<今月のトピックス2007(楽器編)>


・”今月のトピックス(楽器編)”は、楽器に関する注目すべき話題を思うままに書いてみようというコーナーです。何かみなさんの参考になればと思っております。 (尚、誤字/脱字や、誤った内容/好ましくない内容が後日発見された場合には、断り無く修整することがありますので、御了承ください。)


<目次>

(1月分) <私的機材紹介です(その1)ギター編>

(2月分) <私的機材紹介です(その2)ベース編>

(3月分) <私的機材紹介です(その3)エフェクター編>

(4月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第1回)概説>

(5月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第2回)エコノミーピッキング(その1)>

(6月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第3回)エコノミーピッキング(その2)>

(7月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第4回)エコノミーピッキング(その3)>

(8月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第5回)スウィープでの基本事項の確認と、最小基本パターンの練習>

(9月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第6回)スウィープのフレーズにおける最小基本パターンの練習の続き>

(10月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第7回)スウィープでの典型パターン紹介>

(11月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第8回)スウィープのフレーズの練習方法における特筆事項>

(12月分) <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第9回)スウィープのフレーズのその他の応用パターン>


(2007年 1月分)

 <私的機材紹介です(その1)>



 2007年の最初は、3回ほどに渡って、珍しく(?)私の使用している機材の紹介をしたいかと思います。

 昨年は、私も40代後半にさしかかるということで、久々にギターとベースの更新をして、歳相応のものを使うことにしたいなどと思い、4月から11月にかけて新しいギターとベースを検討/入手したということがありました。
 なぜ、4〜11月という半年以上もの長期に渡っているかと言うと、各部をパーツ状態で入手し、当方で組み立て/塗装を行ったからなのですが、このことについては、私が貧乏であるゆえの予算の限界が第一の理由である一方、現在の市場においては、予算の範囲内で、どうしても自分の求めるような仕様の楽器が見当たらなかったということも大きな理由となっております。

 ということで、”最も低いコストで、自分の理想にどこまで近づくことができるか?”というコンセプトにて、まずは各パーツそれぞれを最も安い価格で販売している店を調べた上で入手し、その上で、コストダウンに大きな効果があるであろう”塗装工程”も自分で行った上で組み立てる、という流れで製作を開始したわけであります。


 何はともあれ、以下に、まるで兄弟のような外見のギターとベースの画像をアップいたしますので御覧ください。ベースに関しては、ノーマルなものをひたすら追及したものですが、ギターに関しては、”今後、ストラトが歩む方向の1つ”となるものではないか、などと勝手に思っております。



BODY : Alder 
NECK : Maple-Mahogany 5piece through-neck
FINGER BOARD : Ebony 22Frets
SCALE : 628mm
P.U : Seymour Duncan "JB Jr."(SJBJ-1)
BRIDGE : Original Floyd Rose





BODY : Alder 
NECK : Maple
FINGER BOARD : Rosewood 20Frets
SCALE : 863.6mm
P.U : Seymour Duncan "SPB-1"
BRIDGE : Guitar Works "#1640"


1.ギター編

1−1.全体の仕様の出発点

 新たにメインギターにすべきものについては、以前より、ストラトシェイプにするという構想があったのですが、私が通常演奏するような曲においては、やはりハムバッキングのピックアップを搭載したものが好ましいということ、そして、フロイドローズ付きのBC.RICH系のミディアムスケールでスルーネックのギターを長年使ってきたということから、その演奏性の良さからも、なかなか決断ができないといった状況であったわけです。

 ストラトシェイプを選択した理由は、人間工学的にも優れた演奏しやすいムダのないデザイン(⇒さらには使用者の年齢を問わないデザイン)ということはもちろんのこと、ストラトのボディやネックの構造は、ほぼ完成された仕様を持つレス・ポールモデル等とは異なり、様々な改造/改良/実験を施しやすい母体的な要素を持つものであるとも言えるからです。

 このようなことで、とりあえず、選ぶべきギターの仕様は、これまで使用していたギターがサブとして使えるということも考慮し、以下のようなものになってきました。

 @ボディ及びヘッドはストラトシェイプ
 Aミディアムスケール
 B可能であればスルーネック
 C少なくともリア位置にハムバッカー搭載


 しかし、現在、そのような仕様の製品は市場には全く無い状態ですので、できるだけ目的の仕様に近い市販の製品を購入して改造するか、または、完全にフルオーダーで製作を依頼するか、といったことの選択となってしまいました。(⇒1970年代等においては、スルーネックのストラトの生地の本体等も、専門店で販売されていたことがありましたが、需要の少なさからか、近頃はそのようなものは全く見ない状況であります。)


1−2.スルーネックの本体

 ただし、市販のものを改造すると言っても、このような仕様に近いものは、決してストラトシェイプとは言えず、おまけにロングスケールのアイバニーズのRGくらいで、しかもスルーネックモデルはけっこう高価でありますので、この手の案はNGとなります。

 では、フルオーダーか?ということになるわけですが、上記のような仕様のギター全体をフルオーダーで作ろうとすれば、いくら安価な店でも30万円以上はかかることが目に見えています。
 このことから、”スルーネックのストラトの未塗装状態(生地)の本体のみをオーダーメイドで作ってもらい、塗装と組み立ては当方で行って、できるだけコストを下げる”という案が浮かびました。

 そこでまずは、生地で未塗装のスルーネック本体を作ってくれる店を捜してみたのですが、未塗装での製作は無理という店も多く、結局は、最も快く対応していただき、かつ価格もリーズナブルなものであったということで、みなさんもお馴染みであろう大阪の”GUITAR WORKS”さんに御願いすることになりました。


 出来上がってきたものが下の画像のものです。(⇒画像では、指板に塗装のためのマスキングがしてあります。) 各部仕様の決定等には、けっこうな時間をかけるものとなりましたが、とりあえずは満足のいくものを作っていただけたと感謝しております。(価格は、約17万円です。)






  生地状態の本体 

 これにおける仕様上の特徴等を挙げると、次のようなものになります。

(1) ネックはメイプルとマホガニーの5ピースのスルーネック、これに、アルダー単板のボディを両側から取り付け、比較的ローコストの材ながら、できるだけ広い音域をカバーすることを狙っています。
 また、B.C.Rich系のものは、スルーネックながらボディがたいへん薄いわけですが、これに対して、ストラトのボディの厚さでのスルーネックにてどれくらいサスティンの向上が図れるか、あたりを実験するという意味合いもあります。

(2) 指板はエボニーで400R、628mmのミディアムスケールでの22フレット仕様となっています。 
 これに関しては、24フレットにすることも考えたのですが、ボディが標準形状でなくなり、加工費が上がることと、また、フロントピックアップの位置変更による音の問題等もあり、22フレットまでとするものとしました。

(3) ネックの太さに関しては、これまでに使ったギターのネックでベストなものの各位置の断面のスケール(簡易スケール)を当方で作成して店に送り、それをもとに(大まかな)形状を削りだしてもらっています。

(4) B.C.Rich及びギブソン系等のものと同じく、ボディに対してネックに角度を付けたものとして製作されています。(⇒ピックガードから弦までの距離をギブソンやB.C.Rich系のものと同様なものにして演奏時のフィーリングを保つため、及び、フロイドローズのブリッジユニットのためのザグリを本体上面に設ける必要が無くなるためです。)
 ただし、リアピックアップの高さのアジャストには限界があるので、この範囲内での最大角度となっております。

(5) トラスロッドは、ギアを介してネック横からも調整できる構造を持ったものを使用しています。

(6) フロイドローズのオリジナルタイプがそのまま装着できるような各部の形状/寸法で、製作してもらっています。


1−3.ピックアップの選択

 ハムバッカーを載せたいとは言え、ストラトに通常サイズのハムバッカーを載せると、全体のデザイン的なバランスを壊し、イマイチなイメージのものになってしまうような気がして、私としてはどうも気が進まないものです。

 よって、ストラトの上品なイメージを残すようにするためにも、今回はセイモア・ダンカンのシングルサイズのハムバッカー(JB.Jr(SJBJ-1))を試してみることにしました。
 これに当たっては、ダンカンのジュニアタイプのピックアップの評判等の情報はあまり得られなかったのですが、けっこう興味もあったので、ものは試し、イチかバチかで採用してみました。

 しかし、実際に使ってみた結果、リア用のJB.Jrは、私にとっては少々出力が大き過ぎるようなので、近いうちにフロント/センター用のJB.Jr、または、同じくダンカンのLittle'59に換えてみるつもりです。(⇒リア用JB.JrのDC.RESISTANCEは16.09kΩ、これに対し、フロント/センター用は9.6kΩ、Little'59は11.78kΩ。 マグネットはいずれもセラミック)



 SJBJ-1を装着した状態 


1−4.指板とフレット

 私がこれまで使っていたギター全てにおいては、指板にスキャロップ加工を施していたのですが、この理由は、イングヴェイ氏の影響等ではなく、”私の指先が生まれつきたいへん薄い”ということのためです。

 指先が薄いと、ツメを一般のかたのような程度まで短く切ると、指先がすぐに炎症を起こしてしまうため、ある程度ツメを長めに維持しなくてはならないことになってきます。よって、このような状態であると、フィンガリングの際にツメの先が指板に当たりやすく、演奏に支障をきたすことになるので、やむなくスキャロップ加工を施していたということなのです。(⇒1979年あたりから、スキャロップにしているでしょうか。)


 しかし、ネックの強度への影響の心配等からも、できればスキャロップにしたくないという思いが、これまで常にありましたゆえ、今回は高さのある太いタイプのフレットの使用でこれをカバーすることにトライしてみました。

 選んだのは、GUITAR WORKSさんの扱っているフレットの中では最大寸法となる、ジムダンロップの#6000で、プロミュージシャンのかたでは、このフレットでさらにスキャロップ指板を使う場合もあるようですが、実際に使ってみると、このフレットの高さだけで十分と言えそうです。(⇒下の画像を御参照ください。(調整中につき1弦がありませんゆえ、申し訳ありません。))

 私の場合、上記の理由から、チョーキング(ベンド)時には、他の弦もたばねて持ち上げるのではなく、となりの弦の下に指先をもぐり込ませるという方法を使っておりますが、これに関しても#6000のフレットであれば十分対応できます。
 極太フレットということでピッチの精度が多少心配されますが、これから実際に使う上で、データを得ていくつもりです。



 #6000の極太フレット 


1−5.スルーネック構造

 今回の一番のハイライトとなるスルーネック構造部分ですが、ある程度の形で製作してもらい、最終的な形状の調整は当方で行うという流れとさせていただきました。

 シェイクハンドグリップの体勢を維持したまま、なんとか22フレットまでを無理なく押弦できるような形状にシェイピングしてありますが、ストラトのカットの形状の限界から、B.C.Richのもの等に比べると、ハイポジションでのグリップは多少きびしいものになってしまうところではあります。



 スルーネック部 


1−6.電気回路系

 ワイアリングに関しては、これから色々と実験して決めていく予定でして、現在のものはその行程での1つの状態なのですが、B.C.Richのギターに準ずるものということで、センターピックアップをダミーにしてハムバッキング×2の状態とし、ギブソン系列等と同様になるように設定してみました。

 ピックアップ切り替えのトグルスイッチは、一般的な3wayのストラト用のものを付けてありますが、トーンコントロールを設けないため、トーンの接続用端子を利用してチョイト細工し、センター位置でフロントとリアのミックスになるようにしてあります。

 3つのボリュームノブに関しても、現在1つはダミーで、他の2つはフロントとリアのそれぞれのボリュームとなっておりますが、フロント/リアのミックスの音がイマイチなので、近いうちに他の構成に変えてしまう可能性もあります。(⇒まずは、リアピックアップを替えてみてからということになりますが)

 ボリュームポッドはCTSのもの、ジャックはスイッチクラフトのものを使ってみましたが、あまり安価なものならばともかく、一般の国産のものに比較して本当に良いものかどうかは何とも言えないところかも。
 ボリュームを回す際の感触は、これならば国産の高級品のほうが良いって感じですし、スイッチクラフトのジャックの接点部の金属はけっこう変形しやすかったりして、少々心配です。

 特に、自分で組む場合は、インチ基準の各部寸法はめんどうで、インチ径/インチピッチのナットやワッシャをわざわざ用意しなくてはならないし、ボリュームノブにはスリーブを入れて径を調整する必要があるし(⇒スリーブを入れても、少々不安定でピシャリと入ってくれません。)、なかなかに面倒ですねェ。


1−7.塗装

 ギターの塗装を行うのは、10年ぶりくらいなのですが、相変わらず本格的な塗装器材も無いので、一般の缶入りラッカースプレー等、全てホームセンターで入手できるようなものを使用して塗装を行っています。
 ただし今回は、多少なりとも、まともな塗装環境を作ろうと思い、アングル材を組んだフレームに扇風機を改造した排気装置をつけた簡易塗装ブースを製作し、屋根裏の物置部屋に設置、これにて作業を行いました。


 各種紙ヤスリでの生地研磨 ⇒ 木材用プライマー(ウッドシーラーの代用)塗布&研磨 ⇒ サンディングシーラー塗布&研磨 ⇒ ラッカー塗布&研磨 ⇒ クリアラッカー塗布 ⇒ 耐水ペーパー(#800〜#2000)での水砥ぎ ⇒ コンパウンド3種での研磨
 といった過程で仕上げまでを行っています。(生地研磨以外の各工程での研磨は、塗料類を塗布するごとに、#600〜#800での耐水ペーパーでの水研ぎを繰り返しております。(臨時の塗装施設のため、ホコリ等が表面に着きやすいためです。))

 最近では、都内及び近郊でもサンディングシーラー等がホームセンター等には無く、結局、渋谷の東急ハンズで見つけて購入したりしました。(最初から通販で購入したほうがよかったかも)
 また、マホガニーの目止めの難しさは、かなり甘く見過ぎておりまして、何とかデッチアゲましたが、塗装が厚くなってしまった要因ともなっており、反省であります。


1−8.その他

 その他のパーツ等に関しては、ペグはシャーラーの”M-6L MINI”、ピックガード(3ピース8点止め)やバックプレートはGUITAR WORKSからの購入品、また、シャーラーのロックピン装備といったところでしょうか。



 このようなことで、自分が使っている機材になかなか自信が持てないゆえ、音楽教室のくせに使用機材紹介さえ無いというヒドイ状況であった当サイトですが、ホンの少し自信が持てる内容になったので、紹介させていただいているというわけであります。

 今回のものを製作した結果としては、ネック断面の形状も指定させていただき、当方でも自分の好きなようにさんざんいじくりまわしたおかげで、以前に使っていたギターのフィーリングとほとんど変わらない状態のまま移行できたかと思います。
 スルーネックの効果に関しても、B.C.Richタイプのものに比べ、さすがにストラト程度のボディの厚さがあると、ネックからの振動が効率良くボディに伝わってくるのも体で感じられるもので、それなりの威力は持っているようではあります。

