えれば、理屈的には、8分音符の部分もダウンピッキングのみということにもなりますが、このあたりは臨機応変に対応してください。(⇒常に、理屈どおりの一定動作でなくてもだいじょうぶではあります。)



  EX.5−1  ⇒PowerTab ファイル


 テンポが速くなれば、当然16分音符の部分が難しくなりますが、逆に、テンポが遅い場合は、4分音符の部分を安定して弾くことがむずかしくなること等には注目です。
 また、一定のテンポの中でも、16分音符部分になってピッキング動作が速くなると、弱いピッキングになって音量を下げてしまいがちですが、音符の種類に関わらず、常に音量を一定に保つということにも必ずトライしてみるべきです。

 さらに、16分音符の連続から最初の4分音符に戻る際には、けっこうコントロールが難しかったりするはずですから、非常にシンプルなパターンとは言え、決して侮れないでしょう。

 何と言っても、1つの音を、音量的にも音質的にも、長時間安定して弾き続けることは、最も難しいことの1つであったりするわけで、それは、プロ的技術の基本中の基本でもあります。


 ということで、これを毎日行っていれば、次第にテンポの上限値が上がっていき、半年も続ければ、初心者のかたでもテンポ130程度までは行けるかと思います。

 ただし、これはあくまでも同一音を弾いているだけですから、実際の曲のフレーズ等において、弦を移動することが入るような場合には、その上限値のテンポで弾けるとは限らないものです。
 よって、実際の曲で弾けるテンポとは、上記のパターンで出せる上限値から20くらいひいて考えていただければ良いかも。



6.曲の練習のポイント

 ここで今さら書くこともないかとは思いますが、念のため、曲の練習を行うに当たって注意すべきこと/認識しておくべきこと等を、聴き取り作業に関すること等も含めて挙げていきましょう。


6−1.コピー曲の練習におけるポイント


6−1−1.量より質


 ギターやベースをうまく演奏できるようになるためには、できるだけたくさん曲のコピーをするのが一番の早道なわけですが、ポイントは、この”たくさん”ということの中身、それが大事です。

 私のこれまでの経験から言えば、曲をおおまかにコピーしただけで済ましてしまうことをずっと続けていても、何もしないよりはマシとは言え、本当の意味での上達にはあまり貢献しないように思えます。
 やはり、曲数は少なくても、時間をかけて細かいところまでじっくりとコピーしていったほうが、得るものは大きいという気がします。

 例えば、ギターにおけるブラッシングミュートや、ベースにおけるゴーストノートの類等は、スコア譜上に全てが正確に記載されていないことが多く、これらをいかなるタイミングで入れると効果的か?カッコ良いか?といったことは、実際の曲を細かく聴きこんでいかない限り、なかなかつかめないものです。
 よって、このような意味でも、1曲について時間をかけてコピーしていくことは、非常に大きな意義があるものでしょう。


 ただし、”1つの曲を(できる範囲で)完全に近くコピーしなければ次の曲に進めない”、というわけではありませんので、数曲のコピーを平行して行なっても良いものですし、また、ある曲はソロだけ、あるいはコードカッティングだけ、というように重要な部分のみ、少しずつ深いコピーを行っていってもokです。
 このあたりの臨機応変な対応がうまくできた人が、効率良く短期間で演奏もうまくなれるとも考えられますので、センスが問われるところと言えるかも。(⇒あまり意固地になってこだわりすぎてもいけないということです。)

 もちろん、バンド活動をされているかたは、バンドで演奏することが決まっている曲を最優先ということで良いのですが、それらの曲についても、余裕のある範囲で可能な限り細かくコピーしてみるというアプローチをとるべきでしょう。


6−1−2.スコア譜を使うか?耳コピーか?

 ”スコア譜は使わずに、ほとんど耳コピーしかやったことがない”というかたも時々いらっしゃいますが、よほどの天才でない限り、最初はスコア譜を使って曲のコピーを行うほうが好ましいでしょう。

 スコア譜にはミスが多いので、どこまで信頼して良いか?は何とも言えないのですが、全てが間違っているというわけではありませんので、自分がわからない部分の答えやヒントを与えてくれる可能性は大です。
 自分一人の推測だけでコピーを行って、正解がわからないままに自己流を押し通し、応用性に欠ける状態を作ってしまってもマズイものです。

 結局は、”とりあえずはスコア譜を主体として、その中で部分的に耳コピーで補っていく”というコンビネーションが、少なくとも最初の3〜4年間はベストな練習方法かと思います。


6−1−3.チューニングの確認

 半音下げや1音下げのチューニング、あるいはドロップD等の変則チューニングの類で演奏されている曲でも、そのことが常にスコア譜に表記されているとは限らないものです。
 もちろん、完全に耳コピーの場合は自分で確かめることになりますが、やはりどのような場合でも、チューニングの確認はまず最初に行うべき必須事項です。

 昔の録音の曲の場合等は、録音機器等の関係で、わずかにチューニングがずれているといったこともありますが、このような場合、ちょっとしたズレでも、音をとりにくくなったりするものです。(⇒現代でも、あえて微妙にチューニングを上げ下げすることはありますが)

 逆に言えば、チューニングさえ合わせれば、一気に音をとりやすくなるとも言えるわけで、”チューニングの確認”は、なおさら価値があることになるでしょう。


6−1−4.ヘッドフォンを使って大音量で

 上記のように、スコア譜があっても、原曲を実際に聴いて各部の音を確認することから始めるべきですが、音を再生する機器について、”目的とするギターやベースの音が良く聴こえるような状態を作る”ということも、効率の良い作業を行うに当たっては大切です。

 まずは”できるだけ大きな音量で聴く”ということは必要ですので、周りの人に迷惑をかけないということも含め、ギターやベースの音に集中しやすいようにヘッドフォンを使って聴くべきとなります。
 もちろん、安物のヘッドフォンでは、目的の音が良く聴こえず、逆に時間のムダとなることもありますから、ある程度の性能を持ったヘッドフォンを使ったほうが良いということはあります。

 また、低音域であるベースの場合は、ヘタなヘッドフォンでは聴こえない場合もあるので、かえってスピーカーから低音を良く出して聴いたほうが、聴きやすいということもありますので、状況によって手段を選ぶべきとなるでしょう。(⇒くれぐれも、周りの人に迷惑をかけない範囲の音量で、ということになりますが)


6−1−5.むずかしい部分だけを取り出して練習する

 これは当たり前のことですが、1曲全体を通して聴いているだけでは、特定箇所の詳細まではなかなかわかりませんし、たとえ、それをギターソロ部分だけに絞っても同様なことです。
 したがって、ごく短い範囲に分割しながら聴いて分析していくということが必要となります。

 分割の単位は、まずは1小節(4拍子の曲であれば4分音符4個分)といったことになりますが、ある一部分だけが問題になるような場合は、1小節をさらに分割して2拍分(4分音符2個分)のみに区切って聴くとか、時には1拍(4分音符1個分)に区切って、問題となる箇所を繰り返し聴いて確認したのち、やはりその区間だけを何度も弾いて練習していくということにもなります。

 もちろん、特に問題がないような部分はあっさりと通りすぎてしまって良いことになりますので、あくまでもむずかしいところだけを切り出して練習し、okとなったらもとに戻して、その前後を含めた区間で弾いてみて確認するという作業の繰り返しになるということです。


6−1−6.運指はいくつかの可能性を試す

 仮に、スコア譜での音の高さや長さは正解であったとしても、”タブ譜での弦とフレット位置の表記がミスしている”といったこともよくあります。(みなさんも、数多く経験されていると思いますが)

 したがって、同じ音であっても、他の弦/フレット位置に移してみる等、色々なフィンガリングのパターンで可能性を探ってみるべきとなります。 正解については、そのミュージシャン本人が弾いている映像でも無い限りわからないわけですが、”指の動作や手首位置の移動等において、最も効率の良いパターンと思われるものを自分なりに見つけ出す”といったことでも良いものです。

 初心者のかたの場合は、まずはタブ譜どおりに弾くということで良い(仕方が無い)のですが、”実はもっと楽に弾ける方法がある”ということも多々ありますので、チョコっとは他の方法も模索してみると良いかも。


 さらに、実際の音源を聴けば、ハンマリングオンやスライド等の技が使われている音も聴こえてきますので、そのようなことを頼りにフレット位置(ポジション)を推測することも可能となります。


6−1−7.聴こえない場合は、とにかく何度でも聴く

 ということで、その”実際の音源を聴く”ということについてですが、コピーの作業は、やはり”何度でも繰り返し聴く”ということに尽きます。 数十回でわからなければ、何百回でも、ということになってくるものです。

 何日にも渡って聴いていると、最初は全く判断できなかった音やフレーズであっても、不思議とわかるようになってくることも多いものです。
 もちろん、音楽理論やスケールの使い方等がわかっている人は、コード進行さえわかれば、それをもとに推測することも可能になるはずですが、基本的には、”聴き取った(と思われる)音を楽器で実際に弾いて同じ音になるかどうか試す”という作業を、正解が出るまで繰り返すということになります。

 たいへん地味で根気のいる作業になってしまいますが、これをやればやるほど、色々な意味で実力が付いていくとも言えるものです。


6−1−8.1音止めも辞さない

 何度繰り返して聴いても、なかなか各部の音の高さや長さ、そしてその音の前後での音の流れがつかめないといった場合には、”その音が出た瞬間に止めて、自分の頭の中に残っている音の詳細を確認する”というやり方で1つ1つの音を順番にひろっていく、俗に言うところの”1音止め”を行うべきともなります。

 これも、その音の詳細が聴こえてくるまで何回でもトライということになるわけですが、”1音ずつ止める”ということで、まずは、スイッチを押してからの反応が速い種類の機器を使ったほうが良いことにはなるでしょう。
 CDプレーヤー、MDプレーヤー、あるいはMP3のプレーヤー等、コピー作業に使えれば何でも良いですが、何ゆえハードな使用となるので、これらの機器の寿命も短くなりがちです。

 また、近年のディジタル系のオーディオ機器は、一回壊れると修理に出しても故障が再発することが多く、費用もかさんでしまうので、そのような意味では昔ながらのカセットテープデッキなどのほうが、買い換える費用も安く、使いやすいものになったりもします。 ただしそれは、我々の世代ならではの話ということもあるので、とりあえずは、みなさんが慣れているもので良いでしょう。


 そして、それでも音が聴き取れない場合は、音の高さはそのままでスローテンポになるように音をディジタル処理してくれるコピー用の機器やソフト等を使ってもokです。
 ただし、これらについても、ディジタル処理を行うと、ハンマリング・オンやプリング・オフ等のニュアンスが聴き取りにくくなることも多いため、これまた昔ながらのカセットテープデッキで回転数を下げ、スローにしたほうが聴きやすいといったこともあるものです。(⇒ただし、音の高さも下がってしまいますので、半分の速度にして、オクターブ下げにできるようなスピード調整機能があるデッキのほうが好ましいことになりますが)

 いずれにせよ、ギターソロ等の聴き取りに関しては、速弾きでなくても、スローにして聴いてみることは価値があります。 遅弾き(?)のソロでも、ノーマルな速度では、実は意外に細かいところを聴き逃していることがよくあるものでして、スローにして聴いてみると新たな発見をすることもしばしばです。(⇒経験者のかたにとっては、けっこうな落とし穴)

 よって、スローにできる機器がある場合は、最初から使って聴き取り取り作業を行ってしまっても、良いものかと思うところでもあります。


6−1−9.メトロノームを使ってスローテンポから

 これは、いつも書いていることですが、プロミュージシャンを含め、演奏のウマイかたに練習方法のアドバイスを求めれば、必ずと言って良いほど、”メトロノームを使ってスローテンポから徐々にテンポアップしていくのが良いよ”っていう答えが返ってきます。

