BASS、これだけは知っておこう!(演奏の基本編)


 ベースを演奏するに当たって、少なくとも知っておくべき知識です。 曲のコピーを2〜3年続け、ある程度の経験を積んだならば、このような事項を意識するようにしていってみてください。
 ”バンドのサウンドにおいて、ベースとはどのような存在であるのか?”を十分に理解することが重要です。 ボーカリストやギタリスト等、他のパートの立場から見ると、どのようなベースラインが欲しいのか?というようなことも考えてみるようにしましょう。


<ベースの役割とは?>

 バンドにおけるベースの役割として、最も重要なことは以下の3つのことになります。


 1.低音部を支えること

 2.リズムを支えること

 3.コード進行を支えること


<では、どのようにすれば良いのか?

 上記の役割のために、具体的に行うことの概要は次のようになります。

(1) 各種リズムの基本パターンを理解し、ドラムスとの連携を図る 

 ベースはリズム楽器として、ドラムスとのコンビネーションが重要となります。 

 したがって、ベーシストもドラムスの代表的な基本パターンを覚えておくようにし、また、オリジナル曲等においては、ドラマーとの密な打ち合わせ等が必要になってきます。


(2) バスドラとアクセントのタイミングを合わせることが基本

 ドラムスとのコンビネーションにおいては、まずは、同じ低音部を出すものであるバスドラにアクセント部分を合わせることが基本となります。
 スコア譜等で、ベースラインの符割りと、ドラム譜でのバスドラ部の符割りとの関係を確認してみると良いでしょう。


(3) コード進行を他のパートに明確に示すことが重要な役割! コード進行が感じられるようなベースラインこそが良い!

 ベースは、ボーカリストやギタリスト等、他のパートに対して、コードが進行していく状態を明確に示す必要があります。 
 ボーカルのバッキングにおいて、ギターが本来のコード進行と異なるコードや音を出してしまうと、ボーカリストは歌えなくなってしまうように、ベースにおいても、本来のコード進行がわからなくなるようなベースラインを弾いてしまえば、 やはり、ボーカリストは歌えなくなってしまいますし、ギタリストはギターソロ等を弾けなくなってしまいます。

 したがって、ギターソロのようなメロディライン的な音の並びでベースラインを弾くことはあまりできないということでありますが、”ドラムスとマッチしたリズムを出しながら、コード進行感も出すという本来の仕事の範囲内で、 いかに個性を出すか?”ということが、”ベース演奏の本来の醍醐味(おもしろさ)”であるわけです。


(4) そのためには、コードの構成音を使ってベースラインを作ることになる!

 (3)のことから、ベースの音のラインは、その部分のコード(和音)を構成している音を使って作ることが基本となります。
 ベースにおいては、複数の音を同時に和音として出すことは少ないですので、結局は、コードの構成音を1つずつ単独で弾いていくような形となり、ある意味、ギターにおけるコードアルペジオ(⇒分散和音と言ったほうが良いですが)的なイメージととらえられがちです。
 しかし、これらのものと決定的に異なる点は、ベースラインに使う場合には、コードの構成音中で”使用すべき優先順位”があるということです。


(5) ベースラインにおいては、”ルート音と、5度の音”が最優先!、かつ、これだけでも十分!

 ベースにおいては、基本的には、コード(和音)の構成音の土台部分および骨格部分を形成する音である、そのコードの”ルート音(完全1度の音)と5度の音”を主体としながらベースの音のラインを作っていくことが必須事項となります。

 コードが変わったら、まず最初に、そのコードのルート音と5度の音を弾くようにすれば、少なくとも間違いの無いことになります。
 よって、このことから、基本的にはルートと5度、そしてこれに経過音等を少々加えるだけで、必要十分なベースラインを作ることができますし、使用する音の種類は、この範囲に留めたほうが、かえってベースらしいラインを簡単に作ることができるとも言えます。


(6) 同一のコードが続いている間は、ルート/5度以外の音にも移動できる。 が、しかし!