 ただし、塗装を念入りにやり過ぎたことや、JB.Jrが想像以上に重いものだったこともあり、ギター全体の重量がレス・ポールを越えるほど重くなってしまったことにはビックリ。専用のストラップを作る必要に迫られそうです。


 なお、製作工程等のさらなる詳細に関しては、いずれ専用ページを設けまして、載せさせていただく予定です。


 ⇒次回は、ベース編です。


(2007年 2月分)

 <私的機材紹介です(その2)>


2.ベース編

 2−1.全体のコンセプト

 ベース製作に関するコンセプトは極めて単純なものでして、これまでまともなプレシジョンベースタイプのものを使ったことが無かったので、プレベ仕様でできるだけ満足のいくようなものを作ろう。ということだけです。(⇒要は、きわめてノーマルなプレベを作ろうとしたということです。)
 ただし、これには、1ピックアップでの音作りの限界を知りたいなんてことも含まれておりますし、また、例によって、”最も低予算で作るにはどうすれば良いか?ということの追及”という意義も存在しております。

 最初は、生地状態のボディとネックを入手しようと思い、色々と調べてみたのですが、ギターに比べてベースのネックとボディ単体は既製品が意外と少なく、”ベースに関しては、キットで入手してしまったほうが、逆に早くて安い”などと業者さんに言われてしまいました。

 ベースのキットものでは、当然、ブリッジやらピックアップやらが付いてきますし、ボディがアルダー材であっても、5ピース構造のものあたりになってしまうのですが、ボディ製作をわざわざオーダーすることに比べれば確かに安いですし、シースルーの塗装にする予定もなかったので、”それほど音にはシビアに効いてはこないだろうし、まあ5ピースでも良いか”なんて結論に(幾分無理やり)到達させたのでありました。


 2−2.結局は色々とハンドメイド

 といったわけで、アルダー材のボディで、そこそこ安価な某楽器店のプレベのキット(価格 約2万4千円)を入手したのですが、品が届いてビックリ、ボディはまあ良いとして、ネックにはえらく細いフレットが打ってあるし、ナットも切られていないし、という状態です。

 少々困ってしまったのですが、このまま放っておくわけにもいかないので、こうなったら一石二鳥ということからも、前々からいつか実施しようと思っていた”ナットのミゾ切り”と”フレットの打ち換え”にチャレンジすることにしました。
 ナットを切ることについては、手持ちの各種径のヤスリ等を駆使すれば何とかなりそうですが、フレット打ち換えについては、さすがに専用の工具の入手が必要となるゆえ、ギターワークスさんから、いくつかの工具及び交換用のフレットを購入しました。
 ただし、これに関しても、それぞれがかなり高価な特殊工具ゆえに、できるだけ手持ちの工具、及びそこいらで入手できる通常の工具を利用することとし、必要最小限のものの購入におさえてあります。

 ということで、以下に挙げるものが購入した専用工具とフレットで、費用は計\33,000といったところです。(画像の左端にあるのは自作したフレットエッジヤスリ、上端にあるのはストレートエッジ替わりのアルミ製スケールです。(⇒湾曲して見えるのは、私の撮影技術がヘボいからです。))


・フレットぬきニッパー
・フレットカットニッパー
・フレットベンディングプライヤー
・フレットハンマー
・フレットセッター
・指板ガードプレート
・フレット整形ミゾやすり

・フレット(ジャンボ)



  購入/使用した各種工具とフレット



 2−3.ネックの出来上がり

 ギターリペア関係の文献や、ネット上の記事等を参考にもさせていただき、”ナット切り”と”フレット打ち換え”を行い、塗装を施して完成したネックの状態が下の画像です。

 フレット打ち換え作業については、フレットの引き抜きに30分、新しいフレットの打ち込みに1.5時間、調整に30分といった感じで行えました。
 今回使用したネックの指板は、フレットの引き抜き時に表面のはがれ等が全く無かったので、作業はスムーズにいきましたが、このあたりは指板に使用されている木材の状態によっても変わってくるものでしょう。

 フレット打ち換えに関しては、あと2〜3本のギター/ベースについて実施し、さらにコツをつかんでいく必要がありそうですが、とりあえず、これからはフレット打ち換えに大金を投入しなくても良さそうなので、やはりチャレンジしてみてよかったと思うところです。(⇒自分で作業を行えば、基本的にはフレット代の約\3,000〜\4,000で済みます。したがって、リペアを依頼するのに比べ、毎回3万円程度は浮くことになりますから、工具に投資した分などはすぐに元が取れるということです。)


 塗装に関しては、ギターでのものと同じ工程ですが、ネックは着色しないので、ラッカーはクリアのみとなっています。

 なお、このプレベのキットはフェンダーのどのあたりのモデルを意識したのかわからないのですが、ネックはけっこう細めでありまして、弾きやすいとは言え、ちょいと残念なものです。


  ネック指板面

  ネック背面

  ナット部


 2−4.ボディの塗装

 ボディの塗装に関しても、前回のギターと同様な工程ですが、下地については、最初に”との粉”を塗って、より確実に目止めを行っています。(まあ、おまじない程度かもしれませんが)

 そして、これも前回にチョイと書いたことですが、ラッカーでの着色工程、トップコートの工程においては、一回吹くごとに研磨を行い、ホコリ等の不純物の除去と、表面のより平面化を図っています。着色/トップコート共に、それぞれ5〜6回は吹いているでしょうか。(⇒毎回研磨を行っているので、ストレートに5〜6回塗り重ねたような厚さにはなってはおりませんです。)


 2−5.各部パーツ

 今回使用したベースのキットには、ゴトー製のそこそこ良いクラスのパーツが付属していたのですが、せっかくの自作ですので、各部のパーツは以下のようなものを別途購入して使用しています。(⇒ゴトーさんのパーツは、以前にジャンクで購入した某メーカーのプレベに流用)

・ペグ
 ⇒ギターワークスさんのクルーソンタイプのもの

・ピックアップ
 ⇒セイモア・ダンカンのSPB−1を使用しています。
 これは、あまり奇をてらったものではなく、ごく普通の音が出るものとして選んだものですが、製品の説明によれば、トレブルを幾分強調したもののようで、確かに、そのような音が出ます。(→広告に偽り無し)

・ブリッジ
 ⇒ギターワークスさんの、ヴィンテージスタイルのスチールプレス品ながら、プレート厚を3mmに増したというブリッジです。
 従来のものでは軽快過ぎ、しかし、バダスタイプではちょっと重々しいかな?ということで、選んでみました。(あくまでもイメージ的な感覚によるものです。)

・ピックガード
 ⇒ギターワークスさんの57/62タイプ、13点止めのもの

・ボリュームポッド

 ⇒CTSのものを使用

・ジャック
 ⇒スイッチクラフトのものを使用

・その他

 ハイアジャスター
⇒ ベースのピックアップでは問題となりがちな、弦振動によるグラツキを防ぎ、かつ、スプリングを内蔵して高さ調整も可能としている、ピックアップ下に入れるスペーサーパーツですが、今回試しに使ってみました。スプリングの力がけっこう強いので、PUの固定用ネジが負けそうになって少々不安ですが、今のところ良好です。

 ストラップピンワッシャー⇒ ストラップピンが直接ボディに当たるのを防ぐスペーサーですが、ギターワークスさんのものを真似て、本革製のものを当方で製作してみました。商売がら、当方には余り革がそこいらに、たくさんころがっておりますので、いくらでも生産でき、こりゃ便利。


 2−6.組み立てて完成

 各パーツを取り付けて完成した状態が下のものです。


   完成画像1   完成画像2

     完成画像3



 2−7.感想

 今回の製作において、まず感じたことは、ネックの塗装方法による演奏時のフィーリングへの影響ということであります。

 ネックの塗装については、ボディと同じく、すべてラッカー系のものでの下地仕上げを行った上で、クリアを吹いてあるわけですが、音質への影響があるかどうか?はともかく、サンディングシーラーで十分に肉付けを行ってもいるため、非常に握り心地が良いものとなっております。
 一般のものに見られるようなポリウレタンでの塗装や、音質への影響を恐れるがためのほとんど生地のままのネックに比べると、その感触はかなり優れたもので、これはなかなかクセになりそうです。

 ということで、ボディの塗装もラッカー塗りにすると音質の向上が図れるのはもちろんですが、ツアー等での現場における過酷な使用状況の中での丈夫さから、ポリウレタン塗装をあえて選ぶという人もいらっしゃいます。 したがって、ネックだけは十分に手をかけたラッカー塗装にするといった考え方もありかな?なんて思ったりします。


 次に、フレットやサドルの形状のせいからか、弦のテンション感は意外に小さいものとなっておりまして、良く言えば、フィンガリングやピッキングが楽なもの、悪く言えば、手ごたえが少々不足ぎみかな?といった感じになるでしょうか。
 もっとも、けっこう多くの人に触ってもらいましたが、幸い、おおかた評判は良い状況であります。(特にネックは) 


 そして、肝心の音についてですが、アルダー材のボディに細いネック、そして上記のSPB-1ということで、教科書どおりといった感じに、その音質も中高域が比較的目立つ、輪郭のはっきりした音質となっております。
 そのうち、より肉厚で質量の大きいブリッジなどを取り付け、中低域をもう少し出すようにしてみても良いかも、とも思っています。


 2−8.製作費用について

 前回のギターに関する記事では、製作にかかった金額等について書き忘れてしまいましたので、ここでギターとベースの両者にかかった費用の概略を書いておきます。


<ギター>

・フルオーダーでの生地本体製作代:約17万円

・パーツ代:約6万円

・塗装費用:約3千円

 ⇒合計:約23万3千円


<ベース>

・本体キット:約2万4千円

・パーツ代:約4万円

塗装費用:約3千円

 ⇒合計:約6万7千円


 その他、上述したように、フレット打ち換え用の工具類に3万円強、塗装用のブース製作に1万円程度の費用を投入しています。(⇒これらに関しては、今後の作業によって原価償却できるものでありますが)


 ⇒次回は、ギター用のエフェクツとアンプ編です。
 


(2007年 3月分)

 <私的機材紹介です(その3)   ギター用器材編>



 ライブ活動用のギター関連器材に関しては、これまでにも紆余曲折を経てきたのですが、次回からの活動用としては今回解説するようなものを準備しております。

 まずは下に、機器の全体画像、及び、構成/接続チャートを示します。



 エフェクター&アンプ システム全体像 





1.全体のコンセプト


 今回のものは、以下のような少々欲張った条件のもとに、基本的な構成と使用する機器の検討を始めたものです。


1−1. ポップス系のジャンルで使用するようなクリアな音から、ある程度のハイゲインの歪んだ音までを作ることができること。

1−2. 各種エフェクツのON/OFFと接続順、及び各々のパラメーターの変更も含めて、フットスイッチにて瞬時に設定の切り替えができること。 また、ボリュームのコントロールは足元のペダルによって行うものとするが、これにおける音質の劣化を極力避けるようにすること。

1−3. スタジオ時/ライブ時に短時間でセッティングが完了できること。

1−4. スタジオ練習時において、車にての輸送を前提として、車からスタジオまで一度で運び込める程度の器材量であること。



2.使用機器の選択

 基本条件は上記のようになりますが、次に、各条件項目に関する考察を記述します。

1−1項について

 ロック系のクリアな音ならともかく、一般のジャンルの曲での歪ませないクリアな音を出すためには、チューブのヘッド等を使ったものでは無理があり、また、ヘッドのSEND-RETURNへの空間系エフェクターのみの接続等は、システムを大規模なものとしてしまいます。

 したがって、歪みの音質には多少目をつぶって、アンプでは無く、歪み系エフェクターを使用して作ることとし、これを含め、エフェクターにて全ての音色を作った上でトランジスタアンプにて音を出すという構成とすることにしました。(⇒使用アンプは、現状ではROLANDのJCということに自動的になってしまいますが)


1−2項について

 上述したように、使用する音色としては、コンプレッサー等もかけたクリアーな音から、ハード/ヘヴィ系のハイゲインの歪んだ音、また、これらに対してコーラスやディレイ等の空間系ものも使用することになりますので、少なくとも5〜6種のエフェクツが必要となります。

 そして、各エフェクツのパラメーター(ツマミ位置)までメモリーしてプログラムチェンジできる必要もあることから、コンパクトタイプのエフェクツを使ったスイッチングシステム等ではNGとなりますので、これまた多少の音質劣化には目をつぶって、マルチエフェクツを使わざるを得ないということになってきます。


 よって、使用するマルチの選定となるわけですが、これに関しましては、さらに次のような条件が加わってくるものとなってしまいました。

@ 特殊効果用としてラックマウントのエフェクターであるDigitechのIPS-33Bを常備しておきたいということがあるので、マルチエフェクツ本体にエフェクトループの機能があって、かつ、ラックマウント方式のものである必要がある。

A 足元のボリューム用のペダルにて音量調整を行うものとしたいが、マルチ本体がラックマウントのものである場合、本体よりボリュームペダルまで長いシールドにての往復の接続を行えば、音質劣化とノイズ量の悪化が心配となる。
 従って、これを防ぐため、MIDIでのリモートによる音量コントロール機能が使えるマルチであることが望ましい。

B マルチ本体での歪みの音が好ましくない場合は、外付けでの歪み系エフェクターにてのカバーが必要となる。よって、このような場合は、IPS-33B用と共に、2つ以上のエフェクトループを持っていることが必要となってくる。



 ということで、上記のような条件、及び予算の問題(⇒これがデカイのですが)も含めて、選択したものはBOSSのGT-PROということになりました。
 GT-PROのアンプモデリング(COSM)の機能がほとんど実用的では無いのは既に明白なので、これはいっさい使わずに、エフェクトループに当方のチューブディストーション(RTD-1)を入れて使うということになるわけですが、GT-PROは3つのエフェクトループを持っておりますので、歪み系用とは別に、IPS-33Bを入れることも余裕で可能となります。(⇒もちろん、これらのループのON/OFFのプログラムも可能です。)

 ハイゲインの歪み以外のクランチ程度の歪みに関しては、もう1つ余っているループにオーバードライブ系のものを入れても良いのですが、とりあえずは、GT-PROのアンプモデリングでは無い、通常の歪み系の機能を使えば十分にいけそうなものです。

 また、GT-PROにはチューナー用のOUTPUTも設けられているので、視認性の悪い本体のチューナー表示は使わずに、KORGのラックマウントチューナー(DTR-2000)を接続して使うようにしてあります。

 そして、プログラムチェンジ及び音量コントールは、ROLANDのMIDIコントローラー(FC-200)によって、MIDIケーブル1本の接続のみで、足元から行えるものです。(⇒IPS-33Bの音色のチェンジも、別途のMIDIコントローラの接続、またはFC-200での一括制御によって可能です。)