 それくらい、この方法は威力があるものでありますが、この方法の指針をまとめると次のようになるかと思います。


1.いきなりその曲の本来のテンポ(速さ)で弾くことはむずかしいが、スローテンポ(テンポ60〜70といったゆっくりした速さ)であれば弾ける可能性は高まるはず。

2.スローであっても、自分の感覚でのリズムで弾いていると、弾きやすい部分は速く弾き、弾きにくいところは遅く弾く等、一定のテンポでなかなか弾くことができない可能性がある。 しかし、メトロノームの音(クリック音)に合わせて弾くようにすれば、一定のリズムになるばかりでは無く、”待ってはくれない状況”を作り出してくれるので、自然とプレッシャー及び緊張感を与えられ、上達が早まる可能性が高くなる。

3.スローテンポのメトロノームに合わせて、問題ない動作/ムダのない動作できちんと弾けていれば、くり返しの練習の実施で、必ず速く弾けるようになるはず。

4.3のことからも、速く弾けている(本来のテンポで弾けている)つもりでも、スローテンポにすると弾けなくなってしまう場合は、実は、きちんと弾けていないことになる。

5.スローテンポできちんと弾けるとして、そこから徐々にテンポアップしていけば、どこかでスムーズには弾けなくなるはず。 すなわち、そのテンポがその時点での自分が弾ける上限値ということになり、それ以降は、そのテンポの付近から攻めていけば良いことになるので、練習効率が各段に良くなる。


 ということで、”スローテンポで弾ける⇒ノーマルテンポ(本来のテンポ)で弾けない⇒また、スローテンポで弾いたら弾ける⇒ノーマルテンポだと弾けない・・・・”ということを繰り返していても、時間のムダとなります。
 徐々にテンポを上げていくということは、その中間を狙うということです。 その時点での自分の上限値がわかれば、そこを集中的に練習すると、日々その上限値は上がっていって、いつのまにか本来のテンポ、あるいはそれ以上のテンポまで行けてしまう、という流れが生まれるわけです。


6−1−10.録音して聴く

 これについても、いつも繰り返し書いておりますが、ポイントは以下のとおりです。


1.メトロノームを使ったとしても、自分で演奏しながら、その音をリアルタイムで聴きながらの確認は、ほとんどあてにならない。 したがって、そのような状態では、いくら練習しても効率良く上達できない恐れがある。

2.あくまでも、客観的に自分の演奏を聴かないと、欠点には気づきにくい。 そのためには、他人に聴いてもらってアドバイスを受けるということでも良いが、録音して聴き、自分で実際に納得しながら、問題点等に気づくという過程がベスト。

3.スタジオでのバンド演奏での録音だけでなく、個人練習時も録音して聴いたほうが、自分の演奏の欠点の発見につながりやすい。(スタジオで録音した音は、他の音に自分の音が包まれてしまい、本来よりもウマく感じてしまうことがあるため。)

4.個人練習時の録音に使用する機器は、MTR等の本格的なものでは、セッティングや起動に時間と手間がかかり、めんどうになって録音作業を行わなくなってしまうことが多い。 よって、なるべく気軽/簡単に録音できるような機器のほうが好ましいことになる。 近年流行っているステレオマイク内蔵のPCMレコーダーの類が最適だが、安価ではないので、一般的なICレコーダーや、昔ながらのラジカセ的なものでも良い。(⇒音質は多少悪くても、十分に用は足すということです。)


6−1−11.その代わり、基本練習パターンは必要最小限で

 これは付加的な話となりますが、教則本を見ると、たくさんの基本的なフレーズやパターン等が載っています。 また、楽器系の雑誌においても、”夏休み練習特集”なんて感じで、特定項目に絞った各種パターン例が掲載されたりもします。
 しかし、これらを全て弾けるようになるにはかなりの時間(年数?)が必要になるのが通常ですから、何冊もの教則本に載っている全てのパターンをマスターして、実際の演奏で生かすことのできるレベルにまで到達している、なんていう人はそれほどたくさんはいないはずです。

 また、仮に、全てを弾けるようになったとしても、それらを常に練習し続けなければ維持できないでしょうし、さらには、自分がその時点で弾く必要のある曲に出てくるようなパターンでなければ、やはりすぐに弾けなくなってしまう(忘れてしまう)ものです。

 このようなことで、見方を変えれば、これら練習パターン的なものは、その時点で弾いている(練習している)曲の中にもたくさん含まれている可能性があるわけですから、それらを部分的に切り取ってきて練習パターンとしてしまっても良いことになります。
 すなわち、これは、先に書いた、”曲の中で弾くのが難しい部分は、その部分のみを取り出して、スローテンポから繰り返し弾いて練習しましょう”という練習方法に近くなってくるものですから、結局は、上記のような曲の練習方法を実施すれば、基本練習パターン的なものも、一石二鳥で、同時にどんどん練習できてしまうのでは?ということです。

 よって、教則本や雑誌の記事等に載っている基本練習パターンは、まずはざっと全体を流してみて、特に重要と思われるようなものに絞って練習すれば良いと思うところです。 決して”手抜き”ということでは無く、このほうが明らかに効率良く上達できるでしょう。(⇒ただし、本題である曲の練習に関しては、決して手を抜かないように)


6−2.オリジナル曲の練習でのポイント

 自分のオリジナル曲を弾く場合は、自分で作った曲ゆえ、いかようにでもできるわけですが、やはり、きっちりと演奏するには、それなりに練習する必要があります。
 ギターソロやコードカッティングのパターンにて、自分で考えたものにも関わらず、なかなかスムーズに弾けるようにならないといった経験がありませんか?(⇒私など、自分で考案した技やフレーズ等で、未だに弾けないものがいっぱいある。)

 とりあえずは、上述したコピー曲の場合においての”原曲の聴き取り作業”に関わる内容は無くなりますが、その後の練習方法としては同様です。
 すなわち、”メトロノームを使ってスローテンポから”、”録音して聴く”という流れでありまして、自分のオリジナルだからと言ってこのような練習を省いてしまうと失敗します。

 ”何となく弾きながらフレーズ等を考え出す”といったことと、”それを実際にきっちりと弾く”ということは、やはり別ものであるということです。
 MTRで多重録音して作ったデモ演奏等がある場合は、それをマイナスワン(カラオケ)的に利用して、かえって練習しやすいでしょうから、デモ製作の段階で終わりではなく、常に自分の演奏の深い部分までの確認を行うようにすれば、良い結果を生む可能性も高まるでしょう。



 以上、練習方法については、書き始めると次々と色々なことが出てきてしまうのですが、今回の一連の記事で書いた内容には、みなさんが既に実施されているものも多くあるかとは思います。
 ただし、”これら全てを実施しなければ、演奏は絶対にうまくならない”といったわけでもありませんので、”何か参考になるような手段があれば、随時取り入れていってください”、という感じで良いものです。

 また、初心者のかたであれば、技術が向上するに連れて、今回書いたような内容を徐々に増やしていっていただければ良いとも言えます。
 まずは、クロマチックパターンでのフィンガリングの基本練習をウォーミングアップとして行い、残りの時間は、ひたすら曲の練習(曲のコピー)ということで十分でしょう。




 さて、次回は、昨年末に予告もしましたが、ストラトのネックとボディのヒールレスジョイントに関する新考案の方式の試作レポートを書きたいかと思っております。

 以下の画像、なんだこれは???

    



(2008年 5月分)

 <新方式ネックジョイントのストラト製作(第1回)>

 今回からは、予告どおり、昨年試作してみた新考案のヒールレス方式のネックジョイントを使ったギターの製作記事を書いて行きます。(3回完結の予定です。)


1.ネックジョイント構造の検討過程


1−1.製作の背景

 昨年の1月分にて、現在私が使用しているスルーネックのストラトの半製作記事を掲載いたしましたが、あのギターをバンド活動等で使うとなると、やはり万が一の時のために、予備(スペア)のギターを用意しておきたくなるものです。

 よって、同仕様のものをもう1本といきたいところですが、さすがに、さらに20数万円を捻出する余裕はございません。
 では、”ノーマル仕様の安価なストラトを購入するか”、あるいは”ノーマル仕様のネックとボディを購入して、同じピックアップ等を取り付ける等し、塗装も含めて自分で組み立てるか”、といった対応になってくるわけですが、まずは何しろ、ミディアムスケールのネックですので、ロングスケールのギターを予備にするのは少々きびしいところです。


 しかし、ミディアムスケールのストラトのネックとなると、現状では完成品でもネック単体でも手に入りにくい状況です。
 もちろん、オーダーでネックのみを作ってもらうという手もあるのですが、それでもけっこうな価格となってしまいますので、何とか安価に上げる方法をとりたいものです。

 そこで、25年ほど前に、今は無き三鷹楽器さんで無理やり(?)ネックを特注で作ってもらい、現在は半分廃棄処分にして放ってあったミディアムスケールのストラトを再利用することにしました。
 半分廃棄処分状態ということで、ローズウッドの指板は劣化してボロボロ、ネック裏の塗装面も、どういうわけか化学反応を起こして、溶けちゃってるというヒドイ状態ですが、果たして再仕上げを施して使えるのでしょうか???

 また、このネックには当然ボディも付いておりますが、このボディは、当時(80年代)のフェンダージャパンの安価なミディアムスケールのストラト用のもので、バスウッドでできており、オマケに素人作業でかなり加工しまくって余計な穴だらけという状態ですので、これを使うのはあきらめました。(⇒このボディに本来付いていたミディアムスケールのネックは、細すぎて女性用といった感じのものだったため、オーダーで通常の太さのネックを作ってもらったのです。)

 特注ネックを付けた25年前のストラトの残骸 


 よって、ネックのみをとりあえず使い、生地のボディを新たに購入して加工、例によって自分で塗装して、同仕様のストラトに仕立て上げようというわけです。
 ただし、先に製作したギターがスルーネック構造ですので、単にノーマルなストラト仕様のボルトオンでのジョイント構造にしてしまうのは、ハイポジションでの演奏性からも、気が引けるものとなります。

 このようなことで、少なくとも、多少のヒールレス構造を持ったストラトの製作にトライしてみようと思い立った、というのが背景であります。


1−2.ストラトのジョイント部の短所と各メーカーでの対応

 ストラトのボルトオンでのネックジョイント部は、下の画像のように、ボディ側に大きく角型にヒール部分が付いているので、ハイポジションでのネックのグリップには支障をきたしがちとなるものです。

   ノーマルストラトのネックジョイント部 


 まあ、セットネックであるレス・ポールモデルのヒール部などもけっこうなジャマになるので、ストラトでの形式/形状が特に好ましくないということではないのですが、この対策として、ギターメーカー各社は、ボルトオンでのネックジョイントのギターにおいて、様々なヒールレス方式を考案しております。(⇒ヒールレスとは言っても、ヒールが完全に無くなるというわけではないのですが)

 例えば、下の画像にアイバニーズのRGシリーズでのものを挙げます。
 ボディ側のヒール部の端部を削り、傾斜を付けて高さを低くすると共に、ジョイント用のボルト(ネジ)の前部2本の位置を左右非対称にし、手の平に当たる側のヒール部をカットするという構造/形状となっています。

   アイバニーズRGのネックジョイント部 


 他社のものでも、このような方式が多く見受けられるもので、確かに、ハイポジでのグリップ(特にシェイクハンドグリップ)は、ノーマルのストラトよりも楽に行えるようになります。


1−3.ストラトのジョイント構造の長所

 しかし、この各メーカー考案のヒールレス仕様は、ノーマルのストラトの仕様に比べると、多少不安なところがあります。

 その筆頭に挙げられるのが強度の問題でありまして、オリジナルのストラトはFig.1−3−1に示すように、ネックジョイント用の4本のボルト(ネジ)は、ボディ側に置いた金属プレート(スチールのプレート)を押さえる形でボディの穴を通り、ネックにねじこまれる構造になっています。

 
  Fig.1−3−1 オリジナルストラトのジョイント構造 



 このようにしますと、Fig.1−3−2のように、締められたボルトの頭からボディ側に加わる力は、これを受けることになる金属プレートにて分散された後にボディ面に加わることになりますので、結果的に、ボディは面に近い形でボルトの頭からの力を受けるようになります。