1−3項について

 ”短時間でのセッティング”ということに対しては、まずは、各機器を接続する時間をできるだけ短縮するということから始まりますので、全ての機器を1つのラックに納め、各機器の電源も一括して取りまとめるようにするといったことになってきます。

 このことから、6Uの軽量ラック(SKBのRLX-6)に全ての機器を納め、電源モジュール(CLASSIC PROのPDM/LS)からAC100Vを供給するものとしてあります。(6Uとしたのは、将来のワイヤレスの使用も考えているからです。 また、RTD-1はラックの後部に内蔵(固定)してあります。)

 また、コントロールボードの接続に関しては、上述したように、FC-200をMIDIケーブル1本で接続するだけでOKとなっています。(⇒FC-200の電源は、とりあえずは本体内蔵の電池を使用するものとしています。(ACアダプターの使用も可です。))


 このようなことで、ラック本体は以下の画像のような状態となっております。





ラック本体
上段より、PDM/LS、DTR-2000、IPS-33B、GT-PRO (RTD-1はラック後部内蔵)




MIDIコントロールボード FC-200

1−4項について

 今回使用しているRLX-6という樹脂製のラックケースは、本体自体に輸送用の車輪とハンドルが装備されているものです。
 
 輸送時に移動させるものは、このラックとMIDIペダル(FC-200)、そしてケーブル類ということになるわけですが、FC-200とケーブル類は、小型キーボード用のソフトケース(GIGSKINZのGSK-3)に入れることが可能ですので、移動時の形態は以下のように、けっこうコンパクトになってしまうものです。(⇒少なくとも、スタジオ練習時は店のアンプを借りるとして)

 もちろん、この他にギター等もあるわけですが、最悪、車を使わなくても、電車にて一人で輸送できないこともないものとなっております。(⇒さすがに、これはけっこうハードそうではありますが)


   

FC-200をソフトケースに収めた状態






輸送時の形態


3.まとめ

 上述しましたように、BOSSのGT-PROは、アンプモデリングによる歪み系の音を除けば、その価格のわりには、けっこう使える機能が色々と用意されている優れたものであったりするのです。
 したがって、あとは、マルチ機能による音質劣化さえ実用範囲のものであれば良いということになってくるわけですが、これに関しては今後様々な場で実際に使用してみた上で結論が出るものかと思っております。

 いずれにしても、このようなシステム構成は、どのような場で?、どのような曲の演奏を行うか?等によって様々に変わってくるものですから、各自の条件、さらには音の好み等に合わせて決めていただくべきものです。
 よって、どれがベストというようなものでも無く、色々な結果が出てくるものでしょうし、それがまたおもしろい部分であるとも言えるかと思います。(プロのかたでも、しょっちゅう変更していたりしますしね。何がベストであるかは全くわかりません。)


4.追加事項: その他のエフェクツシステムとの比較

 今回紹介したシステムは、使用上の条件から、コンパクトタイプのエフェクターで構成するものでは無く、マルチエフェクターを心臓部とするものになったわけですが、このような類のものでは、t.c.electronicの"G.SYSTEM"なんかではダメなの?と思われるかたもいらっしゃることでしょう。

 確かに、天下のTCエレさんの製品ですし、その音もGT-PROなんぞよりも良いのかもしれませんが、まずはその価格からして購入は無理ということがある一方、もう1点、私にとっての問題があります。
 G.SYSTEMは、フットスイッチ部と本体が分離でき、本体をラックに収めることも可能となっているのですが、フットスイッチにはボリューム用のペダルまでは付いておらず、エクスプレッションペダル(EXペダル)を別に用意して接続することになります。

 しかも、このEXペダル用の端子は、本体にしか付いていないようなので、本体を分離してラックに収めた場合には、フットスイッチのボードへとは別ラインで、ラックからケーブルを引っ張ってきてEXペダルに接続する必要があるようで、けっこう面倒なものとなってしまうようなのであります。
 まあ、MIDI機能は当然のごとく付いておりますので、FC-200のようなボリュームペダル付きのMIDIコントローラーで本体を制御しても良いのかもしれませんが、そうすると、もともとのペダルボード部が必要なくなってしまったりして、何だかよくわからない状態になってしまいます。


 要は、G.SYSTEMとは、たくさんあるエフェクトループを使って外付けのエフェクターを追加するにせよ、コンパクトエフェクターの使用を前提として足元に集中して置くことを第一条件としているようでありまして、私のようにラック主体でいきたいものにとっては、あまり向いていないものかと思った次第です。(まあ、先にも書いたように20万円以上の価格では、とても買えないのですが)



 ということで、私の器材に関する記事は、とりあえず今回で終わりです。(ベース関連器材が、もう少し充実したら、また書こうかと思っております。)

 さて、次回からは、巷において、どうもアヤフヤな知識となってしまっている、”エコノミーピッキング/スウィープピッキング”について、その正確な正体(?)を21世紀になっていまさら書いていこうかと思っております。
 


(2007年 4月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第1回) 概説 >



 スウィープピッキングというものが登場してから、はやくも四半世紀、近年では、ハード/メタル系のギタリストのみなさんの間では一般的なテクニックとなっている(であろう)反面、音楽ジャンルによっては、”スウィープというものがよくわからない”という状況があるのも、また事実です。

 さらに、教則本やネット上の様々なサイトのスウィープピッキングの解説においても、どうも浅い内容になってしまっているものや、あやふやな説明のものが多々見受けられますゆえ、今回から数回に渡って、けっこう深い部分まで掘り下げ、一般の記事では述べられていないようなことも交えながらスウィープに関する話を書いていきたいかと思います。


 まず第一回目は、概略を知るという感じで、軽めに流していきましょう。


1.その背景を少しだけ

 スウィープピッキング(スウィープ奏法)が本格的に世間に認知されたのは、やはり1983年あたりにイングヴェイ・マルムスティーン氏が多用した時点からということになるのでしょうが、そのホンの少し前に、ナイトレンジャーのジェフ・ワトソン氏によって、スウィープの出発点となるエコノミーピッキングによる(当時としては)超絶なフレーズが、明確な形を持って初めて大々的に公開されたという事実もあります。

 実際には、エコノミーピッキング/スウィープピッキング共に、この後、フランク・ギャンバレ氏によって系統立てた奏法として総括されるわけですが、スウィープに関しては、80年代から90年代にかけて、トニー・マカパイン氏及びその弟子にあたるジョーイ・タフォーラ氏あたりにおいて、少なくともその基本パターンについては既に完成された域に達していると思います。

 もちろん、この後、現在に至るまでに、多少の新しいパターン等が加えられてきておりますが、その奏法の難易度と、フレーズ的な美しさに関しては、この時代でとりあえずのピークを迎えているのかと考えられるわけです。


2.体感で覚えてしまって良いのですが

 上述したことからも、スウィープ奏法の全体をつかもうとすれば、まずはトニー・マカパイン氏の当時の代表曲あたりをマスターしなければ始まらないとも言えるのですが、どのようなスウィープのフレーズでも、それを弾けるようになるには、とりあえずは理屈抜きで個々のフレーズをひたすら反復練習して感覚的に覚えてしまうしかないものではあります。(⇒少なくとも、曲のコピーにおいては、理論的な知識がない状態でも、私なんぞよりも3倍くらいうまくスウィープのフレーズを弾けるような若いかたがたが、たくさんいらっしゃいますし)

 しかし、実際に自分のオリジナル曲等で使うといった応用を考えると、その原理や奏法の詳細は知っておくに越したことは無いものです。
 ”スウィープ奏法”といった名称から、ハンマリング・オンやチョーキング等と同様なテクニック(技)の1つとしてとらえてしまいがちではありますが、実際には、スウィープピッキングを使って弾かれる個々のフレーズ全体が1つの単位として個々の曲に応じて存在するものであり、アドリブ的に気軽に連発できるようなものではないといった特徴もあります。

 特に、スウィープでのフレーズは、コード(和音)に大いに関連したものですので、コピー曲を弾けるということから一歩前進して応用性を持たせるには、どうしても理論的なことも知っておいたほうが良いと思われるわけです。


3.これだけは知っておこう

 ということで、まずはスウィープに関して事前に頭に入れておくべき重要事項を以下に挙げますので、これにて心の準備(?)をしてください。

 これらは、意外に理解されていないことも多いものですので、既にスウィープを使いこなしているつもりのかたも、再確認していただければ良いでしょう。


<重要事項1> スウィープは一般的な技の集大成である

 スウィープを使うフレーズでは、そのピッキングテクニックもさることながら、各指の独立した動作(フィンガリング)、ハンマリング・オンやプリング・オフ、そして少々のタッピングといった基本的な技が十分にできることがまずは要求されます。
 すなわちスウィープとは、全ての基本テクニックの集大成的なものの1つであると言えるのですが、”毎回各弦をピッキングするから、ハンマリングやプリングは関係無し”ということでは無かったりするわけです。

 もちろん先に書いたように、まず弾けるようにするには、理屈抜きでひたすら反復練習あるのみとなり、その中で各種技の習熟度を上げていくことも可能なのですが、少しでも短期間で上達することを考えれば、個々の技単位での理解も深めておいたほうが良いでしょう。


<重要事項2> 通常とは異なるピッキングの方法が必要である


 スウィープにおけるピッキングの方法は、一般的なロックギターでの、手首や腕を上下に振るといった動作とは異なることになります。

 基本的には、手首全体を上下に平行移動させるという動作になりますが、詳細については、次回以降で説明します。


<重要事項3> 各音を区切りながら弾くことが基本である


 何と言っても、これが最大の注意ポイントです。 ピッキングした音を出したまま次の音に言ってしまえば、通常のコードアルペジオと変わらなくなってしまいますから、多くのスウィープのフレーズで基本となる分散和音(ブロークンコード)というものを達成するためにも、1つずつの音を区切りって止めながら弾くことが必要になります。

 このために、ブリッジでハーフミュートをかけながら弾くこと等はNGであり、各音はミュート音では無い通常の音で出し、弾き終わったら、何らかの方法で確実にミュートして音を止めるという形になります。


<重要事項4> 個々のフレーズごとに異なるフィンガリングパターンが使われることが多い

 スウィープを使ったフレーズにおけるフィンガリングのパターンに関しては、ある程度はグループ分けできるものの、常にお決まりのものがあるわけではなく、個々のフレーズで適したフィンガリングパターンを考えることになります。

 また、通常のコードフォームを利用できるようなものもあれば、単音弾き的なものに限りなく近い場合もありますので、このような意味でも、フレーズごとに異なる対応を迫られることになり、なおさらスウィープ奏法というものを難しくしているものです。


<重要事項5> 最も難しいのはミュートである

 3〜4項に関連して、スウィープのフレーズで最も難しいのは、ピッキング自体よりも、ノイズ音を止めるためのミュートということになります。

 特に弾き終わった弦をミュートして音を確実に止めることは、最も難しいところであり、最後まで頭を悩ませられるポイントになるでしょう。


<重要事項6> スローテンポでもきれいに弾けなければダメ

 スウィープは、通常のピッキング方法よりも簡単に高速に弾けるようにするためのテクニックなわけですが、”高速で弾いている時はそれらしく聴こえていても、スローテンポで弾くとノイズだらけ”といった状態や、”スローで弾くと、途端にリズムが不安定になる”といったものは、やはりマズイものです。

 したがって、スローテンポで弾いても、きれいに弾けるような状態を確実に達成していけば、どのような場合にも対応できる基礎が作られるということになるかと思います。



 以上、このような点を再度確認してみてください。
 では、次回は、スウィープピッキングの基本である”エコノミーピッキング”の話から入らせていただきます。


 ⇒以下次回に続く
 


(2007年 5月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第2回)>


 エコノミーピッキング(その1) 


 スウィープピッキングを語るには、まずはエコノミーピッキングというものについて解説せざるを得ないわけでして、”今さらなんだ”と言われそうですが、とりあえずは書かせていただきます。(しかし、意外に気づいていないこともあったりするかもしれませんですよ。)

 ともかくは、”スウィープピッキングとは、エコノミーピッキングを3本以上の弦に渡って連続して行った形である”という基本事項を頭に置いていただいた上で、今後の話を読んでいっていただければと思います。


1.エコノミーピッキングの原理

 エコノミーピッキングとは、ピッキングする弦を移動する際に、ダウン/アップ交互のオルタネイトピッキングを用いず、ダウンまたはアップの連続にて、複数の弦を一気に弾いてしまうというピッキング方法を指します。(⇒”economy picking”ということで、効率的なピッキングといった意味になるものです。 要は、”省エネピッキング”ということです。)

 ダウンまたはアップの連続とは言っても、もちろん空ピッキング等も入れないわけですし、各弦のピッキングについてイチイチ構え直して弾くのではなく、あたかも一回のピッキングのような動作で複数の弦をまとめて弾いてしまうというものです。
 この場合、当然のことながら、コード弾きのように複数の弦の音を同時に出すわけではなく、各弦の音を区切りながら単音として出す必要がありますので、ミュート等の技術が習得できていることは条件となってきます。


 ということで、これによって、毎回のピッキングの動作をかなり省略することができ、慣れてしまえば、オルタネイトピッキングで弾くよりも簡単に、フレーズをより速く弾くことが出来る可能性が増すことになります。


2.まずは簡単なパターンから

 最初に、EX.2−1のようなハンマリング・オンとプリング・オフを含む4回の連続フレーズを弾くことを考えてみます。(Power Tab からそのまま切り取ってきた譜ゆえに、色々と表記が欠けており、申し訳ありません。)

 これは、keyがAマイナーのコード進行や、keyがAのブルースの3コード進行等において、Aマイナーペンタトニックスケールの1部分を使って弾くような、非常にありがちなフレーズであるわけですが、これを弾く際には、どのようなピッキングのパターンを使われるでしょうか?


 
  EX.2−1   ⇒PowerTab ファイル



 このフレーズでは1拍ごとに一周するパターンになっているわけですが、テンポがそれほど速くなければダウンピッキングだけで弾けるでしょうし、オルタネイトピッキングを使うならば、3弦5フレットをダウンピッキング、4弦7フレットをアップピッキングで弾けば良いことにはなります。(ハンマリング/プリングの部分で空ピッキングを入れてリズムの安定を図っても、このようになります。)

 ということで、まずは、このような方法で出来る限り速いテンポまで弾くということが前提となりますが、よりテンポの上限値を上げようとした場合には、エコノミーピッキングを利用することが出来ます。
 どの部分に使うかと言うと、フレーズ各周のつなぎの部分、つまり”4弦7フレット⇒3弦5フレット”とピッキングする弦が変わる部分に、ダウンピッキングの連続としてのエコノミーピッキングを適用するものです。


 1項でも書きましたが、ここで注意すべきことは、ダウンの連続とは言っても、2本の各弦につき、毎回構え直してからピッキングを行うのではなくて、あくまでも一回のダウンピッキングの動作で4弦⇒3弦と一気に弾いてしまうということです。
 要は、4弦及び3弦を弾く際に毎回振りかぶって弾くのではなく、4弦を弾いた直後に、そのままピックを3弦に落とすようにして、一方向への動作として弾き切ってしまうわけです。

 この時、もちろん、弾き終わった弦は次の音を出す前に(出すと同時に)何らかの手段でミュートをかけて音を止め、和音として音が出ないようにすることになります。(和音として出すような指示が無い限り)

 エコノミーピッキングを使えば、テンポ180くらいまでは、比較的楽に行けるのではないでしょうか。


3.ピッキング動作において注意すべきポイント

 さて、上記のように、2本の弦を1回のダウンピッキングのごとく一気に弾くとは言っても、エコノミーピッキングでは、通常のピッキングとは異なる動作を行う必要があります。

 以下に示すようなことが出来ていなければ、本当にエコノミーピッキングを行っているとは言えず、さらには、応用技であるスウィープピッキングもスムーズに行うことが困難となってしまいますから、何はともあれの必修事項です。


3−1.手首はブリッジ上を平行移動(⇒最重要事項)

 ロック系ギターのピッキングの動作の基本は、ブリッジミュート等の必要性からも、fig.3−11に示すように手首付近を支点として、これから先の部分を上下に振るというものになります。

 これに対し、エコノミーピッキングでは、fig.3−12に示すように、手を振るという形では無く、ブリッジ上で手全体を移動させながら弦を弾いていくといった形をとると、スムーズな動作が出来ることになります。
 これは、多くの弦に渡ってエコノミーを繰り返すことになるスウィープピッキングへの応用性等を考えれば納得できるかとも思いますが、各弦でのピッキングポイント(ピッキング位置)を一定に維持し、かつ、高速度でもピック先からなめらかに弦が抜けるようにするためには必要になってくるものです。

 通常のピッキング動作とはかなり異なりますので、わかりにくいかもしれませんが、言い換えれば、手首まわりや指の関節等もある程度固定したまま、ひじや肩の関節の動作を使って、ひじから先の腕全体を上下させるという感じになるでしょうか。


 
  fig.3−11 通常のピッキング動作 


 
  fig.3−12 エコノミー時のピッキング動作 


 当方のサイトにも書いてありますように、通常のピッキングでは、”弦を横方向(となりの弦への方向)に十分に押して(引いて)から離す”という動作で行うようにすれば、より音量を上げられると共に、芯のある抜けの良い音質も得られることになります。
 これは、横方向にピックを移動させるという点では、エコノミーピッキング時の動作と共通した部分になりますので、手首の動かし方は両者で異なるものの、通常のピッキングからエコノミーに切り換える際には、それほど違和感無く行える可能性があります。

 したがって、通常のピッキングの際に、常に手首を回してウチワをあおぐようにして弾いてしまっている人や、ピックを持つ指の動作だけで弾いてしまっている人等の場合、エコノミーピッキング時の動作に慣れるのにより時間がかかるだけでなく、演奏中に切り替えるのにも時間がかかってしまうかと思うところです。(⇒スウィープのフレーズ内で通常のピッキングを使う部分が存在する場合もありますので)


 ということで、やはり、”弦を横方向(となりの弦への方向)に押す(引く)”という動作こそがピッキングの基本となっているとも言え、これを日頃から押さえておけば、エコノミーピッキングやスウィープピッキングにも進みやすいものとなるかと思います。(⇒ピッキングの動作は、ギター上面に沿った平面上で行われるものが主体となるということです。)


3−2.ピックは弦と平行に

 ロック系の通常のピッキングでは、ピックと弦の引っ掛かりを軽減させ、より速くスムーズに弾けるようにするため、fig.3−21のように、弦に対してある程度の角度(30°以内程度)をつけてピックを当てることになるのが一般的かと思います。(⇒音質や音量等の理由から、あえて平行にして当てるようにする場合もありますし、また、常に平行にして弾くかたもいらっしゃいますが)

 しかし、上述したように、エコノミーピッキングでは、手や腕全体の移動によってピックを弦に対して垂直方向に移動させますので、fig.3−22のように、ピックは弦と平行にして行ったほうが、よりスムーズな移動が可能となってきます。
 弦に対して角度を付けてピックを当ててしまうと、指先においてピックが回ってしまう等、安定したフォームを維持できなくなる恐れがあります。


 先日のヤングギター誌の記事によると、通常時のようにピックに角度を付けた状態で、エコノミー/スウィープピッキングを行う人もいらっしゃるようですが、弦と平行状態にしてしまったほうが、次に示す”ピックを傾かせること”も行いやすく、全体動作をより楽に行えるようになるかと思います。


 
  fig.3−21 通常のピッキング時のピックと弦の角度 


 
  fig.3−22 エコノミー時のピックと弦の角度 



3−3.ピックを軽めに持って傾かせる

 エコノミーピッキングやスウィープピッキングにおいて、より速くスムーズな動作を達成するためには、”ダウンピッキングまたはアップピッキングの連続を行いやすいように、ピックを幾分傾ければ良い”ということは、その手の記事でもよく書かれていることですので、御存知のかたも多いでしょう。

 通常のピッキングの場合でも、ダウンピッキングのみで行う際には、ピックを傾けて、ダウンの動作を行いやすくすることは多々あるかと思いますが、エコノミーの場合の”ピックを傾ける”という体勢に関しては、ピックを持っている指先にて故意に傾けるのでは無く、”ピックを通常よりも軽めに持つ(はさむ)ようにし、ピックが弦にぶつかることによって、はじめてピックが傾くようにする”ということが非常に重要なポイントとなります。(fig.3−31参照)


 
   fig.3−31 軽めに持つことでピックを傾かせる 



 スウィープピッキングが使われるような超高速のフレーズでは、ダウン方向の動作から直ちにアップ方向の動作に切り替えて往復するといったことが多くなりますので、指での持ち方等で故意にピックを傾けているようでは、動作が間に合わなくなる可能性があります。
 したがって、指の持ち方は一定のままで、あくまでもピックが弦に当たることによって自然と傾くようにすれば、ダウン/アップの切り替えも極めて速く行えることになります。(⇒ただし、ピックの柔らかさ等によって、力の度合いをどれくらいにするかは異なることにはなります。)

 もちろん、ピックを軽く持てば、音量が低下する恐れもあるわけですが、スウィープのフレーズでは、ハンマリング・オンやプリング・オフも含め、フィンガリング側(指板側)の指の動作にて、ある意味タッピング的に音を出していることが多かったりします。
 これに関しての詳細は次回以降に説明いたしますが、異弦同フレットのジョイントがあるような場合以外は、指板側の指の動作のみで弾けてしまうことも多く、音量のコントロールはピッキング動作ではなく、むしろフィンガリング動作に主導権が存在したりするものなのです。

 このようなことも含め、ピックの持ち方は、十分に検討してみてください。


4.エコノミーピッキングの基本練習パターン 

 EX.4−1と4−2に示すものは、かつてエコノミーピッキングの第一人者であったフランク・ギャンバレ氏あたりが、基本中の基本の練習パターンとして挙げていたものです。

 両者共に、各弦3つずつの音を3連符で順番に弾いていくものですが、弦を移動する際にエコノミーピッキングを使用し、EX.4−1ではダウンピッキングの連続で、EX.4−2ではアップピッキングの連続で行うことになります。

 特にEX.4−2では、アップから始めるところがミソですが、このように、フレーズの最初をアップで始めたほうが、エコノミーピッキングが使用できる状態に持ち込みやすいといった場合も多くありますので、必ず色々なピッキングのパターンを検討してみることが大切です。(⇒オルタネイトピッキングの場合でも、アップからスタートしたほうが弦移動を行いやすいといったことがあり得ます。)

 アップの連続でのエコノミーは、慣れないうちは非常に気持ちの悪いものですが、一度慣れてしまえばスムーズにできるようになるかと思います。


 
  EX.4−1   ⇒PowerTab ファイル


 
  EX.4−2   ⇒PowerTab ファイル



5.その他、エコノミー使用時の諸注意

5−1.とにかくリズムに注意!

 エコノミーピッキングは、ダウンまたはアップピッキングを連続で行いながら弦移動を行うため、どうしてもリズムが乱れがちとなります。
 したがって、何と言っても、リズムが不安定にならないようにすることが注意点となるわけですが、この対策としては、例によってメトロノームを使用して、スローテンポから徐々にテンポアップしていく練習方法しかありません。

 実際の演奏においては、かなり速いテンポ時にエコノミーを使うことが多いわけですが、エコノミー自体の練習としては、やはり”スローテンポでも安定したリズムで弾けるようにする”といったあたりから始めるべきとなるものです。

 まずは、上記のEX.2−1などをテンポ60あたりで安定して弾けるかどうかを確認してみてください。(できれば、録音して聴いてみましょう。)


5−2.無意識に使わない!

 今回、EX.2−1で挙げたようなペンタトニックスケールでのフレーズは日常的に使うものであり、人によっては無意識にエコノミーピッキングを交えて弾いてしまっていることも少なくないものです。(⇒自分で気づいていないこと多し。 今一度、様々なフレーズで確認してみてください。)

 しかし、5−1項で書いたように、エコノミーではリズムが乱れがちになるということがありますので、事前に”使うぞ”と決めた上で実施することが望ましいことになります。偶発的に使っていると、前後のピッキングパターン、またフレーズ全体のピッキングパターンの乱れにもつながってしまいますので、無意識の使用では、決して安定したリズムは生み出せないものです。


 とにかく、後述するサークルピッキングと共に、エコノミーピッキングとは、あくまでも、オルタネイトピッキングでは追いつけないような速いテンポにおいて使う”奥の手”であるという位置づけをしておくべきです。
 通常は、できるところまではオルタネイトピッキングで対応し、それではダメだという時に、意識してエコノミーに切り替えて使うという流れとするわけです。



 では次回は、エコノミーピッキングの応用例をさらに挙げてみます。

 ⇒次回に続く


(2007年 6月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第3回)>


 エコノミーピッキング(その2) 


1.前回の復習

 まずは、これから先も常に大切となるものですので、前回説明した、エコノミーピッキングそしてスウィープピッキングを効率良く行うための3つのポイントの再確認をしておきたいかと思います。


<ポイント1>

 ブリッジに沿って、手首全体を上下にスライドさせ、ピッキングを行う。

 


<ポイント2>

 ピックは弦と平行に近くしたほうが良い。

 


<ポイント3>

 ピックを通常よりも軽めに持ち、弦に当たることによって傾くような状態を作る。

 


 以上、3つのポイントを守れば、エコノミー/スウィープピッキングを使って、リズムの乱れも少なく、より速くスムーズに弾けるようになるはずです。
 また、エコノミー/スウィープを使うフレーズに突入する際には、通常のピッキングの体勢から、いかにすばやく上記のような体勢に切り替えるか?といったことも重要となるものですので、スローテンポで各場面を確認しながら等、十分に研究してみてください。


2.エコノミーを生かせるフレーズ例

 前回挙げた例のように、エコノミーピッキングは、特殊なフレーズのみでは無く、日常よく使うようなものにも適用可能です。(もちろん、高速で弾きたい場合に、始めて使用すべきものなわけですが)

 下に挙げるEX.3−21も、ペンタトニックスケールにてよく使われるようなパターンを4回連続したものですが、4弦7フレットから3弦5フレットへの流れにおいてダウンピッキングの連続としてのエコノミーを使えば、かなりの速度を得られるようになります。 
 また、この時、フレーズ1周分でピッキングが一回の往復動作となるようにするには、EX.3−22に示すように、最初の3弦7フレットはアップピッキングで弾けば良いわけで、”フレーズの最初の部分はダウンのみでなくアップでも大いに試してみるべき”という重要事項の例ともなっております。(⇒プリング・オフで弾いている部分で、4弦7フレットをダウンピッキングで弾く体勢に入る時間の余裕が十分にあるということにも注目です。)

 このためには、ダウンとアップはどちらでも変わりなく弾けるようにという条件での話にもなりますから、そのようなことの再確認にもなるでしょう。
 また、もちろん、このようなスタイルにおいては、各音符での空ピックといったものは無視することになりますので、その分、リズムキープには十分配慮する必要があります。


 
  EX.3−21   ⇒PowerTab ファイル


 
  EX.3−22   ⇒PowerTab ファイル


 そして、下のEX.3−23は、3連符の連続フレーズですが、”ダウン⇒ダウン⇒アップ”、または”アップ⇒ダウン⇒アップ”の連続というエコノミーのパターンで弾けばテンポアップが図れるものです。
 ただし、これに関しては、無意識にこのパターンで弾いてしまっていることも多いかもしれません。よって、このエコノミーを使う場合も、しっかりと意識して使わないとリズムの乱れにつながる恐れがあるということはもちろん、通常のオルタネイトピッキングでも弾けるようにもしておくことは条件です。
 オルタネイトで弾けば、3連符ですので、毎周のダウン/アップの割り当ては変わっていき、”クロスピッキング”等と呼ばれる状態になりますので、ある意味こちらのほうが上記のエコノミーでのパターンよりも難しいとも言え、やはりオルタネイトでもしっかりと弾けることは必修事項でしょう。

 また、3弦7フレットの音を出した後、次に移行する際には、確実にミュートして音を止めることなども重要なポイントになるものですから、本題のエコノミーピッキングと共に、この機会にチェックすべき事項かと思います。(⇒普段は意外と気づいていない落とし穴だったりします。)


 
  EX.3−23   PowerTab ファイル



3.サークルピッキング

 ロック系ギターでの一般的なピッキングでは、手首や腕全体を単位として動かし、ピックを持つ指の関節はある程度固定状態としますが、あえて指の関節の曲げ伸ばしを使いながら行うピッキングスタイルが、”サークルピッキング”などと呼ばれているものです。

 ピックを持つ指を曲げたり伸ばしたりすることにより、手首の位置の移動無しでも、ある程度の範囲でピッキングする弦を変えることが可能となり、その分、弾く速度を容易にアップできるというものですが、このような動作を行うと、結果的に、ピック先が円を描くように動くことが多いので、”サークルピッキング”と呼ばれるわけです。
 この場合、ダウン/アップそれぞれでのピッキング位置の相違によって、結果的に自然と円を描くようになるものですが、人によっては、かなり故意に円を描くようにする場合もあるようで、どの程度までをサークルピッキングと呼ぶか?は、当方もイマイチ判断できないのですが、とりあえずは、このようなスタイル全般をサークルピッキングと称させていただくこととします。(⇒近年では、マーティ・フリードマン氏や島紀史氏など、メタル系のギタリストで、常にこのスタイルを使う人がけっこういらっしゃいます。)


 この”指の曲げ伸ばし”ということの概要については、以下のfig.3−31〜fig.3−33のようになります。
 ピックを持つ親指及び人差し指の関節を伸ばせば、あまり手首を下方に振らなくても、遠い位置の弦に届くようになり、そのまま指の関節を曲げてピックを手前に引き寄せれば、そのままで近い位置の弦をピッキングできることになるものです。(⇒実際には弦3本分の範囲程度が限界となりますが)

 また、注意すべきこととして、この”指の曲げ伸ばし”を有効に使うためには、通常は指の関節の曲げ具合を中間程度にしてピックを持つようにし、曲げ伸ばしに対して余裕を持たせておけば良いということもあります。
 よって、通常、親指を大きく逆に反らしたフォームでピッキングしているような人は、それ以上伸ばすことが出来なくなってしまうといったことがありますから、あらためて自分のピッキング時のフォームを確認し、十分に検討しておくことも大切です。


 fig.3−31 通常のフォーム 



 fig.3−32 指を伸ばした状態 



 fig.3−33 指を曲げて手前にひいた状態 



4.サークルピッキングを使うべき場合とは?