 
  Fig.1−3−2 ジョイント部でのボルトからの力の状態 


 逆に、先のアイバニーズのRGのジョイント部のようなヒールレス形状にすると、ストラトのような平面の金属プレートを付けることは困難になるわけですが、この状態では、各ボルト頭部にワッシャー等を入れたとしても、ボルトからの力は、それぞれの周辺部へ局所的に加わることになってしまいます。(Fig.1−3−3)
 よって、万が一ギターを倒してしまったような際には、ボルト頭部まわりに衝撃が大きく加わり、この部分の木材が割れやすくなるといったことも想定されます。

 
  Fig.1−3−3 ヒールレスタイプでのボルト(ネジ)周辺部への力 


 特に、アイバニーズのRG等の多くは、ボディ材が柔らかめのバスウッドですし、さらに上記のように、ヒール部分が薄く、かつ細長くなっていると、なおさらボディが割れる危険性が多少高くなると言えるかもしれません。(⇒バスウッドということで、重量が小さい分、倒した際の衝撃は小さくなるかもしれませんが)


 あともう1点、ボルトオンのギターでは、各ボルトを締める際には、トルク設定のできる電動ドライバー等を使用しないと、締め具合の差(トルク差)が生ずることになりますが、オリジナルのストラトのような金属プレートは、ボルトからの力を面に分散させることにより、各ボルトにトルクの差があったとしても、この差をある程度緩和する働きも持っているとも言えます。
 プレートが無いと、ボルト各々の部分でボディ側が受ける負荷は、そのボルトの締め具合がダイレクトに作用しますので、大きなバラツキがあれば、これは、ボディへのダメージの度合いをよりアップさせることにもなりかねません。


 もっとも、この強度の問題は、これだけ世間に同等な方式のギターが溢れている現状から考えれば、実用上はそれほど支障のあるものではないと言って良いのかもしれません。
 しかし、そうであったとしても、ストラトの金属製ジョイントプレートの効果の”大いなる意義”を無視するのは、どうしても惜しい気がしまして、ヒールレス構造で、同様な効果を得られるような方法はないものかと、前々から頭の中で”ああでもない、こうでもない”と思い巡らせていたのでありました。



1−4.採用したヒールレス方式

 まずは、以下のような要素を盛り込んだ上で、できるだけスルーネックのものに近いような、ハイポジションでの演奏性が有利なヒールレス構造を目標として検討してみました。

@ オリジナルストラトのように、金属プレート等を使用し、ネック固定用のボルトからボディに加わる力をなるべく分散させるようにする。

A ヒールレス部の先端において、ボディ厚が薄いことにより、ボディ材が割れやすくなることを防止する仕組みを考え、取り入れる。


 この2点を外さないことを条件として、いくつかの方式を考えてみたのですが、できるだけ特殊な工作器具等を使わず、かつ、それほど高精度の工作技術を要求されない方法が好ましいと思い、最終的に採用したのが以下の方式です。(⇒外出しようと玄関で靴を履いている時に、靴の中敷を見て、ふと思いついたものです。(どうでも良いけど))


 まず、Fig.1−4−1に全体構造の概要を示します。


 Fig.1−4−1 ヒールレス方式概要図 



 そして、完成状態のジョイント部の画像を photo.1−4−1 に挙げます。

 photo.1−4−1 完成状態 



 一見では、この構造の仕組みがわかりにくいかもしれませんが、最大のポイントとなるのは、ボディとネックの間に入り、両者を結びつけるように取り付けられるプレート(新規のジョイント用プレート)です。

 先に書いた条件にあった通り、ボディのヒールレス部の先端をあまり薄くしてしまうと、木材が割れやすくなる可能性がありますが、逆に、薄くしない限りハイポジションでの演奏性の向上は望めず、本来の目的から外れてしまいます。
 そこで、先端部を独立させ、この部分を強度のある金属製とすれば、割れやすくなるリスクを無くしつつ演奏性の向上を図れ、同時に、もう1つの目標である、”面でボルトからの負荷を受ける”ということも、ボルト2本分ながら、ある程度達成できることになると予想されるものです。

 しかし、この場合、金属製の先端部をボディに固定する必要があるわけですが、木ネジ等を使って固定するだけでは、ネックを取り付けた際の強度を十分に保てませんので、先端部とボディを強固に結合させる何らかの手段が必要です。
 そこで、土台/骨組みとなるような金属製のプレートをあらかじめボディにしっかりと固定しておき、これが両者を結ぶ形で、金属製のヒール先端部を含め、ネックをボディ側に取り付けるという方法を考えたのであります。



1−5.構造の詳細と組み付け順

 では、構造の詳細を説明すると共に、各部品の組み付け順も同時に示していきたいかと思います。


(1)組み付け第一段階(ジョイントプレートの取り付け)

 まず、2種の金属プレートをボディに取り付けます。

 新規ジョイントプレートをボディ上側に木ネジで取り付け、これがボディ材の代わりにヒールレス先端部の土台となることになります。
 また、従来のジョイントプレートも、位置をブリッジ側に大幅にずらした上で、ボディ裏側にてエンド側のネック固定用ボルト(木ネジ)2本用に使います。 これに関しては、プレートにおける余った2つの穴はボディに取り付けるためだけに使い、短い木ネジであらかじめ固定しておきます。(Fig.1−5−1)


 
  Fig.1−5−1 組み付け第一段階 



(2)第二段階(ネックの取り付け1)

 次に、エンド側の2本のボルトでネックを固定します。

 エンド側のネック固定用の2本のボルト(木ネジ1)は、新規の金属プレーを貫通する形でネックに締めこまれることになりますが、この時、従来のジョイント部の金属プレートも使用することになりますので、こちらのほうも、ボルトからの力は面に近い状態でボディに加えられるものです。(Fig.1−5−2)


 
   Fig.1−5−2 組み付け第ニ段階 



(3)第三段階(ネックの取り付け2)

 さらに、フロント側の2本のボルトでネックを固定します。

 金属で作ったヒールレス先端部(アルミブロック)と共に、フロント側のボルト(木ネジ2)2本でさらにネックを固定し、組み付け終了です。(Fig.1−5−3)

 この状態においては、新規ジョイントプレートをボディに固定した木ネジの一方側(図で左側)は、ネックで押さえられる形になっています。
 よって、ネックまたはボディのどちらかに負荷がかかった際にも、全体として強固に固定され、各部が分離しにくくなることにも注目です。


 
  Fig.1−5−3 組み付け第三段階 


 以上、ネックジョイント部の基本構想は、このようになります。



1−6.補足事項と懸念事項

 この方式は、良く言えば”斬新”、悪く言えば”非常識”な要素をかなり含んでおります。 
 よって、ここで、そのような要素が関わる補足的な事項、及び、これらによる懸念事項を書いておきたいかと思います。


1−6−1.新規ジョイントプレートの厚みの影響

 1−5項の各図からもわかりますように、新規ジョイントプレートを取り付けると、ボディのネック取り付け面の高さは通常よりも高くなり、結果としてネック全体及び指板面も同時に高くなります。
 これは、ノーマルなストラトでは都合の悪いものになりますが、先に製作したスルーネックのストラトが、ボディに対してネックに角度を付け、弦とピックガードの間隔を広くし、フロイドローズのユニットもボディ面に対して高い位置にしたことに準ずるためには、好都合となるものなのです。

 もし、通常のストラトで同様な構造としようとすれば、ボディにおけるネックの取り付け面をルーター(トリマー)で削って、プレートの厚みだけ薄く加工し、取り付けるといったことになるでしょうか。(⇒ノーマルなストラトでも、このヒールレス方式は可能であるということです。)


1−6−2.新規ジョイントプレートの音への影響

 新規ジョイントプレートは、ネックとボディの間にモロに入りますので、これが両者間の振動伝達に対し、どのような影響を与えるかが最大の懸念事項として予想されます。(⇒プレートが振動伝達における、音の帯域のフィルターとなってしまう)
 しかし逆に言えば、このプレートの素材を何にするかによって、ギター自身の音質も、ある程度変えられるのかもしれません。

 したがって、このことは結構楽しみにもなってきたわけです。(プロのクラフトマンのかたには、ぶん殴られそうなアプローチ。 でも、何事も実験ということで、試してみたくなるのはオレだけか?)
 実際に、プレートをアルミと塩ビの2種で作って試してみているのですが、その結果は後日。


1−6−3.ボディにおける撤去部の影響

 1−5項での取り付け図を見て、既にお気づきのかたもいらっしゃるかと思いますが、今回の試作においては、新規ジョイントプレートのボディへの固定をできるだけ強固なものにするため、このプレートはプロントピックアップの下部にまで及んでいます。

 このことによって、Fig.1−6−3のように、フロントピックアップ用のキャビティ前部に位置し、ネックエンドを支えるようにして存在する、ボディの壁のような部分を撤去してしまっております。(ロングスケール用のボディにて、ミディアムスケールのネックを使用するため、通常よりもネックをブリッジ方向にずらして位置させているということも理由の1つとしてあります。)


 
  Fig.1−6−3 ボディ撤去部分 


 この撤去した部分は、一見、ネックの保持にも一役買っているように見えますので、これが無くなると、ネックを受ける部分の1つが失われ、ネックはボルト4本のみによってボディに固定されるだけになり、少々不安な気がするところかと思います。

 しかし、よほど工作精度が高く、ネックエンドとボディ部が、ある程度の面積で密着していなければ、この部分が壁となってネックを支える効果は薄いものであるとも推測できるのです。
 そして実際、これが無い状態でネックの固定は4本のボルトのみとなっても、これまでのところは特に支障は出ていないようです。



 では、次回は、新規ジョイントプレート及びヒールレス先端部となるアルミブロックの製作の様子、並びに、これらを取り付けるためのボディの加工の様子等の過程を紹介したいかと思います。


 ⇒以下次回に続く


(2008年 6月分)

 <新方式ネックジョイントのストラト製作(第2回)>

 今回は、前回概要を説明したヒールレス方式の試作品の製作過程を紹介していきます。


2.ネック/ボディの加工とジョイント用各パーツの製作過程


2−1.ネックの再仕上げ

 前回分で書きましたように、まずは何よりネックを復活させられるかどうか?です。

 フレットを抜いてみると、スキャロップにしていた指板の表面は、かなり劣化してモロくなってしまっています。
 とりあえずは、新しいフレットが打ち込める程度まで指板の劣化部分を研磨して削り取り、対処することにしました。(⇒指板が薄くなることによって音質も変わることが予想されますが、今回は仕方無しということで割り切りました。)

 ネックの裏面、及びヘッドの各面も、いったん塗装を研磨して除去、再度塗装を施して仕上げるという工程をとっています。


  
   新しいフレットを打ち、再塗装中の状況 


 ということで、これらの作業によって何とかネックは復活し、形にすることができました。



2−2.ストラト用生地ボディの基本加工


 今回使用したボディ部は、ギターワークスさんにて購入した一般的なストラト用の生地のボディです。

 しかし、当たり前ですが、これはロングスケールのネック用、かつシンクロナイズドトレモロのユニット用に作られておりますから、肝心のヒールレス部の細工以前の話として、少なくとも、ミディアムスケールのネック、及びフロイドローズのユニットを取り付けるための加工をする必要があります。

 この加工の主たる点は、ネック取り付け部をミディアムスケールに合うようにブリッジ側へ寄せること、及び、フロイドローズのユニットに合うように、ブリッジ部の穴とスプリングの収納部を大きくする、というものとなるものです。