 サークルピッキングは、いつでも有効というわけではなく、やはり使いどころがあります。
 また、前回書いたエコノミーピッキングでの注意と同様に、リズムが乱れやすいという欠点もかかえておりますから、なおさらどのようなフレーズで有効か?等を知っておく必要があるわけです。

 とりあえず、エコノミーピッキングを使うフレーズで、さらにサークルピッキングを使うと、より速度アップが図れるようなフレーズとは、基本的には次のようなものになります。

 ☆ フレーズ内において、1本の弦上で2つ以上の音を連続して弾く部分が存在し、かつ2本、または3本までの弦にまたがっているようなパターンの場合

 基本的には、このようなパターンで、特に何度も繰り返すような場合には有効となります。
 ちなみに、”1本の弦上で2つ以上の音を連続して弾く部分が存在し・・”ということが意味するところは、例えば、各弦に1音ずつの配置であれば通常のスウィープピッキングで弾けば良いことになる、といったことです。


 上記のようなフレーズ例を2つほど挙げると、以下のようになります。

 EX.3−41は、リッチー・ブラックモア氏やイングヴェイ・マルムスティーン氏あたりでおなじみの3連符の連続フレーズですが、典型的なエコノミー+サークルが生かせるパターンです。
 2弦7フレット⇒1弦5フレットと、ダウンの連続のエコノミーを使うわけですが、この時に親指の関節を少々伸ばすようにし、次に、1弦9フレットをアップで弾く前後に渡って、親指と人差し指の関節を曲げてピックを手前にひき戻すようにすれば、手首全体の振りの動作をほとんど使わずに、フレーズを一周することが可能となります。(”ダウン⇒アップ⇒アップ”というエコノミーのパターンでもOKではあります。)

 ただし、当時のリッチー氏は、あえてクロスピッキングのオルタネイトで高速で弾こうとして失敗していたりしますが、リズムの狂いさえなければ、今日ではエコノミーを使ってだいじょうぶです。(とは言え、オルタネイトでできるだけ速く弾けたほうが良いのは確かですが)


 
  EX.3−41   ⇒PowerTab ファイル


 そして、EX.3−42は、Aナチュラルマイナースケールの一部分を往復するようなフレーズで、かつ3本の弦に渡ってピッキングする場合です。(とりあえず、2周の連続としてあります。また、人差し指から小指までの4本の指を均等にフルに使用してフィンガリングを行うものとします。)

 EX.3−43のように、このフレーズ自体は2本の弦を使って弾くことも可能なのですが、これですと、オルタネイトピッキングを使ったほうが規則正しいパターンで弾けることになり、エコノミーは使いにくい(必要ない)ことになってしまいます。 しかし、EX.3−42のように3本の弦に渡って分散するようにすれば、エコノミーピッキング、さらにはサークルピッキングも使って比較的楽に速度を上げることが可能となるものです。(しばらく練習しての慣れは必要ですが)
 図で示したダウン/アップのパターンで弾けば、ピックの振りの動作幅は、ほとんど1弦から3弦の間の範囲に入ることになるはずです。


 
  EX.3−42    ⇒PowerTab ファイル


 
  EX.3−43   ⇒PowerTab ファイル


 その他、サークルピッキングの類は、一般のフレーズでも弦移動を行う際等には利用可能で、より簡単に速度を上げることに役立ちますが、やはり、リズムの乱れが発生する危険性がありますから、十分に注意ということになります。(⇒スローテンポでの練習が必修です。)



 ということで、スウィープピッキングのフレーズへの準備がある程度できてきました。

 しかし、次回もスウィープへの準備の続きとして、もう1項目、スウィープのフレーズに現れる可能性がたいへん高い”異弦同フレットのジョイント”の話、及び、ついでにエコノミーの応用フレーズのことあたりを書きたいかと思います。(これで、本当に準備完了)


⇒以下、次回に続く


(2007年 7月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第4回)>


 エコノミーピッキング(その3) 


(補足事項)

 まずは、5月分でのEX.2−1、及び6月分でのEX.3−21〜3−23に関する補足事項を、念のために書いておきます。

 要点は、これらのフィンガリング(運指)において、各フレットへどの指を配置するか?ということなのですが、3弦5フレットは当然人差し指で良いとして、他のフレーズへの応用性を考えるならば、”3弦と4弦の7フレットは共に薬指で押弦する”、ということを、とりあえずはお薦めとしておきます。

 実はイングヴェイ氏等は、この手のパターンの場合は、3弦7フレットを薬指、4弦7フレットを中指でそれぞれ押弦していたりします。
 したがって、正確なリズムで良い音さえ出せれば、どのような指の割り当てでも構わないとは言えるのですが、例えば下のEX.4−0ようなパターンへの応用性を考えるならば、”同じフレット位置は全ての弦を同じ指で対応させる”ということを基本とし、これに従っての指使いを常に心がけておいたほうが効率が良いものと思うわけです。

 
  EX.4−0   ⇒PowerTab ファイル


 ということで、このような細かい部分にも常にこだわっておけば、将来何かと役に立つことになるはずです。


 それでは、今回の本題に入ります。


1.異弦同フレットのジョイント

 前回説明しましたサークルピッキングは、ピッキング側の少々特殊なテクニックでしたが、同様に、エコノミーやスウィープピッキングと共に使われる特筆すべきフィンガリング側のパターンの代表に”異弦同フレットのジョイント”と呼ばれるものがあります。

 異弦同フレットとは、文字通り、”弦は異なるけれどもフレット位置は同じ部分”のことを指すわけですが、この同じフレットで異なる弦を連続して弾く場合を”異弦同フレットのジョイント”と呼びまして、これをスムーズに弾くにはなかなかにむずかしいことになり、最もイヤなパターンの1つでしょう。
 もちろん、これは、コードストローク等で次々に弦を弾きながら和音を出すのではなく、各弦の音を区切りながら連続して弾くということでありますので、どのようにミュートして音を止めるか?等、大いに悩まされることになるものであります。

 しかし、この異弦同フレットのジョイントは、スウィープのフレーズにはイヤというほど出てくるものでありまして、避けては通れないものとなってしまっておりますから、準備段階として十分に研究しておくことが必要です。
 また、このパターンにおいても、今回の最初の補足事項で挙げたように、”同じフレットは同じ指で担当させたほうが応用が効く”ということがありますから、異弦同フレットのジョイントは極力1本の指で行ったほうが良いものとなるのは言うまでもありません。


 まずは、下のEX.4−11を弾いてみてください。5フレットにおける4弦と3弦を連続して弾くものですが、それぞれの音を区切りながら、和音にはならないように弾くということが条件です。(ピッキングの方法については、とりあえずはオルタネイトでも良いです。)


 
  EX.4−11   ⇒PowerTab ファイル


 もちろん、ブリッジミュート(ハーフミュート)状態で弾くのは禁止、また上述したように、とりあえずは2本の指を使って弾くのも禁止ですが、それぞれの音は弾き終わったら何らかの手段で確実にミュートして音を止め、さらにもう一方の音を出している間も、そのミュートの体勢を維持することが必要となります。

 よって、まずは、人差し指1本のみを使って押弦してみていただければ良いですが、4弦を弾く際には、指先近くで4弦を押弦し、指の腹部分で3弦をミュートすることになり、そして3弦を弾く際には、指の腹近くで3弦を押弦し、指先の部分で4弦をミュートするということにすれば、効率良くピッキング速度を上げられることになるものです。
 すなわち、最初から3弦と4弦を同時に覆うように指を配置し、必要に応じて押弦とミュートを交互に切り替えながら弾いていくことになります。(fig.4−11、fig.4−12参照 ⇒人差し指以外の指は、押弦せずに各担当フレット位置上で浮かし、スタンバイさせている状態です。)

 ただし、3弦〜4弦間で人差し指の多少の移動は可ではありますので、”必要最小限の移動として、移動時のムダな動作を省く”ということでとらえていただければ良いでしょう。


 
  fig.4−11 4弦押弦時の状態 


 
  fig.4−12 3弦押弦時の状態 


 押弦とミュートの切り替えは、指先の部分の指板に対する角度を微妙に変化させながら行うことになるかと思いますが、この時に重要なことは、この角度の変化を手のひら全体で行うのではなく、あくまでも押弦している指の関節の動作を中心として行うということです。

 これは実際にやってみるとわかりますが、手のひら(手首)全体を動かして行うと、この動きにつれて、押弦している指以外の指の指板に対する位置/距離も変わってしまうのではないかと思います。 しかし、この状態では、これに続く他の指でのフィンガリング等が間に合わなくなってしまう可能性がありますから、極力手のひら(手首)位置は動かさずに、押弦している指のみの動作で行うことが好ましいものです。。
 このことは、トリルの連続時等でも同様なのですが、一般の場合も含め、かなりの重要事項です。

 ということで、人差し指で出来たならば、中指や薬指での押弦でも行ってみてください。



2.さらなるジョイントも試す

 EX.4−21は、1弦〜3弦の3本の弦に渡る異弦同フレットのジョイントのパターン、そしてEX.4−22は1弦〜4弦の4本分に増やしたパターンです。これもやはり1本の指で全て押弦し、かつ押弦する指の関節の動きを中心として弾いてみてください。

 
  EX.4−21   ⇒PowerTab ファイル


 
  EX.4−22   ⇒PowerTab ファイル


 一般のスウィープのフレーズでは、3本程度までとなりますが、大は小を兼ねるで、4本さらには5本くらいもやっておいて損はないです。3本が楽に思え、余裕を持ってできるようになるはずです。
 (ただし、4本、5本といった場合は、必要に応じて押弦している指の位置をずらしていくことも可です。)


3.エコノミーの一歩進んだ応用例

 最後に、エコノミーピッキングを応用できる例として、有名どころのものを2つほど挙げておきます。

 まず、EX.4−31は、今や古典ともいえるディープパープルのBURNのギターソロ後半のアルペジオ部分ですが、これに対してエコノミーピッキングが利用可能です。(テンポは190程度)

 アルペジオとは言え、これは一つ一つの音を区切りながら弾く分散和音形式、かつツインギターでハモるものになっております。
 さらに3本の弦に渡るパターンになっておりますから、スウィープピッキングでも弾けるわけですが、それほど速いテンポでは無いですし、例によってリッチー氏はオルタネイトで弾いているということもあり、リズムの安定のためにも、2回のダウンピッキングの連続によるエコノミーどまりにしておいて良いかと思うものです。(もちろん、オルタネイトでも弾けるようにはしてください。)

 ただし、ダウンの連続とは言っても、2弦をとばして3弦から1弦に向かうスキッピングでのエコノミーピッキングとなるものですので、これはこれで応用性を持つ練習となるでしょう。



 EX.4−31   ⇒PowerTab ファイル

 また、譜面を見てもわかるように、いくつかの部分で、上述した異弦同フレットのジョイントが使える部分もあります。(⇒この部分は2本の指を使っても良いとは思いますが)



 そして次は、少々本筋と外れてしまうのですが、以下のEX.4−32に示すのが、これまた古典となりつつあるであろう、ナイトレンジャーの”Dont' Tell Me You Love Me"におけるジェフ・ワトソン氏のソロの前半の部分です。(テンポは180程度)

 これが史上初めてロック/ポップス系の曲において世間に現れた、エコノミーを使った超絶系ソロフレーズであるかと思いますが、当時これを聴いたほとんどの人は、その音の感じからして、ライトハンド(タッピング)奏法であると思っていたわけです。しかし、故成毛滋(Dr.シーゲル)氏の指摘により、決してタッピングでもハンマリング/プリングでもなく、エコノミーを利用したフルピッキングで弾かれていることが明らかになったという伝説があります。(これホント)
 そして、ナイトレンジャーの初来日にて、当のジェフ・ワトソン氏はさらなる大技である8フィンガー奏法までも伴っての大公開。 確かにフルピッキングであったことが実証され、巷の人々はひっくり返って驚いた1983年であったわけです。(⇒この年は、アルカトラスでイングヴェイ氏がメジャーデビューした年でもあります。)



 ⇒PowerTab ファイル


 ⇒PowerTab ファイル


 ⇒PowerTab ファイル


 ⇒PowerTab ファイル

 EX.4−32 




 この譜中でのピッキングのダウン/アップの指示は、ジェフ・ワトソン氏が実際にやっているものに従っておりますが、当方も様々なパターンを試してみた結果、これが最も効率が良いと思われるパターンであるかと思います。
 ジェフ氏は、逆アングルでピックを弦に当てるスタイルですが、これに関しても、ピックを持つ力を適度に緩め、ピックが弦に当たることによって傾くことを利用すれば、スムーズな動作が出来て、かなりの高速まで適応できるものです。(サークルピッキングは使用できません。)

 このフレーズにおいては、全てがエコノミーで弾けるわけではなく、同速度でのオルタネイトが要求されるところもあり、さらにはエコノミーでは無いアップピッキングの連続で弾くべき部分もあり、また、一拍半単位のフレーズ的になっている所もありということで、なおさらスムーズに弾くのが困難になるのですが、色々と研究していただければと思います。

 はっきり言って、ある意味、スウィープのフレーズよりもマスターするには時間がかかるとも言えるのですが、ジェフ・ワトソン氏はこれよりも難しいフレーズも考案していたりしますので、例の8フィンガー奏法等も含め、一度はトライしてみるべきものです。(8フィンガー奏法については、そのうち記事にしましょう。)
 フィンガリングの概要をまずは覚えた後、メトロノームを使ってスローテンポから徐々にテンポアップしていけば、そこそこの速度まではいけるかと思いますよ。


4.最後にもう一度ピッキングの要点確認

 しつこいようですが、今回の最後に、例のエコノミーピッキングでの3つのポイントについて、少々追加事項等も加えながら再々確認しておきたいかと思います。

 まず、毎度おなじみとなりましたが、エコノミーで行うべき重要ポイントは以下の3項目です。

@ 手首全体を上下させるようにしてピッキング動作を行う

A ピックは弦に平行に近い状態にする

B ピックは軽くめに持つようにし、ピックが弦に当たることによって傾くようにする



 これまでは、通常と少々異なるこれらの動作にまずは慣れていただくため、あえて書いていなかったのですが、実際にエコノミーやスウィープを使うフレーズ中では、全て上記@〜Bのような動作で行うというわけでは無く、”必要に応じて、必要な程度で行う”ということになります。

 すなわち、@〜Bの事項を使うべき場所が、フレーズ中に点在するといったこともあり得るということで、通常の動作から必要に応じて直ちに切り替えたり、もとに戻したりできるようにすることがやはり重要となります。
 例えば、Aの動作においては、常にピックを弦に対して完全に平行状態に持っていくわけではなく、”通常よりは幾分平行ぎみ”といった状態でエコノミー/スウィープの動作を行いやすくするといったことも存在しますし、Bの動作に関しても、ダウンまたはアップどちらかの連続が集中するような場合には、指の持ちかたで故意にピックを傾けるようにしたほうが弾きやすいといったこともあるものです。

 要は、フレーズの内容に応じて、臨機応変に@〜Bを使い分け、さらにどの程度の度合いでこれらを使うか?も適度にコントロールすることも必要ということですが、このあたりについては、様々なフレーズを練習していく上で徐々にコツをつかんでいっていただければ良いかと思います。


 ということで、ようやく本題であるスウィープピッキングを使ったフレーズを弾くための準備ができたかと思います。
 ただし、今回は確認していないような、ハンマリング・オンやプリング・オフ、さらにはスライドやワイドストレッチ等の基本的なテクニック的要素は既にokとの条件の下での話しになりますので、これらに関しては各自におまかせします。


 ⇒以下次回に続く


(2007年 8月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第5回)>

 スウィープでの基本事項の確認と、最小基本パターンの練習 



 今回から、いよいよ本題の領域に入るわけですが、これまでの一般の教則本や雑誌での記事と同じようなことを書いてもつまらないので、少々独自のアプローチにて進めていきたいかと思います。

 まずは、前回で準備は終わったなどと書いたものの、さらに、スウィープピッキングを使用するフレーズならではの準備的な話をさせていただきます。


5−1.ネックのグリップについて

 スウィープ奏法におけるネックのグリップ(握り方)については、”クラシックスタイルとシェイクハンドとどちらが良いの?”と悩んでいる人がけっこういらっしゃると思いますが、逆に、”クラシックスタイルに決まってるんでしょ”と、あまり悩んではいない人も少なからずいらっしゃるようです。
 基本的には、私などの世代で、それまでの一般的なロック系ギターでのシェイクハンドグリップに慣れているかたは、”シェイクハンドではスウィープはできないの?”と悩み、最初からスウィープが存在していた若い世代では”クラシックスタイルのグリップで当たり前”、みたいな感じでしょうか。


 この問題に関する結論としては、”シェイクハンドグリップで弾けるスウィープのフレーズもあるが、クラシックスタイルのグリップでないと弾けないフレーズもやはり存在する”ということになるかと思います。

 ”シェイクハンドでも弾けるものがある”ということに関しては、”一般的なフィンガリング交じりのフレーズ、またはその前後にシェイクハンドのほうが楽に弾けるような部分があるような時には、わざわざグリップを変えずとも、シェイクハンドで弾き通したほうが効率が良い場合がある”といったことによるものです。(⇒シェイクハンドグリップでも人差し指から小指までを均等に使い、各指は適度に寝かして指の腹部分でミュートが出来るといったことが条件とはなります。)

 そして、”クラシックスタイルでないと弾けない”ということについては、”かなりのストレッチが必要になる部分を含んでいる時や、開放弦ノイズ等の防止(ミュート)を行うにはシェイクハンドグリップでは難しく、クラシックグリップにて1弦から6弦までの人差し指のセーハを利用したほうが確実なミュートが行えるような場合がある”といったものです。


 とりあえず、このような例を挙げておきましょう。(弾き方等の詳細については、後述するものとします。)

 以下に示すEX.5−1−1〜EX.5−1−3は、いずれもAmのコードでのスウィープピッキングが使えるフレーズです。
 この中で、EX.5−1−1のようなフローティングコードと呼ばれる1〜3弦で行われるフレーズや、このようなものを含んだEX.5−1−2のような1〜5弦でのものは、シェイクハンドスタイルのグリップでも十分に弾けるものです。

 これに対し、EX.5−1−3のような1〜6弦に渡るパターンで人差し指のセーハでの体勢のミュートを利用しないと十分なノイズ防止が出来ないものは、やはりクラシックスタイルのグリップで行うべきものとなります。


  
 
  EX.5−1−1   ⇒PowerTab ファイル



  

  EX.5−1−2   ⇒PowerTab ファイル



 

  EX.5−1−3   ⇒PowerTab ファイル



 ということで、とりあえずは、両スタイルのグリップを状況に応じて使い分けられるようにしておいたほうが良いということになるでしょうか。(⇒そのフレーズの前後で、あるいはフレーズ中で、チョーキングを行う等の必要性がなければ、クラシックスタイルのグリップのままで良いということにもなりますが)



5−2.ノイズ対策及びミュートの方法について

 上記のことからも、スウィープのフレーズにおいては、ノイズ音の防止対策が実は最も難しいことになります。

 ただし、これに関しては、”いきなりミュートで対応”ということでは無く、押弦していない部分の開放弦ノイズを極力出さないようにすることや、弾き終わった弦が鳴ってしまわないようにするには、何と言っても、まずは正確でムダのないフィンガリングを行うことが第一となるものです。
 目標の弦のみを的確に押弦すること、そして、他の弦に指が触れないようにして指を移動させるといったことは、本来、スウィープのフレーズでなくとも基本中の基本ですから、日頃からいかに正確な運指を心がけているか?ということが物を言うことになるでしょう。


 そして、この条件のもとに、右手(ピッキング側の手)/左手(フィンガリング側の手)各部でのミュートを必要に応じて行っていくといったことになります。
 左手の”指先”や”指の腹”の部分、右手の”手の平の各部”や”中指/薬指/小指”等も参加させることは可能ですが、上述したように、左手の人差し指のセーハなどは、かなり有効なミュートになる場合も多いもので、この場合はクラシックスタイルのグリップで行わないと難しいことになるものです。

 これらのミュートに使うことが可能な、指や手の各部分をまとめておくと、以下のようになります。(⇒基本的には、通常の演奏にてミュートに使う部分と同様です。)
 ただし、右手(ピッキング側)に関しては、ギタリストによっては、右手でのミュートをほとんど使っていないケースもありますので、”もし右手でもミュートを行うならば”といった程度で考えていただければ良いでしょう。
 一応、右手の体勢の一例と、ミュートに使う部分を画像と共に図示しておきます。(⇒画像では、中指〜小指を開いたフォームとしてありますが、これらを握るフォームでも構いません。)


<左手(フィンガリング側)>

 a1.押弦に参加していない指の各部

 a2.押弦している指の腹部分(人差し指のセーハでのミュート等も含む)

 a3.押弦している指の先部分


<右手(ピッキング側)>

 b1.小指側の手の平の側部(通常、ブリッジミュートに使う部分)

 b2.親指の側部、及び親指の付け根部分( 6弦⇒1弦への方向にピッキングする際に、4弦〜6弦あたりの開放弦ミュートに使える )

 b3.中指/薬指/小指( 1弦⇒6弦への方向にピッキングする際に、1〜3弦等の開放弦ミュートに有効 )

 



5−3.フレーズにおける基本要素パターン

 スウィープ奏法についての一般的な解説では、1つのフレーズとして曲中でよく現れるパターンを列挙し、多少音楽理論的な話も交えつつ、という流れが多いものですが、ここではさらにフレーズを最小単位の要素パターンにまで分解し、それから練習していくという方法をとってみます。

 これは、最小単位にて十分に練習し、それをつなぎ合わせてフレーズを構築するようにすれば、スウィープ奏法だけでなく、一般のフレーズでの運指(フィンガリング)にも応用でき、かつ音楽理論の理解や読譜の基礎練習にも役立つ可能性が出てくることになるからです。

 まずは、念のための基本事項確認から。


5−3−0.スウィープのフレーズに使われる音

 スウィープピッキングを使用するフレーズの基本は、分散和音(ブロークンコード)というものになります。
 要するに、コード(和音)の構成音をそれぞれに分解し、1音ずつ区切って出すもので、構成音それぞれを順番に弾いて最終的に和音として出すような一般的なコードアルペジオとは区別されるものです。


 この場合のコードについては、まずは最もシンプルな和音である”トライアド(3和音)”が出発点となりますが、その構成音は、1度(ルート)、3度、5度という3種の音が並んでいるものとなります。

 コードがメジャー(メジャートライアド)の場合は、”完全1度(1st)、長3度(3rd)、完全5度(5th)”となり、マイナー(マイナートライアド)の場合は、”完全1度(1st)、短3度(♭3rd)、完全5度(5th)”ということになりますが、指板上でのこれらの音の位置は、任意のルート音(完全1度の音)に対して一定位置となりますから、覚えておくべきものです。
 
 このあたりの話は、既に御理解されているかとも思いますが、念のため以下に一例として、6弦上のルート音を基準とした場合の指板上でのルート音位置に対する長3度/短3度、及び完全5度の位置関係を示しておきます。(あくまでも、レギュラーチューニングの場合となりますが)


   



 上図からもわかるように、あるコードに対して”1度(ルート)/3度/5度とトライアドのコードの構成音のみでフレーズを作っていくと、大部分が各弦に1つずつの音が載っている状態となりますので、これを高速で弾こうとすれば、エコノミーピッキングの連続、すなわちスウィープピッキングが適していることになるというものです。

 逆に、スケール上の音をフルに使ったフレーズならば、2度/4度/6度といった音が加わることにより、各弦に2つまたは3つの音が配置されますので、この場合は、単なる”弦移動時にエコノミーピッキングを使うフレーズ”にしかなり得ないわけで、通常はスウィープのフレーズとは呼ばれないことになります。(ただし、ルート音と3度の音を1本の弦上に配置する等、部分的に同一弦上に2つの音が載るようなスウィープのフレーズは存在します。(⇒このような部分は、オルタネイトピッキング、あるいはハンマリング・オンやプリング・オフで連続して音を出すことになります。))


 さて、上記のような指板上においては、5本あるいは6本の弦に渡るフレーズを構成すれば、”ルート⇒3度⇒5度”というパターンを2回、すなわち2オクターブに渡るパターンを作ることができ、実際にそのようなものは曲中でよく使われるものです。

 例として、上述したEX.5−1−2のフレーズで使われている音の指板上での位置とその度数を示した図を下に挙げますので見てみてください。

   



 このようなことになりますが、上記のような実際のフレーズに入る前に、”ルート⇒3度⇒5度”といったもののように、1オクターブ内での範囲での最小単位でのパターンのバリエーションをまずは個別に練習しておき、それらを組み合わせてフレーズを作ると考えると、非常に応用がきくようになるということです。(→上記EX.5−1−2 も、2種の”ルート⇒3度⇒5度”のパターンが合体したものとなっています。)

 ということで、今回は、この”1度(ルート)⇒3度⇒5度”の順で現れる最小パターンのバリエーションを挙げてみます。(⇒これは、一般的なコードフォームの作り方にも通じる、応用性のあるものとなります。)


5−3−1.ネック側に向かうパターン

 上記のような”1度(ルート)⇒3度⇒5度”音のパターンを考えると、指板上において、”ルート音の位置からネック方向に向かって音が並んでいくもの”、”ルート音の位置からブリッジ方向に向かって音が並んでいくもの”、そして”いったんネック方向にいった後にブリッジ方向へ折り返すもの”の3種に大別できることになります。


 まずは、以下のFig.5-3-1〜Fig5-3-8に、ネック方向に向かって”ルート⇒3度⇒5度”と音が並ぶパターンを挙げます。
 3弦〜6弦上それぞれにルート音があるパターンを挙げておりますが、もちろん、それぞれの3つの音を和音として同時に出せば、メジャー(トライアド)及びマイナー(トライアド)のコードとなるものです。)


 弾きやすさを考えて、まずは、マイナートライアドを先に挙げておりますが、例えば、Fig.5-3-1にて小指⇒中指⇒人差し指の順でノイズを出さずに、各音を区切りながらきれいに弾けるでしょうか? (3つの音ということで、3連符としてメトロノームに合わせて、色々なテンポにて繰り返し弾いていただく等すれば良いかと思います。)

 もちろん、ピッキングは、ダウンあるいはアップの連続でのエコノミーピッキングで続けて弾くもの、すなわちスウィープピッキングとして弾くことになりますが、これがokならば、人差し指⇒中指⇒小指の順で逆方向に弾くことも行ってみていただきたいと思います。

 例としてFig.5-3-1を弾いた場合の譜面EX.5−3−1を挙げておきます。


 
  EX.5−3−1   ⇒PowerTab ファイル



    


    


    


    


 これらにおいては、ルート音の音名からもわかるように、とりあえずは、それぞれ次のようなコードネームのものにしてあります。(⇒これらの形をそのままでずらして、ルート音を変えれば、他の様々なメジャー/マイナーコードにすることができます。)

・Fig.5-3-1 ⇒ Em  ・Fig.5-3-2 ⇒ E
・Fig.5-3-3 ⇒ Am  ・Fig.5-3-4 ⇒ A
・Fig.5-3-5 ⇒ Bm  ・Fig.5-3-6 ⇒ B
・Fig.5-3-7 ⇒ Em  ・Fig.5-3-8 ⇒ Em


  2弦と3弦間の音程は、他の弦間の音程差とは異なりますので、パターンの形状も変わり、注意となりますが、まずは、これらのパターンを指板上での図形として覚えておけば、様々なパターンを覚える際にも楽にアプローチでき、また、自分でスウィープのフレーズを作る際にも、その時のコードがわかりさえすれば、アドリブ的に瞬時に弾き出すことも可能となってくるはずです。



5−3−2.ブリッジ側に向かうパターン

 次に、ルート音の位置からブリッジ側に向かうパターンを考えますが、これに関しては、実際のスウィープのフレーズでの実用上のことを考慮し、1オクターブ上のルート音まで弾くようにしてあります。(8th=1st)

 下のFig.5-3-9は3度の音抜きのパワーコード形で、この場合は1弦に1音ずつ配置できますが、Fig.5-3-10及びFig.5-3-11(メジャー/マイナートライアド)は、1弦に2音の配置となる部分が出てくることになります。(→この部分については、ハンマリング・オンまたはプリング・オフを使っても良いことになるものです。)