 まず最初に、フロイドローズのユニットのスタッド(支柱)用のアンカーをボディに取り付けることを行います。 ボディにアンカーの径に合わせた穴をドリルにて開けた後、アンカーを打ち込みます。(photo.2−2−1)
 画像における黒線は、ユニット用の穴を広げるためのケガキ線です。(これら寸法は、今までに製作したギターから採寸する等して情報を得たものです。)

  photo.2−2−1 



 上記のケガキ線に沿って、ユニット用の穴を広げますが、ルーター(トリマ)は所持しておりませんゆえ、ドリルとノミにて作業したものです。(photo.2−2−2)

  photo.2−2−2 



 フロイドローズのユニットは、ボディ上面より高く位置させるため、ボディ裏面のスプリング収納スペース底部を削って傾斜部を設け、アームの動作中にスプリングが接触しないように加工します。(photo.2−2−3)

  photo.2−2−3 



 次に、ネックのジョイント部上面を加工します。
 前回書きましたように、ジョイントプレートはフロントピックアップの下にまで及びますので、ネック基部を受ける部分を取り去り、フロントピックアップのスペースまでスルー状態にしてしまいます。(photo.2−2−4)

  photo.2−2−4 


 以上で、ボディの基本加工は終わりで、いよいよ、ヒールレス部の製作に入ります。



2−3.ボディのヒールレス用加工

 ヒールレス部の加工は以下のような工程で行っております。


 切断ラインをケガいた後、まず、ヒールの前部を切り取ります。(photo.2−3−1 ⇒ photo.2−3−2)
 この切り取りは、ヘッド側のジョイント用のネジ穴がなくなるような位置で行っています。

  photo.2−3−1 切断ライン 


  photo.2−3−2 切断後 



 次に、ヒール裏側にカットを施します。
 ハイポジションでのシェイクハンドグリップが容易になるように、なるべくなめらかなラインで周囲につながり、かつ、強度も確保できるような範囲でヒール角部を切削していきます。(photo.2−3−3 ⇒ photo.2−3−4,photo.2−3−5)

 これにおいては、ノミで大まかな形に削った後、木工用の各種ヤスリで細部を成形し、各番数の紙ヤスリで表面を仕上げるという工程をとっています。

  photo2−3−3 切削中 


  photo2−3−4 加工後状態(下部) 


  photo2−3−5 加工後状態(上部) 


 これにて、ボディ側のヒール部の加工は終了、細かい部分は金属部品装着時に合わせ込んでいきます。



2−4.金属部品の製作

 ジョイント用のプレートとブロックについては、寸法決めを行った後、型紙を作り、それを使ってアルミ部材に外形をケガき、加工していきます。


 ヒール部先端となる金属ブロックは、厚さ20mmのアルミ板から切り出し、ジョイント用プレートは、厚さ3mmのアルミ板から切り出しますが、まず最初に各部の固定用のネジ穴を開けておきます。(photo.2−4−1)

 ジョイント用プレートのケガキ線の前にある長方形のケガキ線は、ギターボディのフロントピックアップ用の穴部の深さによって段差が出来てしまうため、これを埋めるためのスペーサーになる部品となるものです。

  photo.2−4−1 



 各部品をアルミ板より切り出しますが、ヒール先端用部品に関しては、作業しやすいように、板の状態にて曲面部分を先に削り出しておきます。(photo.2-4-2)

 金ノコで角部等を切り取った後、金工用の各種ヤスリで成形、各番数の耐水ペーパーにて表面を磨いていき、最後にコンパウンドで鏡面仕上げを行います。(ジョイントプレートについては、外側から見えないため、表面仕上げは施しておりません。)

  photo.2−4−2 



 そして、アルミ板本体より切り離し、完成した状態がphoto.2-4-3です。

  photo.2−4−3 



2−5.仮り組み調整

 先に加工したボディに、製作した金属部品を取り付けてみて、細部の寸法調整/確認を行っていきます。


 まずは、フロントピックアップ部にスペーサーパーツを置きます。(photo.2−4−4)

  photo.2−4−4 



 そして、ジョイントプレートをネジ止めしますが、ボディの切り込み幅とのマッチングはなるべくきっちりとしたいため、あらかじめ少々大きめに作ったプレート両脇を削って幅調整を行いながら、ジャストな寸法まで持っていっています。

 また、これに伴い、ボディ側の細部も多少形状を変更しています。(photo.2−4−5)

  photo.2−4−5 



 ボディ裏面には、従来のジョイント用プレートを後部のネジ(木ネジ)2本にて取り付けておきます。(photo.2−4−6)

  photo.2−4−6 



 ネックを取り付け、ヒール先端の金属ブロックを介して2本のネジ(木ネジ)で固定します。 また、同時に、従来のジョイント用プレート部においても2本のネジにてネック後端部を固定します。(photo.2−4−7)

  photo.2−4−7 


 ボディ上面の状態は、このようになります。(photo.2−4−8)
 とりあえず、ネックはジョイントプレートを介してしっかりとボディに取り付けられています。

  photo.2−4−8 



 このようなことで、ネックの取り付け確認は終了です。



 では次回は、ボディの塗装の過程、そして、最終組み立ての様子を紹介したいかと思います。


 ⇒以下次回に続く


(2008年 7月分)

 <新方式ネックジョイントのストラト製作(第3回: 最終回)>

 最終回は、ボディの塗装と組み立ての状況、そしてまとめです。


3.ボディの塗装と最終過程


3−1.ボディの塗装

 ボディの塗装については、これまでに紹介したギターやベースと同じく、以下のような工程で行われています。(前回と同じ、排気装置を付けた簡易塗装ブースにて塗装を行っています。)


(1)下地研磨

 #400までの紙ヤスリにてボディ表面を研磨し、順次、なめらかな面にしていきます。
 平面部分は、サンディングブロックに紙ヤスリを付けて磨きますが、エッジ部分等の曲面部は、紙ヤスリをブロックに付けず、指の力加減等を行いながら、そのままで研磨していったほうが良いです。


(2)との粉塗布⇒研磨

 との粉を水で溶かし、ハケにて表面に塗布、半乾きの状態で布にて摺り込みつつ、拭きとっていきます。
 ただし、次工程にて木工用プライマーを使うことになるので、との粉での工程は、省略しても可です。

 尚、フロイドローズのスタッド部については、時前に穴あけパンチで丸く抜いたマスキングテープを上部に張って、内部にとの粉が侵入しないよう、カバーしておくようにします。(他の塗装工程等でも同様です。)


(3)木材用プライマー塗布⇒研磨 (下塗り)

 スプレー式の木工用のプライマーを拭きつけ、乾燥後、#600までの紙ヤスリにて軽く研磨します。

 この作業は、との粉塗布と共に、木材内に塗料等が吸い込まれてしまい、木目を埋めることが困難となることを防止するための”目止め”の工程となるものです。


(4)サンディングシーラー塗布⇒研磨 (中塗り(肉付け)) 

 これは、木目の凹凸を埋めてボディ表面を平面にするための工程ですが、スプレー式のサンディングシーラーを拭きつけ、乾燥後、#400⇒#600⇒#800⇒#1000の順で、耐水ペーパーに石鹸水を付けた上で研磨していきます。

 サンディングシーラーは、十分に木目が埋まる(⇒表面が滑らかになる)まで、乾燥状態を入れながら何回にも分けて重ねて吹き付けていくようにします。
 途中、表面にゴミなどが付着してしまった場合は、十分に乾燥させた後、研磨して除去した上で、引き続き塗布していくようにします。


(5)ラッカー(ミルキーホワイト)塗布⇒研磨 (着色)

 前回は、粘性の高いラッカーを使ってイマイチの失敗であったので、今回は通常の粘性のものを使っています。(⇒粘性の高いものは、厚塗りしてもタレにくいというメリットがありますが、乾燥するのに非常に日数がかかってしまうことになるものです。)

 各部が均一な色になるまで、乾燥工程を入れながら、必要十分に塗布(拭きつけ)を繰り返します。
 これも、付着物等があれば、途中で研磨して除去しますが、最終的には、#1000までの耐水ペーパーにて研磨しておきます。(塗装面の状態が均一であれば、この研磨は省略できますが、なにゆえ缶スプレーでの塗装ですので、マメに研磨工程を入れています。)


(6)ラッカー(クリア)塗布⇒研磨 (上塗り)

 着色した表面にクリアのラッカーを吹き付けていきます。 これも表面の状態を確認しながら、必要に応じて研磨をしつつ、全体が均一な厚さでコーティングされるように何度も繰り返して塗っていくようにします。

 終了後に乾燥させますが、数日程度かけて十分に乾かせるようにしたほうが良いです。(ラッカーの場合は、完全に乾くまで、思った以上に日数がかかります。 ドライヤー等で強制乾燥させても良いのですが、それでも、内部の乾燥にはかなり時間がかかります。)


(7)耐水ペーパー#800→#2000での研磨

 十分に乾いた状態にて、表面の本磨きを行います。
 #2000までの耐水ペーパーにて、表面の状態を確認しながら、順次磨いていきます。


(8)コンパウンド3種での研磨

 現在、コンパウンドの入手は意外とむずかしい状況ですので、前回のものも含め、入手しやすいタミヤ模型のコンパウンドを使ってしまっております。(本来は、プラモデルの塗装用なのですが、十分に使えます。)

 ”荒目⇒細目⇒極細目”の順で3種のコンパウンドを研磨用のクロスに着け、表面を磨いていきます。



 このようにして塗装が終了したボディは、以下の画像(photo.3−1−1,photo3−1−2)のようになります。

 実を言えば、この行程では、一般の仕上げ工程のようなバフ仕上げを行っていないこと等から、市販のものに比べると鏡面仕上げが劣り、幾分(ホンの少し)ツヤ消し状態になってしまってます。
 しかし、私は、市販品のようなあまりピカピカした状態は、かえって安っぽく思えてあまり好きではないので、この状態も悪くないと思っておりますよ。(←少々負け惜しみ。)

 でも、市販品の中には、ピカピカではあるものの、表面の平面度が出ておらず、見る角度によっては、かなり安っぽくなってしまうものなどがあったりするのも事実なのです。



  photo.3−1−1 上面 


  photo.3−1−2 下面 



 次にボディ内部に導電性塗料を塗布します。(photo.3−1−3)


  photo.3−1−3 


 これにて、ボディは完成です。



3−2.最終組み立て

 最終組み立てとなりますが、電気回路等は、一昨年製作したスルーネックのストラトと全く同様です。 ピックガードにピックアップ等各部品を組み付けた後、配線作業を行います。


 そして、前回掲載した、調整段階での順序どおりに組み立てていきます。(画像は、導電性塗料の塗布前のものになっちゃってます。すみません。)

@フロントピックアップ部にスペーサー部品をセット

Aジョイントプレートをネジ止め

Bネックを取り付けて、背面のプレートをセットした後、ネジ止め

Cヒール部のブロックをセットした後、ネジ止め

Dピックガード等を装着

 ⇒完成


 となります。


  photo.3−2−1 スペーサーをセット 


  photo.3−2−2 プレート組み付け 


  photo.3−2−3 ネック付けて背面プレートネジ止め 

  photo.3−2−4 ヒール部先端ブロックセット 



  photo.3−2−5 ブロックネジ止め 


  photo.3−2−6 ネック組み付け終了 


  photo.3−2−7 ネック接合部 




  photo.3−2−8 完成状態 



3−3.他のギターとの比較

 このようにして出来上がった今回の試作品ですが、まずは、問題のヒール部をノーマルなストラトのものと比較してみます。

 ヒールの張り出し部は、ノーマルのものに比べ、それなりに落とせているかと思いますが、どうでしょうか?


 
  photo.3−3−1 ノーマルストラトとの比較 




 次に、2006年に製作したスルーネックのストラトとの比較です。

 当たり前ですが、基本的に各部は同じ部品類から出来ておりますので、前から見れば、ほぼ同じものに見えます。

 
   photo.3−3−2 スルーネックストラトとの比較1 



 しかし、ネックのヒール部については、さすがに”スルーネック対デタッチャブル”ですので、出っ張り度(?)にはそこそこの差があります。 それでも、ノーマルストラトに比べれば、かなりの改善であるかとは思っております。

 
   photo.3−3−3 スルーネックストラトとの比較2 



 ジョイントプレート及び先端のアルミブロックは、金属用のプライマーを塗布した上で、ボディと同じ白色に着色することも可能ですが、アルミ地のままでも意外と表面は酸化せず、きれいなままなので、とりあえずはそのままで使っています。