 とりあえず、6弦上のルート音からスタートするものだけを載せておきますが、5−3−1項でのものに準じて、3〜5弦上のルート音からのものも確認してみてください。

 また、”5度⇒ルート”の部分で、異弦同フレットのフィンガリングが出てくることになりますが、できるだけ1本の指で両者を押弦するようにしてみてください。


  


  


  


 これらのパターンのコード名は、次のようになります。

・Fig.5-3-9  ⇒ AまたはAm(→3度の音を抜いているため)
・Fig.5-3-10 ⇒ Am
・Fig.5-3-11 ⇒ A


5−3−3.ネック側からブリッジ側へ折り返すパターン

 下のFig.5-3-11とFig.5-3-12は、3度の音でいったんネック側に向かった後、次の5度の音でブリッジ側に折り返すパターンとなっています。
 これも、とりあえずは1オクターブ上のルートまでとしておりますが、スウィープのフレーズでは、けっこう現れてくるパターンです。

 この中で、ルート⇒3度⇒5度と弾く部分では、オルタネイトピッキングでもokということもありますので、色々なピッキングの組み合わせで試してみてください。

 また、5−3−2項と同じく、6弦上のルート音からスタートするものだけにしておりますので、他の弦上のルート音からのものも確認してみてください。


  


  



5−4.基本パターン練習上の注意

 上記のようなパターンを”ルート⇒3度⇒5度”の順で、さらには”5度⇒3度⇒ルート”の順でスウィープで弾く練習を行う際には、まずは、以下のようなポイントを押さえながら実施していただければ良いかと思います。(⇒基本的には、一般のフレーズ練習と同じですが)


@それぞれのパターンにて、ある程度フィンガリング/ピッキングを覚えたならば、直ちにメトロノームを使用し、まずはスローテンポから徐々にテンポアップし、確実に弾けるようにしていく。

A可能な限り、人差し指から小指までを均等に使う。

B指板上で使用する音の幅(⇒3フレットor4フレット)に合わせて、常に指を開いたままにした状態でフィンガリングし、なるべくムダな指の動作を避けるようにする。

C手首全体を素早く移動させて、弾くべき各パターンの位置に瞬時に持って行き、体勢を形作るようにする。

D各パターン位置では、手首の位置は動かさず、指の最小限の動作だけで弾くようにする。



5−5.一歩進んだ練習方法

 ここで、さらに一歩進めた練習方法を書いておきます。(ただし、上記のFig.5-3-11とFig.5-3-12は除きます。)

 上記5−4項のA〜Dで書いたように、フィンガリングの際にはムダな動きを極力避けるようにすることが重要事項となります。
 このようにすれば、”より速く弾きやすい”ということだけでは無く、余計な指の動きによってのノイズ音の発生を抑えることにも効果があるわけですが、これをさらに徹底するために、弦から指を離さないようにして弾けるかどうか?ということを試してみます。

 すなわち、弾き終わった弦はフレットから離して音(振動)を止めるけれども、押弦していた指は弦から離さず、完全なミュート体勢をずっと維持することができるかどうか?ということです。


 例えば、上述したFig.5-3-1のEmのトライアドのパターンにおいては、6弦12フレットを小指、5弦10フレットを中指、4弦9フレットを人差し指で担当するわけですが、この指配置のままで常に指は弦に触れてミュート状態のままスタンバイしておき、その部分を弾く時にだけ弦がフレットに接触するように押弦し、弾き終わったら再びミュート状態に戻すという流れとなります。


  
  5弦のみを押弦し、6弦と4弦は指先で触れてミュートしている状態 



 既にこのような方法で練習されている人もいらっしゃるかもしれませんが、初めてのかたは、”こんなことできるの?”なんて思うかもしれません。
 しかし、実際にやってみると、ある程度のフィンガリングの基本さえ出来ていれば、意外にも短期間でできるようになるものですので、ぜひトライしていただければと思います。
 理屈的には、かなり確実なミュートの体勢を作れるはずです。(⇒音を歪ませている場合は、ここまで実施しても、多少のハーモニクス音等は出てしまう恐れもありますが)



 ということで、今回は、主として低音弦から始まる基本パターンを挙げましたが、各パターンは1つのプロックのようにみなし、手首の移動によって、各パターンでのフィンガリングの体勢を作りながら、その位置にすばやく移動、その上でムダな動作無しで繰り返し弾けるようにしておけば、実際のスウィープのフレーズの各箇所において、ミュートということも含めて、非常に楽に対応できるようになるかと思います。


 次回は、今回のパターンと共に組み合わせて1〜3弦あたりで使われる、フローティングコードと呼ばれるパターン等を確認していきたいかと思います。


 ⇒以下、次回に続く


(2007年 9月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第6回)>

 スウィープでのフレーズにおける最小基本パターンの練習の続き 



 8月分でも書いたように、当方のスウィープピッキングに関する記事においては、フレーズを弾くための練習方法の流れとして、各フレーズを構成する共通要素でもある、コードの構成音から成る最小単位のパターンから攻略していこうという方針をとっております。

 前回では、その最小的な要素パターンとして、1度/3度/5度の3種の音から成るトライアドのコードにおいて、”1度(ルート)⇒3度⇒5度”といった順となるものを挙げましたが、今回はさらに、それらと組み合わされて使われたり、または、単独で使われることもある要素パターンを見て行こうかと思います。


6−1.フローティングコード

 近年でも”フローティングコード”という呼び方をされるかどうかがわからないのですが、80年代のスウィープ全盛期においてこのように呼ばれていたものは、主として1〜3弦において展開されるパターンで、”小スウィープ”等といった名称でもあったものです。

 要は、4〜6弦等の低音側の弦を含まず、1〜3弦の範囲内のみで終始し、それ自体にベース音的な土台を持たない状態で展開されるものであり、その中で最も低い音がルート音では無く、3度や5度になっていたりもするパターンです。
 しかし、これのみで立派なフレーズとして成立するものであり、実際のソロにおける中でも多用される”お手軽なスウィープのフレーズ”となるものです。(と言うか、この種のもののほうが、スウィープのフレーズとして一般的には先に現れてきたものということがあるわけですが)


 何はともあれ、以下に、3種類ほど、代表的なパターンの指板上での形を示します。(Fig6−1−4は、Fig6−1−1のオクターブ下の形です。)
 これにおいて同一弦上の音にはプリング・オフやハンマリング・オンを交えつつ、下降、上昇、ならびに往復などで弾けば、直ちに小スウィープのフレーズが出来上がります。

  


  


  


  



 上記のFig6−1−1〜Fig6−1−4は全てAmのコードの構成音になっているわけですが、最も低い音は、3度や5度の音になっています。
 この部分のみでは、分数コードのようになってしまいますが、バンド演奏ではベーシストが弾くなりして、実際には常にルート音であるA音を中心としたものが存在しますので、これをペダルのようにして、この上に載るものが、あちらこちらへと移動し、まさにフローティング状態、ということです。

 すなわち、曲中でAmのコードが続いている中では、これらのパターンを次々と連続して弾いていくことが可能となるわけです。
 ちなみに、プリング・オフを交えた下降パターンにて、上記の4種を1拍ずつで順番に連続して弾くと、イングヴェイ氏の”Disciples of Hell”(→ナツメロですね)のソロの途中部分になります。



6−2.メジャートライアドでのパターン

 6−1項と同様にして、メジャートライアドでのフローティングコードを作ることができます。
 上の4つのマイナートライアドのパターンに準じたAメジャーコードにおけるものを以下のFig6−2−1〜Fig6−2−4に示します。(⇒マイナーでの3度の音を半音(1フレット)ずつ上げれば良いということになります。)


  


  


  


  



6−3.基本フレーズ例

 ここで、上記のフローティングコードでの最小パターンを使った基本的なフレーズ例をいくつか挙げておきましょう。

 まずは、指板上での各形を指に覚えさせるということ、及び基本練習を兼ねてという感じで、下のFig6−3−1の形を使ったEX.6−3−1、及びFig6−3−2の形を使ったEX.6−3−2のような下降の連続フレーズを色々なテンポでひたすら弾いていただくことは価値があるでしょう。(EX.6−3−1はCメジャーのコード、EX.6−3−2はDmのコードでの分散和音となっています。)

  

 
  EX.6−3−1  ⇒PowerTab ファイル



  

 
  EX.6−3−2   ⇒PowerTab ファイル



 この手のパターンを利用したフレーズはたいへん多いわけですが、例えばEX.6−3−3に、これまたナツメロなANGRAの”CARRY ON”のソロ後半部の最初の部分を挙げておきます。


  EX.6−3−3   ⇒PowerTab ファイル



 上のようなものは、どうしても様式美メタルっぽい感じになってしまいますが、次のEX.6−3−4は、転調を交えたコード進行でのちょいとコンテンポラリーな流れのフレーズです。


  EX.6−3−4  ⇒PowerTab ファイル



 しかし、これでもいかにもスウィープという感じになってしまいますので、これを避けたいといった場合には、フレーズやメロディラインに何気なく入れるといったことを追及しても良いかと思います。
 1つの例としてEX.6−3−5を挙げておきますが、これはテンポが80程度のロッカバラード風の曲(⇒要はスローめの3連のリズムの曲です)のメロディラインに一瞬スウィープのフレーズを入れたものです。(keyはDメジャーです。)
 2小節目の最後の拍の部分に入れてありますが、勢いあまって(?)、4弦16フレットのルート音F♯まで行く形になっちゃってます。

 とりあえずこのような形ならば、上のEX.6−3−4と共に、”イングヴェイみたい・・”なんて言われなくて済むでしょうか???


  EX.6−3−5   ⇒PowerTab ファイル



 以上、このようなことで、今回は主として高音弦で使われるスウィープにて弾かれるパターンを解説いたしました。
 次回は、今回のパターン及び前回のパターンを組み合わせることによって出来上がる、多弦に渡る標準的なフレーズの話に発展させていきたいかと思います。


 ⇒以下、次回に続く


(2007年 10月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第7回)>

 スウィープでの典型パターン紹介 



 いよいよ今回は、最小パターンを組み合わせて構成される、多弦に渡る典型パターンを紹介していきたいかと思います。

 これらについては、これまでに出てきた基本となるパターンを弾けるようになっていれば、それほど苦労しなくてもだいじょうぶなものであるでしょうから、あとは、徐々にテンポアップしていって速く弾けるようにしていくだけとなるはずです。
 もちろん、これに当たっては、一気に速く弾こうとはせず、メトロノームを使ってじっくりと日数をかけてマスターしていっていただきたいのは、言うまでもありませんです。

 各パターンがどのように結合して配置されているかに注意しながらトライしてみてください。


7−1.5弦スタートのメジャー/マイナートライアドの基本パターン

 まずはこのあたりが、練習をする上でも、理屈で理解する上でも、最もトライしやすいものかと思います。

 これについてもフィンガリングを行うやすいであろうマイナー形を先に挙げますが、マイナーとメジャーでの3度の音位置の違いをしっかりととらえていただければ、これまでと同様に、マイナー形からメジャー形へ、あるいはメジャー形からマイナー形へと自由に変形できることになるでしょう。(今後出てくる他のパターンについても共通したことですが)

 また、異弦同フレットのジョイントも無いので、とっつきやすいパターンなのですが、1〜3弦あたりでの開放弦ノイズには要注意でありますので、シェイクハンドスタイルのグリップで押し通すべきか、またはクラシックスタイルのグリップにしてしまったほうが楽なのか、悩むところではありますね。(⇒人差し指の各場面での動作にさえ注意すれば、シェイクハンドでも十分にいけるものではあります。)


  
  EX.7−1−1  ⇒PowerTab ファイル


  
  EX.7−1−2  ⇒PowerTab ファイル



7−2.標準コードフォームによる基本パターン

 このほうがかえって最初に挙げるべきものかもしれませんが、おなじみの人差し指のセーハ(バレー)を使ったF(Fm)型の基本コードフォームに、さらに3度の音を1弦上に加えたパターンを、スウィープを使った分散和音形式で弾くというものです。(3連符のパターンとしてあります。)

 クラシックスタイルのグリップにて、人差し指のセーハの体勢でミュートを行えば、容易にノイズ音を消すことができますから、各指独立したフィンガリングとストレッチあたりさえokならば、割と楽に弾けるようになるのでは。
 もちろん、以前の回でも解説した、異弦同フレットのジョイントをきれいに弾きこなすことをマスターしておくことは条件となります。

 また、異弦同フレットのジョイントということでは、5弦7フレットと4弦7フレットは両者共に薬指を使うと、今後の応用性が高まることになるでしょう。


 メジャーとマイナーのトラアドのフォーム以外にも、セブンスフォーム、メジャーセブンスフォーム、マイナーセブンスフォーム等、有名どころのコードフォームにて、どんどんトライしていただければ良いかと思います。


  
  EX.7−2−1  ⇒PowerTab ファイル



  
  EX.7−2−2  ⇒PowerTab ファイル



7−3. 5弦ルートの標準コードフォームをアレンジしたパターン

 これもおなじみの人差し指のセーハ(バレー)を使ったC(Cm)型の基本コードフォームにおいて、5弦上に3度の音、そして1弦上にルート音をさらに加えたパターンです。

 この追加した音については、ハンマリングオンやプリングオフで弾いていただければ、オルタネイトピッキング等を使わずに通常通りのスウィープで弾けることになりますが、これがゆえにリズムが乱れがちとなる可能性がありますので、注意となります。


 
  EX.7−3−1  ⇒PowerTab ファイル



 
  EX.7−3−2  ⇒PowerTab ファイル



7−4.長距離移動タイプ

 6弦から出発し、”1度(ルート)→3度→5度”というパターンを2回繰り返したものに、さらに3度の音を1つ加えたパターンです。
 これは、イングヴェイ氏がやっていた同じ音のラインによるfig7−4−3のようなフィンガリングパターンのものに対して、トニー・マカパイン氏やポール・ギルバート氏らが提唱したものですが、指の大きなストレッチも少なく、リニア的な動きになることもあり、慣れてしまえば、こちらのほうがより高速に弾くことが可能となるものです。

 指板上で随分と幅のあるものになってしまうので、たいへんむずかしいものに思いがちですが、基本的には、これまでにも出てきた”1度→3度→5度”の2種のパターンが合体したものですから、手首の位置を素早く移動させて2種のパターンを連続して弾くと考えれば、意外と短期間で出来るようになるものです。

 したがって、譜面下のFig.7−4−11、Fig.7−4−21のような指配置としていただければ、効率が良いことになります。何と言っても、瞬時のポジション移動が、スムーズに弾くためのポイントです。



 
  EX.7−4−1  ⇒PowerTab ファイル


 