3−4.新方式での音質とプレートの材質変更試験


 今回のギターの製作時には、スルーネックのストラトにて気になっていたピックアップの出力過多を改善するため、フロントとリアは、ダンカンのJB.Jr.(SJBJ-1)から、Little'59(SL59-1)に変更してあります。(スルーネックのストラトも同時に変更)

 しかし残念ながら、これでも妙にトレブリーな音質で、ダンカンのノーマルなハムバッカー(59')の音とはどうしても異なるため、苦肉の策として、それまでパスっていたトーンコントロール回路(マスタートーン)を設け、高域を少々カットすることで偲ぶことにしました。

 コイルの断面積の相違、弦に及ぶ磁界の範囲の相違等、様々な原因が想像されますが、やはり、シングルサイズのハムバッカーは、ノーマル品と同じ音質とはいかないようですね。(当たり前って言えば、当たり前なんですけど、ちょっと期待してみたかったわけでして・・)

 仕方がないので、近いうちにディマジオのPAFに換装し(⇒当初の理念は断念(トホホ))、ついでにストラトにノーマルハムバッカーを搭載した場合のカッコ悪さを少しでも解消するため、新デザインのエスカッションを考案/製作し、試してみるつもりです。(その報告は、いずれ掲載します。 やれやれ・・)


 さて、それはさておき、アルミであるジョイントプレートの音質への影響についてですが、前回のスルーネックのストラトとは明らかな音質の違いがあるのはわかるものの、ジョイントプレート自体の影響については、はっきりしたことが言えない状態です。
 今回、指板を薄くし、ネック自体も薄くなったことが影響して、高域寄りの音になっていることも十分考えられるゆえ、そこで、ジョイントプレートを金属ではなく樹脂であらたに作ってテストしてみることにしました。

 この手の素材としては、アクリルが最初に考えられるのですが、アクリル樹脂は曲げ方向の力に対してたいへんモロいので、まずは、塩ビ(塩化ビニール)を使うことにしました。
 アルミの場合と同じ、厚さ3mmの塩ビの板を使って製作したプレートが以下のものです。(photo.3−4−1 上面に貼ってあるプラ板は、ネックの仕込み角の変更試験をした際の名残りです。)


  photo.3−4−1 塩ビでのプレート 


 この塩ビプレートに交換してみると、アンプから音を出さない生音状態では、アルミプレートの時に比べ、明らかにネックと共にボディがガンガン振動して体にも伝わってくるようになっています。
 こりゃいけるのかな!と思いつつ、アンプから音を出してみると、何だか芯の無い情け無い音質です。 どうも中音域近辺が欠けてしまったようでして、ジョイントプレートの材質がやはり音に影響することを実感。

 これならばアルミのほうがマシ、ということで元に戻しましたが、強度の面からもやはり金属のほうが良いですから、プレートのある程度の面積を切り抜き、ここに木材を入れ、ハイブリッド構造といった形式とすると、より良い音質を望めるのかもしれません。


 このようなことも今後実施してみるつもりですが、まずは、もう少しまともなネックを新たに作った上で、再度テストをする必要がありそうです。(⇒ミディアムスケールということで、結局、フルオーダーにて作ってもらうしかないでしょうね。)



3−5.費用その他

 今回の試作での費用は、ストラトの生地ボディが\14,700、ピックアップに\27,000、その他パーツ/素材等に約\8,000程度と、合計で5万円程度です。

 まあ、ネックは再利用品なので価格に入れておりませんが、25年前の時点で2万円のものゆえ、とりあえずこれを入れると約7万円といったことになります。

 と言っても、試作費用ということで、高いんだか安いんだか、わかりませんよネ。



3−6.まとめ

 ということで、結局、中途半端な結論になってしまいました。(申し訳ありません。)

 最も重要な要素である”音質”に関しては、”詳細は、また後日に”、とゴマかすしかないのですが、少なくとも、”従来のものよりも強度を持つヒールレス方式としての新たな構造”は提示できたのでは?、なんて勝手に考えてます。
 とりあえずは、上述したように、アルミ板の一部を切り抜いて木材が入るようにし、これにてネックとボディに接するようにすれば、音質面の向上も図れ、実用的なものになるのかと思うところです。

 何と言っても、フェンダーUSAの3点止めモデル(70年代モデル)における”マイクロティルト”というとんでもない仕組み(⇒接合部の密着性を重要視していない)もあるわけでして、デタッチャブルタイプのギター/ベースにおける、ネックとボディの接合方法は、まだまだ模索が続くのかもしれません。


 あと、上述した音質の問題はあるものの、第1回でも書きましたように、このジョイント方式はノーマルのストラトであっても可能かと思います。
 今回のギターのように、ネック及びトレモロユニットをボディ上面から高い位置にはしないノーマルのものでも、ネックとの接合部周りのボディをルーター(トリマ)でプレートの厚さ分だけ削りこみ、そこにジョイントプレートを取り付け、ヒール部もなめらかになるように加工すれば、十分実施可能なものとなるでしょう。

 もちろん、ヒール部については塗装をはがさなければならないので、その部分の塗装修復、または処理をどのようにするか?が、かえって最大の問題になるかもしれませんが、いずれ、安物のノーマルストラトを使って試してみようとは思っております。 (やっぱりトリマ買わなきゃ。 今回、よっぽど購入して使おうかとは思ったんですけどね。 予算不足で断念。)



 さて、次回は、オリジナル曲のデモ音源が少々形になってきたので、公開してしまおうかと思ってます。
 私の演奏力の低さが露呈してしまうかもしれませんが、既にいい歳になってしまったゆえ、今後の衰えも予想しつつ、そろそろ潮時かな?

 ガッカリさせてしまったら、ゴメンナサイ。


(2008年 8月分)

 <当方の演奏の音源を公開します。(その1)>

 今月〜来月は、予告どおりに、当方の演奏のデモ音源を少々公開いたします。


 当方は、かなり以前から、ボーカル抜きのいわゆるインスト音楽を何がかんだとやっているのですが、現在手がけているバンド(MILLENNIUM 4 )でのインストものは、私が10代の頃に発案し、20代後半にかけて構想を固めていったものでありまして、”スペクタクルフュージョン”なんてジャンル名称を勝手に付けてます。

 要は、”映画音楽的で、何らかの映像の見えるような、スケールの大きいインストの曲を作りましょう”というコンセプトなのですが、それと共に、この世知辛い世の中ゆえ、”前向きで希望を持てる音世界の演出”なんてこともモットーにしております。


 当初は、サンタナや高中正義、そしてゲイリー・ムーアのインスト部門(?)など、いかにも私の世代といったミュージシャンのみなさんの影響が強いものでしたが、その後、ザ・スクェア(当時) や、スティーブ・モーズ/ドレッグス等のインスト面の影響も入り込み、それらが混ざって自分なりの音を作っていった(たぶん?)という感じでしょうか。
 しかし、実は、ポップス/歌謡曲好きの私ですので、昔どこかで聴いたメロディのようなものが多数聴こえてくるかも・・(早い話が、パクリもどき多し)

 全体的に、ギタリストが作った曲としては、巷のものよりもギターが前面に出ていない(⇒特にアドリブソロ的なものにおいて)と感じるかもしれませんが、私が目指しているのは、あくまでも、それぞれが何らかのテーマを持った1つの曲であって、決してひたすらギターテク中心のものでは無いということに起因しております。
 場合によってはギターは無くても良いわけで、各パートが必要に応じて存在すべきところに存在するような曲を作りたいというのが、私の作曲行為の目的です。


 これらのものは、昔から、ライブではある程度演奏してきていたものの、個人レベルの録音機器が充実してきた、私の20代後半頃より、録音した音源として何とか具体化出来てきたものです。
 そして五十路も見えてきた今、新旧の曲をあらためて録音し、五体満足なうちに、もう少しまともな音源にしておこうと思い立った次第なのであります。


 ということで、今回は、再度製作しているものの中で、ある程度の形になっている4曲を紹介させていただきたいかと思います。

 残念ながら、現在までにドラマーとキーボーディストの日程の調整がつかず、ドラムスについては打ち込みでのもの、キーボードは西野が弾いている状態となってしまっておるのですが、バンドとしての音は、来月分にて以前のライブ音源を公開することでお許しいただくとして、とりあえず、西野のG/KEY、そして渡辺千明氏のBASSにて演奏し、作ったものです。


 実は、これらの曲の一部は、既に当方のチューブディストーションRTD-1のデモ曲として音源を公開していたものなのですが、今回は、RTD-1の最新バージョンで出した音としてあらためて録音したものとなっております。
 RTD−1は近いうちに改良版を再発売することを目論んでおるわけですが、その宣伝の意味合いもチョイと含めた今回の企画でもあるわけです。

 ちなみに、ギターの音は、ディマジオのPAFを搭載したギターの音をRTD-1を通してJC-120で出し、マイク(SM57)でひろって、VS2000CDで録音したもの。 ベースは、YAMAHAのTRB-6をVS2000CDに直結して録音したものです。


 音源ファイルは、以下のページに置いてありますゆえ、音を聴きつつ、各曲の解説などを御覧いただければと思います。(演奏動画へのリンクもいっしょになっておりますが、音源ファイルは、ページの下のほうにあります。)

 ⇒音源ファイル(こちらをクリックしてください)


<各曲の解説>

1.未来へのファンファーレ

 まずは、”はじまりはじまり〜”ということで、アルバムのオープニング用の小曲と思って聴いてください。
 新世界への扉が開きます。

 私は、幼少の頃からずっとオーケストラ編成での音楽が好きで聴いていたことが影響し、頭の中では、どうしても大編成オーケストラ的な音が基盤となって曲をイメージしてしまいます。
 そんな事情が、この曲からも見えてしまうかも。


2.THE PARFECT KEY

 現時点での看板曲の1つです。(老若男女、けっこう人気あります・・笑)

 ”とにかく希望を持って生きましょう、前途は明るいぞぅ。 でも、たまには辛いこともあるよ。”ってイメージの曲で、私が28歳頃に作ったものです。まあ、当時の私の人生観を全てぶちこんだ曲かな?(とは言え、コード進行等は極めてシンプル。 かつ、人生観も未だに変わってない。)

 まあ、バブル時代を象徴するようなものですが、このような(脳天気な)前向きさが、かえって今この時代に必要なことかも?などとも考えますねぇ。


3.Initial"m"

 ”THE PARFECT KEY”に続いて、幸せな気持ちになって欲しい曲。

 ”m”というイニシャルは、私のイニシャルでもありますが、かつて、私の人生観を変えた人物のイニシャルでもあります。

 様々な情景と共に、その感謝の気持ちも込めて、ずっと残したい曲です。


4.DARK CRYSTALS

 ”DARK CRYSTALS”という曲名は、セサミストリートのマペットたちを創造した、ジム・ヘンソンという人が作った映画作品のタイトルから頂戴したものです。
 この映画も、生身の人間は一切登場せず、マペットや着ぐるみを使った登場人物のみのファンタジックかつ物悲しい世界の物語なのですが、そんな世界感を拝借してイメージした曲です。

 もともとは、ライブ用に、キーボードとギターの2人だけで直ちに演奏可能なものとして急遽作った曲なのですが、けっこう気に入ってます。 だけども、これまでライブで実際に演奏したのは2回だけという状況。

 基本的には、(サンタナではなく)ゲイリー・ムーア氏の泣きのギターモロといった感じでありますが、キーボードの比重はけっこう上げてます。
 何と言っても、ギター単体ではなく、楽曲としてののクォリティ最優先。 先にも書いたように、私は、意味無く長いアドリブでのギターソロ等はあまり好きでは無いので、必要最小限でコンパクトなギターパートをできるだけ心がけておる次第です。


5.Valkyree

 DIGITECHの名機「IPS-33B」というピッチシフターを大々的に使用している曲です。
 この曲のみライブ音源なのですが、要はオーバーダビング無しの1発録りということでもあります。

 IPS-33Bにプログラムされている”SWELL”という名称のエフェクト設定を使うと、ライブにて、こんな分厚い音を出すことも可能となります。(ミュージシャンの間では、かつて、けっこう有名であったエフェクトです。)

 1960年代に試作された超音速爆撃機の名前でも(航空機マニアの間では)よく知られている「Valkyree」とは、闘いの女神の名ですが、自らが闘う神ではなく、戦場で命を落とした兵士の魂をあの世に連れにくる女神らしいです。

 そんな神様のイメージが、曲(音)の中に見えるかなー??