 
  EX.7−4−2  ⇒PowerTab ファイル


 




 
  EX.7−4−3  ⇒PowerTab ファイル




7−5.結合連続パターンを1つ

 ついでに、上記7−4−1のパターンに7−2−1のパターンをさらに結合させ、連続させたフレーズを挙げておきましょう。


  
   EX.7−5−1  ⇒PowerTab ファイル


  


 これにおいては、7−4−1の戻りのラインから7−2−1に移る際に、下図のような指配置にするとスピードアップが図れます。
 6弦12フレットに薬指を使い、そのまま薬指で弦を移動しつつもスライドするようにし、”6弦12フレット5弦14フレット⇒4弦14フレット”という流れで弾くと意外にも速く弾けることになります。
 もちろん、他のフィンガリングでも良いのですが、”1本の指で弦とフレット位置を共に移動しながら弾く”というのは、実はかなりの応用性を持つものです。(スウィープのフレーズ以外の場合でも有効です。)


  


 このような発想にこそ、ギター(弦楽器)奏法における新境地の開拓の可能性が秘められているかもしれませんから、思い付いたことはどんどん試していけば良いと思います。



 ということで、今回はこのあたりでおしまいとします。
 次回は、練習方法の補足、及びトライアド以外のコード形も含め、さらに色々なパターンを挙げていきたいと思います。


 ⇒以下次回に続く
 


(2007年 11月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第8回)>


8−1. スウィープのフレーズの練習方法における特筆事項 



 これまでにも書いてきたとおり、スウィープピッキングを使うフレーズの練習に関しては、”メトローノームを使ってまずはスローテンポから始める”ということで、地道に練習していくしかないものです。
 ただし、これにおいては、そのフレーズにおいてスウィープピッキング自体以外に使われる基本的テクニックの確認ということも含め、注目すべき練習方法が1つ存在します。

 この方法は、かつてはイングヴェイ氏等もインタビューで語っておりましたから、ご存知のかたも多いかと思うのですが、簡単に言えば、”ピッキングを行わず、フィンガリングのみでしっかりと音を出すことができるかどうかを試す”という、けっこう意表をつくものであります。
 具体的に書けば、”右手(ピッキング側の手)の指で全ての弦に触れて、開放弦が鳴らないようにミュートした状態を作り、その上で、左手(フィンガリング側の手)によるハンマリング・オン及びプリング・オフ、さらにはスライドのみで、フレーズの音を出していく”というものです。


 例えば、下のEX.8−1−1は、前回紹介したEX.7−1−1と同じものですが、開放弦を右手の人差し指や中指あたりでミュートしながら、左手のフィンガリングのみで音を出すことにトライしてみるわけです。


   
  EX.8−1−1  ⇒PowerTab ファイル


  
    右手で開放弦をミュートしながらフィンガリング 


 最初の音は小指単独のハンマリング・オンでも十分音が出るでしょうから(⇒音量があまり出ない場合は、要トレーニングです)、右手にてピッキングをしなくても、全て左手のフィンガリングのみでいけるはずです。
 よって、これをメトロノームに合わせて、正しいリズムで安定して音が出るようになるまで練習しましょう、ということです。


 このような練習方法は、本来ピッキングテクニックであるはずのスウィープピッキングというものに関して、大いに矛盾するように思えるでしょうが、スウィープでのフレーズにおいては、リズムキープが難しいという、そのピッキングの性質上からも、左手のフィンガリングでのリズムキープの、より確実さが求められてくるものです。

 従いまして、まずは、フィンガリングそのものでのリズムキープを練習すべきということが、上記のようなことを行う理由の1つとなるのですが、その他、もともと、より高速なエコノミーピッキングであるスウィープピッキングでは、どうしてもピッキング力が弱くなってしまうことからも、結果的に、可能な限り左手でのフィンガリングでも同時に音量をかせぐようにするものとなってくる、といったことにも起因しているものです。
 極端に言えば、あくまでも左手の動作がメインで、右手のピッキングはこれについてくれば良い、なんてことも言えそうな状況なのです。(⇒やっぱり矛盾して聞こえるものとなってしまいますが)


 もちろん、フレーズのパターンによっては、ハンマリングやプリングだけで音を出すことが出来ないものもありますから、上記の練習方法が実施可能なフレーズは、ある程度限定されるものではあります。
 特に、これまでにも多く出てきた異弦同フレットのパターンを含むと、これはピッキングしないとなかなか音は出ないものですので、とりあえず、このようなものは外すものとしますが、ハンマリングオンのみでも、ある程度の音量を出すことは可能であるかとは思います。
 よって、実際のフィンガリング動作とは多少異なっても、人差し指での異弦同フレットパターン等も含め、ハンマリングを多用して練習してみても良いかと思うところです。



8−2.トライアド以外のコードでのフレーズ等


 これまでは、トライアドのコードでのパターンばかり出してきましたので、ここらで、トライアドより構成音が増えるコードを利用したパターンをいくつか紹介しておきます。

 これらのものは、基本的には構成音が多くなる傾向にあるわけで、どうしても1本の弦において2音以上の音が存在する部分が多くなるということが特徴となってくるでしょうか。


 まず、EX.8−2−1は、長7度(メジャーセブンス)の音が入り、全体としてmaj7thのコードを構成しているフレーズです。

 この手のパターンを最初に聴いたのは、RACER−X のライブ盤にて、ポール・ギルバート氏の相棒のブルース・ブイエ氏がギターソロタイムで弾いていたものでしたか。
 スウィープ多用のギタリストの曲は、マイナーkeyのクラシカルなものが主流であった当時では、このメジャーセブンスを使ったコード進行での流れは、なかなかにファンタジックで新鮮味を感じた記憶があります。(ブルース氏は、どうしても教科書的フレーズ/音になっちゃうポール氏よりもエモーショナルでスムーズなプレイをする人でして、ギターの才能ということではポール氏より上かも。⇒問題発言。また怒られそう。でもオレはそう思う。)


 
   EX.8−2−1  ⇒PowerTab ファイル

 



 次のEX.8−2−2は、前回紹介したEX.7−4−1のものにおいて、5度の音にスライドをかけ、4度の音を経過音的に一瞬はさみながら移動していくというものです。(マイナーコードなので、イレブンス(11th)の音と考えても良いかもしれませんが)
 これも、トニー・マカパイン氏の考案によるもののようですが、このような音をはさみ込むと、次へのつなぎのためのフィンガリングも楽になりますので、けっこうアイデア賞ものかも。

 譜例では、このパターンをEmのコードにて展開し、次に、大きくスライドしてポジション移動した後、A7のコードでのパターンでもとに戻るような形にしてありますので、A7という、セブンスコードの構成音でのスウィープの小フレーズの練習にもなるかと思います。


 
   EX.8−2−2  ⇒PowerTab ファイル

  

 ちなみに、EX.8−2−2は、上記EX.8−2−1に接続でき、”Dmaj7−Em−A7” (⇒さらにDmaj7に戻っていただければokですが)という、keyがDのツーファイブの進行になるようにもしてあります。


 この他には、任意のkeyでのダイアトニックコード群の各コードを、1〜6弦におけるフォームにて連続して弾いていくといったものは、よく練習ネタとして挙がっており、メジャーセブンス、セブンス、マイナーセブンス、さらにはハーフディミニッシュのコード等をスウィープで弾くトレーニングとなったりします。


 このように、各種コードの構成音を駆使し、これに様々なテクニックを加えていただければ、スウィープピッキングでのフレーズのバリエーションは無限に作ることが可能となってきます。
 よって、これまでに解説したことを理解していただき、また、その手の曲におけるフレーズを分析する等した上で、御自分でも色々なパターンを作っていただければ良いでしょう。



 ということで、スウィープピッキング関連の記事は、次回で最終回となります。
 最後は、その他の応用パターンと、ギターソロの中でのスウィープのフレーズの使い方のコツあたりを書きたいかと思います。


 ⇒以下次回に続く
 


(2007年 12月分)

 <スウィープピッキングについて可能な限り解説します。(第9回)>


9−1. スウィープのフレーズのその他の応用パターン 

 前回においては、トライアド以外のコードの構成音を使ったパターンを紹介しましたが、引き続き、各種のテクニックを交えたような、その他のパターンも挙げてみたいと思います。

 EX.9−1−1は、第7回でのEX.7−4−1のEmのパターンに、右手指のタッピング(ライトハンド)にてさらに3度の音(G)、そしてスライドしての5度の音(B)を加えて、より広い領域にまで拡大したものです。
 これは、ポール・ギルバート氏が元祖だったかと思いますが、右手指はピックを持っているゆえに、中指を使っていただければ良いのかと思います。

 
  EX.9−1−1  ⇒PowerTab ファイル

 



 同様なものにて、右手中指にプラスして8フィンガー奏法的に右手小指のタッピングにて5度の音(B)も出すようにしたものがEX.9−1−2です。誰であったかは忘れましたが、過去にこれをやっていたギタリストさんがいらっしゃったかと記憶しております。

 
  EX.9−1−2  ⇒PowerTab ファイル

 



 また、次のEX.9−1−3は、上記のものと同様に右手タッピングを使うものですが、最も高い音としてだけではなく、フレーズの途中にも挿入するような形で使うものです。
 このような形で挿入することを行えば、色々なバリエーションが生まれるはずです。

 
  EX.9−1−3  ⇒PowerTab ファイル

 



 EX.9−1−4は、前回分に入れてもよかったのですが、ディミニッシュのコードトーンを並べた連続フレーズです。
 ディミニッシュ(正確にはディミニッシュ7th)コードは、全ての音が短3度の音程で並んでいることを特徴とするものですので、メカニカルなフレーズが色々と作りやすくなります。(⇒構成音中のどの音を先頭にして始めても同じ形になります。)

 コード進行中のディミニッシュコードの部分で使用できますが、少なくとも一部のジャンルを除いて、ロック/ポップス系ではディミニッシュが長く現れることは少ないですので、実用的には、マイナーkeyでのX7(ドミナントセブンス)のコード時に使用できるパターンいったことで考えていただければ良いかと思います。(マイナーkeyでのトニック時等でも使うことはできますが、わかりやすいという意味で)

 EX.9−1−4では、keyがAm時のX7であるE7の状態としてありますが、とりあえずこのような場合には、”X7のルート音の半音上の音から始まるこのディミニッシュパターンが使える”なんてことで覚えておけば良いかも。(⇒ディミニッシュスケールで考えていただいても良いです。)


 EX.9−1−4  ⇒PowerTab ファイル

 



9−2.効果的練習のためのさらなるヒント

 前回、効果的な練習方法の1つとして、”開放弦をミュートして左手のみで音を出していく”というものを挙げました。

 リッチ−・コッツェン氏やマイケル・ロメオ氏あたりでは、開放弦ミュート無しで、左手のハンマリング/プリング(⇒左手タッピング)のみでのフレーズを実際に曲中で活用していたり(1弦⇒6弦方向が多い)しますので、この方法は、練習用のみではなく、実用性のあるものであるとも言えるのですが、このような、ためになる(?)練習方法はその他にも色々とあります。

 これらにおいて、ポイントとなるのは、”通常使うようなパターンに対して、あえて難しくなる要素を加え、それにて練習を行えば、結果として通常パターンを弾くことが楽になる”ということです。
 一見バカらしいことに思えるかもしれませんが、この一種マゾ的とも言えるアプローチは、楽器以外の分野でも基本中の基本かもしれません。

 上記のEX.9−1−1のパターンに関しても、通常はEX.7−4−1のように行うところを右手にてもう1音加えて難易度アップ、これにて練習していくと、いつのまにやらEX.7−4−1の形は楽に弾けるようになってきます。(これホント )


 そのような種のものとして下のEX.9−2−1に示すのは、第7回で挙げたEX.7−2−1を全て人差し指で押弦していって弾こうというもの。(一部スライドを使うように変えてありますが)
 異弦同フレットの練習と思っていただいても良いですが、人差し指全体でのミュート効果を有効に使えることから、指の行き先位置さえしっかりと確保すれば、やってみると思ったより簡単に各音が出たりします。

 よって、これなどにて練習すれば、通常の各パターンも簡単に思えてくるかも。



    
   EX.9−2−1  ⇒PowerTab ファイル


 これにおいては、以前にもチョイと触れたようなパターンとして、”ルート⇒5度⇒オクターブ上ルート”というパワーコード系を人差し指1本で瞬時に移動できることには注目でして、これを使えば、ブリッジ方向への大きなポジション移動を絡めたフレーズの新パターンが色々とできそうです。

 一例として、EX.9−2−2を挙げておきます。


   
   EX.9−2−2  ⇒PowerTab ファイル

  



9−3.これからの時代のスウィープの使い方

 スウィープ奏法というものは、未だに、メタル系のジャンルにおいての速弾きフレーズ中で使われるというイメージが、どうしても強いものであるのですが、今回の流れの中でも書いたように、一般のロック系のジャンルの中でも大いに、かつ気軽に使うべきものかと思います。(ただし、決してクサくならないように使うのがコツですが)

 ハンマリング・オンやプリング・オフといった従来からのテクニックと同格的な一般テクニックになりつつあると主張するかたも多くいらっしゃるわけですので、なおさら、お気軽に使ってみてはいかがでしょう。ひたすら連発しなくても、ソロ等の流れの中でチョコっとずつ使っていただければ十分です。

 特に、エコノミーピッキングの範囲までで考えれば、よりそのお薦め度は強まるかと思うのですが、これまた以前に書いたように、意識しないであいまいに使ってしまっている場合も多いものですから、より基本事項を確実につかんでおく必要があるかとも感じるわけです。

 これまでの9回の中で、スウィープピッキングを使ったフレーズを構成する基本のネタについては、かなり提示したつもりです。
 基本事項を十分におさえた上で、これらを組み合わせ、各種テクニックも駆使していただければ、自分流のフレーズを作っていくことができるでしょうし、さらに、曲のコピー時等にも効率化を図れるかと思います。



 ということで、9回にも渡って書いてきたスウィープピッキングに関する記事ですが、今回でひとまず終わらせていただきます。
 巷の教則本やサイトの内容にて気になっていたことは、できるだけ書いたつもりですが、まだまだナゾな部分があるかもしれません。疑問点等に関しては、メールでも受け付けますので、お気軽にお問い合わせいただければとも思います。


 さて、新年(2008年)からのこのコーナーにおいては、まずは軽い話からいきたいと思っておりますが、その後、本年(2007年)に試作した、新考案のヒールレスジョイントのシステムを使ったストラトの記事や、いよいよ再発売なるか??という当方のチューブディストーションの記事を載せていきたいかと考えております。
 さらに、これに合わせて、当方のバンドのデモ音源も上がってきそうなので、チョコチョコと発表していきたいかと思っておりますゆえ、乞う御期待。