6.明日に捧げる歌

 決してマイナー調の泣きのギター等ではなく、ギターインストにて、歌謡曲的なポップなものはできないか?と思って作った曲です。

 3連ロッカバラードということで、このあたりもあえてレトロチックにしておりますが、”ボーカリストの領域にいかに近づくか?”というギタリストの永遠の課題(?)の回答の一部になれば、と思ってもおりますです。

 これまた、ロックの原点とは縁遠いような、明るく前向きなイメージの曲。


 以上、今回はこのようなところなのですが、”こんな曲の形態の演奏は、ライブで再現できるのかいな?”なんて思われるかもしれませんので、次回は、2002年に行ったライブでの音源+オマケを公開しておきたいかと思います。


 ⇒来月に続く


(2008年 9月分)

 <当方の演奏の音源を公開します。(その2 :ライブ音源編)>

 今月は、ライブ音源の公開です。


 今回アップするものは、2002年4月に行った当方の教室の企画ライブにての演奏ですが、何しろ3回のみのスタジオ練習(と言うか、打ち合わせですね)にて望んだものゆえ、まあ、セッションライブ的なものとして聴いてください。(相当荒っぽいですが、先月からの恥のカキついでに出しちゃいます。)

 ギターの歪みの音については、RTD-1の極初期の試作モデルを使用しておりまして、これからMAXONのマルチエフェクターPUE-5(ディレイとノイズゲートのみ使用)、及びBOSSのボリュームペダル(FV300L)を通した後、自前のJC-120に接続して音を出しているものです。

 試作中ゆえ、まだ中低域の音が不足しており、かつ、まだJCくさい音質から抜け出せないでいるのですが、とりあえずは、チューブのヘッドの音に多少は近づくことが出来ているのかとは思いますゆえ、聴いてみてください。(録音は、客席においての完全にエア録りで、差し替え等は一切なしの状態です。)


 ちなみに、あるくだらない理由(フロイドローズがらみ)により、チョーキング時のピッチがかなり不安定なところが多数存在しておりますが、これまたお許しください。


 ⇒音源ファイル(こちらをクリックしてください)



<各曲の解説>

1.CONDITION YELLOW

 当初予定していた曲が諸事情によりNGとなったため、オープニング用として2日間くらいで急遽作った曲。(そんなのばっかしですが)

 当方の曲としては、珍しく(?)非常にギタークサイものですが、一応、スティーヴ・モーズ氏のアップテンポのナンバーの路線あたりを狙ったもの。  そのため、デモ音源段階では、もっとテンポが速いものだったのですが、スタジオにてみんなでイジッている間にテンポダウンし、少々平和な感じになっちゃいました。(⇒テンポダウンによって、かえってミスっているという、悪い例の見本でもあります。)


2.DARK CRYSTALS

 前回でも紹介した曲。

 この手のスローな曲を人前で演奏するのは、各自の力量が問われ、本当にむずかしいですネ。
 リズム感の無さに非常に自己嫌悪。


3.THE PARFECT KEY

 これも前回で紹介した曲。

 この曲があるがために、毎回、それなりの派手な技を持ったドラマーを捜さなくてはならないのがつらいところ。
 今回の音源では、マイク・ポートノイ氏好きのY君にガンバってもらっております。(どうもありがとう)


 ということで、当方のスペクタクルフュージョン。 とりあえず4名でライブ演奏は可能というわけです。


 尚、前回及び今回紹介した音源に関しては、近日中に”デモ演奏のコーナー”として専用ページを設けるつもりでおります。
 昔やっていたボーカルもののバンドの音源等もアップするかもしれません。



 さて次回は、久々にチューブ(真空管)ディストーションに関する記事を書こうかと思っています。
 ついに回路の具体的中身についてアレコレ書こうかとも思いますが、まだ未定です。(来月までに検討いたします。)


(2008年 10月分)

 <チューブ(真空管)による歪みの話あれこれ (第1回:チューブの歪み系エフェクター/プリアンプ回路の形式の概要)>

 8月、9月と、音源の公開に便乗(?)し、当方のチューブディストーションの実際の音も紹介させていただきました。

 そこで、今月からは、今や巷に多数存在しているチューブ(真空管)回路を使った歪み系エフェクター、またはプリアンプと呼ばれるものについて、”できるだけわかりやすく”ということを前提として、少々専門的な話まで書いていきたいかと思います。


1.音を歪ませることの意義の再確認


 ”音を歪ませることの意義”については、これまでにも再三書いてきたことですが、念のため再確認しておきたいかと思います。

 音を歪ませることによって、基本的には以下のような2つのことが得られることになるものです。


@ 歪ませた波形による迫力のある音になる

 これは言うまでもないことですが、音を歪ませると、電気楽器ならではの、独特な迫力ある音色に変貌します。 

 電気回路上の様子としては、”チューブ(真空管)やトランジスタ、そして、トランジスタでのアンプの機能を小型に集積化したオペアンプといった電気素子を使った増幅回路によって、ギターからの電気信号の大きさを何十倍〜何百倍にもアップさせつつ、素子の電気的特性の効果(⇒オーバードライブ状態での効果等)を利用して、波形を変形(⇒主に波形をつぶす感じ)させていく”といったことになります。

 使用する増幅回路の素子や形式の違いによって、歪んだ音色も、オーバードライブサウンドと呼ばれるような比較的マイルドなものから、ファズサウンドと呼ばれるような荒々しいものまで、様々なものとなります。


A 見かけ上のサスティーンが増す

 これについては、以前の記事でも書いておりますが、上記のように、ギターからの信号レベル(振幅レベル)を大きく増幅した後、波形を変形させると、波形の大きさはある程度の一定値を維持するようになります。(fig-1,fig-2 参照)
 これによって、ピッキング後に弦の振動が次第に小さくなっていき、ギターの生音の音量が低下していっても、実際にアンプから聴こえる音は、一定の大きさに聴こえ続けるという現象が発生します。(⇒弦の振動が止まれば、音量もゼロになりますが)

 すなわち、見かけ上のサスティーンが増加するということになり、これは、歪ませた際の独特の音色と共に、演奏した際の快感(?)をアップさせる1つの要因ともなりまして、決して外しては考えられないものです。(⇒これに対し、音を歪ませずに、見かけ上のサスティーンを向上させるものがコンプレッサーと呼ばれるものになります。)

 基本的には、大きく歪ませるほど、この見かけ上のサスティーンもアップすることになりますので、どれくらい歪ませるかに比例する要素とも言えます。(⇒その他、ピッキングの強弱のバラツキが均一化され、実際よりも演奏がウマく聴こえる(聴こえてしまう)、といった効果もあります。)


 





2.歪み系エフェクターとプリアンプの違いとは?

 本題に入る前に、もう1つ念のために書いておきましょう。

 歪み系のエフェクターとプリアンプの違いって何なの?ということはよくきかれるところで、当方の質問掲示板でも何回か書いているものです。

 また、マルチエフェクターとプリアンプは同じものなの?といった質問もよく受けるものでありますが、プリアンプの定義とは、けっこうあいまいなもので、プリアンプと称していても、ラックマウントのものならともかく、見かけ上はコンパクトエフェクターと変わらないものがあったりしますので、初心者のかたなどは非常に混乱してしまうものでしょう。


 ギターからの電気信号の大きさを汎用性のあるレベルまで増幅(大きく)し、同時に音質/音色を変えたり整えたりした後、最終的にローインピーダンス出力に変換する、といったことがプリアンプと呼ばれるものの基本的な働きとなります。
 したがって、歪み系のコンパクトエフェクター単体でもプリアンプと呼べないことはありませんし、それどころか、多少の設定機能を持ったオペアンプによる増幅回路を1つ通過させるだけでも、基本的にはプリアンプと見なすこともできます。
 また、近年の大型のフロアタイプのマルチエフェクターなどは、はじめからプリアンプとしても設計されていることが多いものです。

 まあ、少なくとも、ギターからの出力を接続(入力)でき、TREBLLE、MIDDLE、BASSといったトーンコントロール機能があり、ボリューム(マスターボリューム)で音量が調整でき、パワーアンプに接続できるようなものであれば、一人前のプリアンプであると言えると思いますが、やはり市場での定義はけっこうあいまいです。



3.チューブ回路を伴う歪みエフェクター/プリアンプの主な形式

 音を歪ませるということ自体の詳細については、次回以降に書くとして、音を歪ませるための電気回路の基本構成について書いておきます。

 世間には、ギター/ベースアンプやエフェクターにおいて”チューブ回路での音”を謳っているものが多数存在しておりますが、これまでにも何だかんだと書いてきましたとおり、その中にはチューブの回路は使っているものの、多くの形式があり、物によってはリアルチューブと呼べないようなものもあります。

 そこで、今回は、そのような多数の回路形式をグループ分けし、機能ブロック図と共に概要を書いておくことにします。


3−1.高電圧作動による純粋チューブ回路でのもの(⇒チューブ2本以上使用)

 先に書いたように、音を歪ませるための回路は、波形の振幅を数十倍〜数百倍に増幅することが基本となりますが、増幅回路1つでは、そのようなレベルでの増幅率が不足するため、増幅回路を2段以上重ねるようにします。 特にハイゲインと呼ばれるようなマーシャルアンプクラスの歪みでは3段程度の増幅回路とするのが通常です。

 よって、高電圧作動のチューブでの増幅回路3段、これにトーンコントロール回路と、ローインピーダンス(出力)状態にするためのバッファ回路が加わるというのが、最も一般的なリアルチューブの歪み系回路で、これこそが正真正銘、本物のリアルチューブサウンドが出る回路と言えるものです。(⇒実際には、使用するパワーアンプもチューブ回路のものでないと、リアルチューブサウンドにはならないとも言えるのですが)

 一般的なチューブ(真空管)では、1本に増幅回路が2組入っておりますので、この形式ではチューブは2本使用となります。(ただし、多チャンネルのものや、電源回路にチューブを使っているものは、より多くのチューブの本数となるものです。)

 fig.3−1にこの形式の機能ブロック図を示します。(⇒トーンコントロール部は、他の位置に置くことも可能ですが、パッシブのトーンコントロール回路の場合は、レベルの低下を考慮した上での配置となります。)

 
 fig.3−1

 マーシャル等のチューブアンプ(ヘッド)の各チャンネルの回路をはじめ、ペダルタイプのコンパクトエフェクターでは、BadCatの”2-Tone”あたりがその代表となるでしょうか。(当方のRTD-1も、もちろんこの形式です。)
 ただし、付随するトーンコントロール回路の形式は様々なものとなります。

 BadCat 2-Tone 



3−2.オペアンプの増幅段を伴う、中/低電圧作動のチューブ回路でのもの(⇒チューブ1本使用)

 チューブは高電圧での作動にて、その本来の歪んだ音(オーバードライブサウンド)が出せるものですが、高電圧の電源にはそれなりの大きさのトランスが必要となり、本体の大型化、高い価格につながってしまいます。

 そこで、小型化、低価格化のために、1段目(または2段目も)の増幅段、及びバッファは、オペアンプを使ったものとし、次段を低電圧(9V〜15V程度)/中電圧(60V〜100V程度)作動のチューブの増幅段にした製品が、けっこう多数存在します。(⇒これらの見分けは、ACアダプターの使用、及び本体に表記されている電源電圧値で、ある程度判断できます。)

 この形式は、チューブとオペアンプのハイブリッドタイプとも言えるものですが、fig.3−2にブロック図の一例を示します。(⇒これも、トーンコントロール部等の配置は自由に設定できます。)

 
 fig.3−2

 Guyatoneの2代目のチューブディストーションHTD-1や、TUBE WORKSの製品群などがこの形式ですが、やはり歪みの音質は、どうしてもトランジスタ系とチューブ系の中間的なもので、サスティーンの感じもイマイチとなりがちです。(⇒チューブの作動電圧が低いほど音質は劣ることになります。)


  Guyatone HTD-1 



3−3.オペアンプでのリミッター回路を伴う、中/低電圧作動のチューブ回路でのもの(⇒チューブ1本使用)

 これは、3−2項のものに近い形式ですが、オペアンプの増幅段の一部をダイオードとオペアンプを使ったリミッターの回路としたものです。

 このリミッター回路は、単純なダイオードクリップの回路よりも、まろやかな波形で、かつレベルを一定値に制限でき、よりチューブの回路に近いような音質でロングサスティーンを得られるようになります。(アイバニーズ/MAXONのチューブスクリーマーの回路もこの形式です。)

 fig.3−3にこの形式の一例を示します。

 
 fig.3−3


 下の画像のMAXONのマルチエフェクターPUE-5tubeのチューブディストーション回路では、チューブの増幅部は約100Vの電源電圧での作動なので、それなりのチューブらしさの音、なおかつ、アクティブのトーンコントロール回路も搭載されておりますので、けっこうチューブアンプ(プリアンプ)らしい音が出せます。

  MAXON PUE-5tube 

 また、近年のチューブと称する小型ギターアンプにもこの形式があるようです。



3−4.ダイオード回路を使った高電圧作動によるチューブ回路でのもの(⇒チューブ1本使用)

 チューブ回路を使ったディストーションにおいて、低価格での市販品としては最初に発売されたGuyatoneのTD−1は、高電圧(約200V)でのチューブの作動を行っているとは言え、2段の増幅部の後にダイオードクリップ回路と同様なものがあり、一定レベル以上の波形の大きさを制限した負帰還の回路となっています。(fig.3−4)

 
 fig3−4

 これにて、結果的に、過剰なハイゲインをおさえることによって高域のザラついた倍音の発生を防ぎ、太い音質となることを達成しておりますが、少々こもった音になり過ぎるので、グライコ等を前段に接続して音質を補正してやると、なかなかの音質となるものです。

 チューブ(12AX7)は1本なので、2段の増幅部のみでバッファ回路も無いものとは言え、高電圧作動のチューブ回路ながら、小型で部品点数も少なく、低コスト(当時1万円少々)となっており、うまく設計されたものになっていると思います。

  Guyatone TD-1 



3−5.電源は低電圧だが、昇圧回路を使ってチューブを高電圧作動させるもの(⇒チューブ1本使用)

 ヒュース&ケトナーの"TUBE FACTOR"等に見られる形式です。(Blackstarの製品等も、この種のものかと思われます。)

  TUBE FACTOR

 TUBE FACTORの電源はACアダプター使用で、本体のACアダプターからの入力ジャック部には12V、700mAの表示がありますが、内部には300V OUTPUT(確か?)の表記のあるIC素子が見えています。
 メーカーの説明にも高電圧作動との表記がありますので、これは昇圧素子(DC-DCコンバーター)で、チューブのプレート電圧は高電圧となっているものと思われます。(内部回路を実際に追ったことは無いので、推測なのですが)

 ただし、チューブは1本なのでチューブでの増幅段は2段(または1段はバッファ)で、その前段はオペアンプのハイブリッド構成かと考えられます。

 この形式の一例をfig3−5に示します。

 
 fig.3−5

 チューブ2本でもこの原理は利用可能なはずですが、昇圧素子の電流容量での制限もありますので、1つの素子ではチューブ2本の作動には容量不足、しかし2つの素子の使用はコスト的にきびしいということがあるかも?(⇒高電圧を作るDC-DCコンバーターはけっこうな価格です。)



3−6.乾電池作動のオペアンプの増幅段を伴う、低電圧作動のチューブ回路でのもの(⇒チューブ1本使用)

 チューブの作動には、チューブ内で電子を飛ばすためのヒーター用として、電圧値は小さい(6.3V等)けれど、電流値は大きい(20〜100mA)電源(A電源)も必要なので、乾電池や9Vの積層電池では容量が足りないため、通常はAC100Vのコンセントから供給することになるものです。

 これに対し、乾電池でもチューブの回路を作動可とした(と称される)ものが、VOXのCOOLTRONと呼ばれる技術を用いた一連のチューブエフェクターのシリーズです。

  COOL TRONのシリーズの1つ 

 これも、内部の回路は未調査なのですが、ディストーションの音を実際に聴いた限りでは、低電圧作動のチューブ回路にオペアンプの増幅段を追加した形式に準ずるものとなっているようです。
 したがって、本来のチューブ回路でのハイゲイン時の音質という感じにはなっておりません。

 fig.3−6に、この形式のとりあえずの想像図を示します。(実物と異なっている可能性あり。(スミマセン))

 
 fig.3−6

 原理的には、乾電池から大きな電流値を得ることは不可能ですので、ヒーターをホンの少し加熱させた程度、すなわちチューブで増幅される電流は微量でしょうから、やはり本来のチューブの音を引き出してはいないものと言えるのかと思います。



 ということで、設計条件/コスト等によって、ひとくちにチューブプリアンプ/チューブの歪み系エフェクターとは言っても色々な形式がありますから、自分がどのようなものを求めているか?、あるいは、どのあたりで満足できるか?によって、選択するものが決まってくることには注意が必要です。

 ”こりゃ、チューブにもかかわらず安くて良いね!”ということで買ってはみたが、全く期待したような音が出ないといったこともよくありますので、十分に検討しての購入をお薦めいたします。

 次回は、チューブ(真空管)回路の中身のいくつかを実際に見ていきたいかと思います。


 ⇒以下、次回に続く


(2008年 11月分)

 <チューブ(真空管)による歪みの話あれこれ (第2回:回路図で見る、歪み系エフェクター/プリアンプ回路の構成例)>


 前回分で、様々なチューブのプリアンプ/ディストーション回路の種類の説明をいたしましたが、今回は、もう少々中身の詳細を見つつ、これら回路の仕組みの概要を解説したいかと思います。

 結果として、回路図の基本についての知識があることを前提としてしまい、申し訳ないのですが、一般のかたでも、これをきっかけにして電気回路について色々と学んでいただいても良いものかと思うところです。


1.リアルチューブ回路の例

 まずは、前回紹介した、高電圧作動のチューブ(真空管)での3段増幅のプリアンプの回路の1つを fig.1-1に示します。
 LTSpiceで作成した回路画面をそのまま切り取ってきたものなので、あれこれと表記に不備があって申し訳ありませんが、各機能ブロックがなるべくわかりやすいように書いてみました。

 これは、あくまでも1つの例であって、各素子の値や、細かい部分での回路構成等は機種によって異なってきますが、マーシャルのJCM2000あたりまでのプリアンプ回路等も含め、基本構成としては最も典型的なものかと思います。

 回路自体は極めてシンプルなものですが、実際に製作するとなると、一般的な半導体回路に比べ、各部の配線やアースラインの引き回しには、よりいっそうの注意が必要となりますし、また、抵抗やキャパシタ等、この図の値にて回路を製作しても、必ずしも良い音がするとは限りませんゆえ、御了承ください。(⇒使用するアンプ(パワーアンプ)等の条件にて、それぞれ適した値に設定する必要があります。)


 
  fig.1−1 チューブプリアンプ回路図 (クリックすると拡大表示します) 



2.回路の基本構成

 実際には、さらにトランスを使った電源回路、及び、チューブのヒーター用の回路等が存在する必要がありますが、2つのゲインボリュームを含む3段での増幅後、パッシブのトーンコントロール回路を通り、バッファ回路にてローインピーダンスで出力されるといった流れとなります。(fig.2−1 参照)

 回路図中で、U1〜U4がチューブ(真空管)の記号となりますが、この手の回路に標準的に使われる12AX7系列のチューブでは、1本のチューブに2回路入っておりますので、U1とU2、及びU3とU4でそれぞれ1本、計2本のチューブの使用となるわけです。

 パッシブのトーンコントロール回路は、フェンダータイプと呼ばれるもので、フェンダーのギター/ベースアンプはもちろん、マーシャルのほとんどのアンプをはじめ、各社で伝統的に広く使われているものです。(様々な文献等でも紹介されておりますので、ここであらためて詳細を書くこともないでしょうが)
 パッシブ回路ゆえ、どうしてもレベルが下がってしまう宿命を背負っておりますが、部品数も少なくローコストで、各素子の値を変えれば、フェンダーアンプ系のドンシャリな音から、マーシャル系の太い音まで、色々と設定可能です。(今回載せている値は、フェンダー系のものです。)


 
   fig.2−1 チューブプリアンプ回路の各機能部 (クリックすると拡大表示します) 



3.各ボリュームの意味と働き

 回路図からもわかるように、この回路には、3つのボリュームが存在しています。(fig.3−1 参照)

 GAIN1とGAIN2、そしてMASTERの3つがそれで、この3つのボリュームを持つ形式は、”3ボリューム”などと呼ばれておりますが、これらのボリューム類の機能の相違等については、よく質問も受けるところですので、それらの働きの一般的な話も含め、書いておこうかと思います。


 
  fig.3−1 回路上の3種のボリューム (クリックすると拡大表示します) 



3−1.ゲイン(GAIN)ボリュームとは?

 チューブの増幅動作の詳細等については、次回以降に書く予定ですが、”音を歪ませる”とは、ギターやベースからの入力信号を数百倍のレベルにまで拡大(増幅)し、その過程で生ずる、チューブの特性から来る波形の変形等を利用するというものです。

 2段目以降においては、過大入力を行うことによって、いわゆる”オーバードライブ状態”を故意に作り出し、歪んだ音として聴こえるような、通常よりも多くの高調波(倍音)成分を持った波形に変形させ、同時に、前回も書いた”リミッター効果”によって見かけ上のロングサスティーンも生み出すことになります。(⇒各段を通過するごとに、波形は変形していきます。)

 ”数百倍(以上まで)のレベルにまで増幅”ということで、上記の回路では、3重に増幅回路を連ねておりますが、2段目の前と、3段目の前に前段からの電気信号の(振幅の)大きさを調節して、次段に送り込むようにするボリューム(可変抵抗)を設け、歪みの度合いを変えられるようにしたものが、ゲイン(GAIN)ボリュームと呼ばれるものです。(⇒一般的には、単に”ゲイン(GAIN)”という名称になっていることが多いものですが)

 マーシャルのアンプ等では、GAINボリューム1の部分にはボリューム(可変抵抗)を設けず、固定抵抗でレベルを設定してしまっておりますので、GAINは3段目の前のみで、2ボリューム方式になっていますが、3ボリュームにすると、より多彩な歪みの音質が設定可能となります。


3−2.マスター(MASTER)ボリュームとは?

 プリアンプの一連の回路の最後尾に位置し、最終的に信号レベル(音量)を設定/調節するボリュームが、マスター(MASTER)ボリュームです。

 マスターボリュームに至る前に、ゲインやトーンコントロールにて基本的な音質/音色は作られておりますので、マスターボリュームは、基本的には、この音質/音色のままで、レベル(音量)のみを変えることになります。

 実際には、プリアンプの後段にパワーアンプ、さらにスピーカーが接続されますので、これらにおいて多少なりとも歪みが生じてしまい、その度合いはマスターボリュームの設定にて変わってくるのですが、まあ理屈的には、マスターボリュームは、”音質はそのままで、最終的な音量設定を行う”と言えるものです。



4.Guyatone TD−1の回路

 前回も概要を紹介しましたが、チューブディストーションの量産製品としては最も初期のものであるGuyatoneのTD−1の回路は、fig.4−1のようなものになっています。(これは、比較的初期ロットのもの(たぶん)で、時期によっては、キャパシタの値等が変更されています。)

 図からもわかりますように、チューブ(12AX7)は1本の使用で、ゲインボリュームを間に挟んでの2段の増幅後、そのままマスターボリューム通過にて出力されますので、ハイインピーダンス出力です。
 しかし、ダイオードを経由したネガティブフィードバック(負帰還)ループのリミッター回路となっているので、増幅された信号レベルは一定値にとどまり、そこそこのロングサスティーンを生み出すと共に、過大ゲインによるノイズ、ならびにノイズ的な音の成分を抑える働きを持つので、ハイインピーダンスの出力の割りには、それほどノイズ音は発生しません。

 トーンコントロール回路は持っておりませんので、音質設定が自由にできませんゆえ、他の機器にてカバーする必要がありますが、高電圧作動で最もシンプルな回路構成を持つものとして、(1つの可能性という意味でも)チョイと気にかけておいて良いものかと思います。


 
  fig.4−1 TD−1の回路 (クリックすると拡大表示します) 



 といったことになるのですが、低電圧作動のハイブリッドタイプのもの等は、どのように作っても良い音を出すのは難しいので、回路を載せてもあまり意味が無いところでしょう。
 やはり、上述したような高電圧作動のリアルチューブタイプで勝負したいところですので、これ以降は、基本的にこのタイプにて話を進めたいと思います。


 次回は、チューブ(真空管)での増幅回路における基本動作、ならびに、各種抵抗やコンデンサーの働き等を解説する予定です。


⇒以下、次回に続く


(2008年 12月分)

 <チューブ(真空管)による歪みの話あれこれ (第3回:プリアンプ回路を構成する素子の解説@)>



 今回は、前回紹介したチューブプリアンプの回路における抵抗やコンデンサー等の電気素子の働きの解説をいたします。

 ただし、一般のこの種の文献ですと、チューブの原理及び増幅回路の仕組みあたりからの物理的な解説からスタートとなってしまい、ある程度の電気回路の知識のあるかたならばともかく、一般の人ですと、一気に飽きてしまってそれ以上は読んでくれなくなってしまうことが多いものであります。

 よって、物理的な詳細の話は専門書を見ていただくとして、当記事では、細かい理屈抜きで、ある程度プラモデル的なアプローチにて各部の素子の役目などを簡潔に説明し、まずは軽く流しつつも、実際に回路製作にトライする人の参考にもなるように書いてみたいかと思います。


1.入力部

 fig.3-1-1に前回と同じプリアンプの回路の入力部を示します。
 トランジスタ/半導体の回路を扱っているかたであれば、おなじみのものですが、R9は、ギターからの信号入力ラインとアース間に入れられた抵抗で、入力インピーダンスを十分に大きくするため、1MΩ(メガオーム)という大きな値となっているものです。

   fig.3−1−1 チューブプリアンプ入力部 (クリックすると拡大表示します) 


 パッシブタイプのエレキギター等の出力インピーダンスは数百kΩと、かなり大きい値となりますので、十分な信号レベルにて入力させるためには、ギターの直後に接続するアンプやエフェクター類の入力インピーダンスは、より大きな値とする必要があります。
 このような値ですと、接続するシールド等において外来ノイズによって生じた信号(ノイズ信号)のレベルも大きくなってしまうという問題も生じるのですが、出力インピーダンスが大きい機器を接続する以上は仕方のないことになるものです。

 ただし、逆に言えば、前に接続するものが、アクティブタイプのエレキギターや他のエフェクター等、出力インピーダンスが小さいものである場合は、R9も100kΩ以下の値にしてしまってokであり、これによってノイズ分の信号レベルも低減することができます。(⇒一般のエフェクターの入力抵抗についても同様です。)


2.増幅段

2−1.偶数次倍音を多くする設定

 上記のR9の他に、U1のチューブには色々な抵抗やコンデンサーが付いています。(fig.3-1-1参照)

 R19とC12は、初段(増幅第1段)用の電源ラインにおける、ノイズや残った交流成分を除去するためのフィルターを構成するものですが、R1、R2、C2は、音を歪ませた際の音質を設定するために大変重要なものとなります。
 この音質とは、歪ませた際の倍音成分の種類やその比率といったものによって決まるものなのですが、チューブの増幅回路(アンプ)で歪ませた音がトランジスタ等の半導体のアンプ回路でのものよりも、より良い音とされる理由の1つは、偶数次の倍音成分が多いということです。

 偶数次の倍音とは、基本の周波数に対して2倍や4倍の周波数を持つ倍音(2倍波/4倍波)のことですが、これらが歪ませた波形に多く含まれるほど、太くマイルドな歪みの音質になるというものです。(⇒逆に、トランジスタ(半導体素子)アンプで歪ませると、奇数次の倍音が多くなり、ジャリジャリとした耳障りの悪い歪みの音質になる傾向があります。)
 偶数次倍音を多く含んだ波形は、基本的には、正弦波(サイン波)の片方のみがなまった上下非対称の波形として表されます。(⇒これに対し、奇数次の倍音を多く含んだ波形は、正弦波(サイン波)の両側がなまった上下対称の波形として表されることになります。)


2−2.チューブの特性グラフと負荷直線にてR1とR2を設定

 このようなわけですが、回路中のR1は負荷抵抗、R2はバイアス設定用の抵抗というもので、チューブの動作特性(プレート電圧Ep/プレート電流Ip特性)を表したグラフ上に、R1及びR2各々で決まる直線(負荷直線:ロードライン)をひくと、増幅の度合いと共に、偶数次倍音の度合いの概要がわかります。

 よって、どの程度の度合いにするかを決めれば、R1とR2の値を決めることができるわけですが、この手の回路では、一般にはR1は100kΩ〜200kΩ、R2は1.5kΩ〜3kΩ程度の値となります。(R1は1W〜2Wの定格容量のものが必要。R2は1/4Wの容量のものでだいじょうぶです。)

 基本的には、R2が大きいほどバイアスというものが大きくなり、よりマイルドな音質に向かいますが、逆に、増幅/歪みの度合い(ゲイン)は下がる方向となります。 そして、R1についても、同様な傾向となりますが、あくまでもR1とR2の兼ね合いで決めることが必要ではあります。(⇒とりあえずは、R1は100kΩ、R2は1.5kΩとしておけば、無難な音を得られます。)


2−3.交流成分にバイアスをかけないためのC2

 コンデンサーC2は、上記のバイアスをギターからの信号(交流信号成分)に影響しないようにスルーさせる働きをするものですが、0.1μFから数100μFあたりまでの値で設定できまして、バイアスを故意にギター信号に影響させ、音質の変化を与えるといったことも行うものです。(⇒とりあえず22μF程度にしておけば何とかなります。この値ですと電解コンデンサーとなりますが、電圧の定格は16V程度以上のものでだいじょうぶです。)


 以上、これらの抵抗とコンデンサーは、増幅第2段、及び第3段のチューブについても同様です。各段で異なる値を設定することもありますが、全体の回路図を見ていただいてもわかりますように、まずは、全ての増幅段で同じ値としてスタートしてだいじょうぶです。(⇒その後、様々な値に変えて、音を聴き比べつつ設定すれば良いことになります。)


3.各段の接続部

3−1.接続部の各素子の概要

 fig.3-3-1に、増幅3段目までの回路図を示します。


 
  fig.3−3−1 チューブプリアンプ増幅段 (クリックすると拡大表示します) 


 この図からもわかりますように、各段は、前回説明したゲインボリューム部の回路と共に、C1とC4のコンデンサーによって接続されています。

 C1及びC4は、基本的には、各増幅段から出力される信号について、直流電圧成分を取り除き、交流信号成分(⇒増幅されたギターからの信号成分)を取り出して、ゲインボリューム部にて適したレベルに設定された後、次の段に送るといった働きを持つものですが、実は、C8やC11のコンデンサーと共に、歪みの音質を決める上で、非常に重要な役目を担っている部分となります。(⇒C1、C4のような段間を接続するものをカップリングコンデンサーと呼びます。)


3−2.カップリング時に不必要な成分を取り除く

 前回も書きましたように、十分に歪ませるためには多段の増幅を行うわけですが、各段から次の段に送り込む際には、あらかじめ不必要な周波数成分は可能な限り取り除いておかないと、アタック時の立ち上がりの速さや、その基本的音質が好ましくない方向に行ってしまいます。
 すなわち、各段の間において、適度に音質を調整しながら、さらなる増幅を行って音をより歪ませていくということが何よりも大切なポイントとなるわけです。

 それを決めるのが、カップリングコンデンサと呼ばれるC1やC4、そして、バイパスコンデンサと呼ばれるC8やC11でありまして、各社のプリアンプ部において、その製品の基本的な音の個性を決める役割を担っていると言っても過言ではありませんです。
 各社のアンプでは、これとは異なる形式の回路構成のものも多々ありますが、特に、増幅段より前にトーンコントロール回路が存在するメサ・ブギーのアンプの一部のモデルは、このような理由によるものかとも推測されます。(⇒ただし、パッシブのトーンコントロール回路では、信号レベルが低下してしまうので、増幅段よりも前に置くならば、アクティブのイコライザー形式のもののほうが好ましくなります。)


 実際には、これらのコンデンサーとゲインボリュームらが合わさり、特定の周波数以下の成分をカットし、それよりも上の周波数成分を通過させる、ローカットフィルター(ハイパスフィルター)というものを形成することになっておりますが、基本的には、C1及びC4の値が大きいほど、中低域の音が出て太い歪みの音質となりますので、使用するギターの音質にも合わせて、様々な値で設定することが可能です。(⇒一般的には、222(2200pF)あたりが下限値、683(0.068μF)あたりが上限値でしょう。耐圧の定格は400V以上のものを使うことになります。)


3−3.高域を補うバイパスコンデンサー

 しかし、カップリングコンデンサーの値をあまり大きくしてしまうと、アタック時の立ち上がりが遅くなり、コンプレッサーをかけたような音となってしまいます。
 この現象を防止するのが、ゲインボリュームに付けられたC8やC11のコンデンサーで、一見、ボリュームを絞った際に高域の低下を防ぐためのバイパスコンデンサ(パスコン)にしか見えないものの、実は、それと同時に、ゲインボリュームの設定に関わらず、適度に高域の成分をスルーさせることによって、立ち上がりの速度を向上させると共に、中音域が過剰に出過ぎないハリのある音にしてくれる効果も持っているのです。

 また、ゲインボリュームの抵抗値も、チューブ回路の特性から、かなり大きな値とすることが必要ですが、とりあえず、1MΩ(Aカーブ)が定番となっています。


3−4.一般の機器での様子

 マーシャルのアンプの回路にも、このバイパスコンデンサーのようなカラクリが必ず付いており、各モデルで苦労のあとが見られますが、今回挙げたようなパスコン1個でも十分かと思います。

 しかし、エフェクタータイプのチューブディストーション(チューブプリアンプ)等には、この仕掛けが無いものもけっこうありまして、C1及びC4が473(0.047μF)等の値になっていると、コンプレッション感の過剰なけっこうきびしいものとなってしまっております。
 設計者が、あえてそのようにしたのかどうかは不明ですが、シングルコイルピックアップ搭載の低出力のギターであれば、そのあたりの値で、パスコン無しでも良いのかな?

 とにかく、このコンデンサーの働きは超重要です。fig.3-3-1での値は、あくまでも1例ですから、各自の好みで色々な値に設定していただければ良いという感じとなります。(⇒コンデンサーの耐圧は400V程度のものは選択してください。また、同じ容量値でも、コンデンサーの種類によって音質は色々と変わります。)

 LTSpice等のエレキCADにてこの部分のシミュレーションを実施していただければ、周波数特性等も直ちにわかりますが、実際に御自分のギター(そして、御自分のピッキング力&テクニック)にて音を出して聴いてみないと、どのような感じになるかは判断できませんゆえ、結局は、コンデンサーを色々と換えつつ、カット&トライになってしまうところでしょう。


 では、次回は、トーンコントロール部、バッファ部その他の説明をいたします。


⇒以下、次回に続く