 (5)で述べたように、コードが変わった最初の部分で、そのコードの”ルート音と5度音”を出し、”コードが確かに変わった”ということをバンドの他のパートに知らしめれば、同じコードが続いている範囲では、 ”ルートと5度”以外の音の領域に動いていけることになります。

 ただし、これにおいても、そのコードやコード進行全体のkeyの雰囲気に逆らうような音の使用、および”音のつなげ方”をしてはいけないわけですので、少なくとも、ロックやポップス系の曲においては、 そのコードの構成音と経過音程度に留め、スケールをフルに使用する等は、あまり好ましくないことになるでしょう。 (ただし、ブルースの3コード進行、マイナーkeyのコード進行、マイナー系コード等では、マイナーペンタトニックスケール(ブルーノートペンタトニックスケール)を使用する等は、よくあるものになります。)

 特に、他のコードの”ルートと5度”を強く感じさせてしまうような音の動きは厳禁となりますので、要注意です。(⇒他のパートの人が、コードが変わった(⇒コード進行が発生した)ように誤まって感じてしまうためです。)


(7) 次のコードへなめらかに音をつなげることも基本事項!
 
 コード進行を明確に示すためには、コードが変わる部分において、コードが進行する感覚を強く感じさせるような”スムーズな音のつなぎ”を行うことも重要となります。

 次のコードのルート音へ半音下の音からつなぐような、”アプローチノートや経過音(パッシングトーン)の類”や、”5度進行を利用して、次のコードのルート音の5度上の音をラインに挿入してつなげる”といったものを頻繁に用いることになります。
 いずれにしても、コード進行の様子を常に把握しておき、次に出てくるコードの音の位置(特にルート音)を絶えず予測しながら、ベースラインを組み立てていけるような能力が必要となってきます。


(8) 結局、他のパートに明確なベースの音が聴こえなければ意味が無い!

 (1)〜(7)のことから言えることは、”結局、ベースの音がはっきりとバンド内の他のパートの人に聴こえなければ意味がない”ということです。

 耳コピー等を行う際に、何度繰り返して聴いてみても何を弾いているのかわからないようなベースラインの曲がありますが、そのようなものは、そのバンドの各パートの人達にとっても”困ったベースライン”であるはずです。
 ベースラインがよく聴こえず、コード進行の様子がつかめなければ、理屈的には、他のパートの演奏は困難になってしまいますので、ベーシストはこのあたりをしっかりと認識して、責任を持ってベースラインを考え、演奏することが必要となります。


(9) ”ルート弾き”のみでは、いけないのか?

 ベースの役割を考えれば、ベースラインが各コードのルート音のみでも、何ら間違ってはいないことになります。

 ただし、曲のジャンルによっては、ルート音のみでは音の厚みが足りなくなる等があるため、必要範囲でコードの他の構成音等を加えていくということが多いということです。
 これを逆に言えば、曲のジャンルによっては、ルート弾きのみのほうがマッチすることもあるということですので、状況に合わせてベースラインに使用する音を選択することが必要ということになるわけです。 (⇒これに関しては、曲をどれだけ多くコピーしたか?という経験量によって見えてくるところです。)


<これさえ与えられれば、とりあえずベースは弾ける!>

 ベースにおいては、次のことが与えられば、とりあえずは何らかのベースラインを弾き出すことが可能となります。
 逆に、これらが与えられないと、ベースラインを作ることは困難となるということです。(⇒もちろん、多くの曲をコピーして、各種基本事項、そして各種ベースラインのパターンを感覚的にも身に付けておくことは条件となります)

 (1)コード進行

 (2)基本となるリズムパターン( ビート等を含む。 ドラムスの基本パターンと考えても良い。)

 (3)テンポ(曲の速さ)


<ベースラインに使用する音の種類の順>

 上述したように、ベースラインに使用すべき音は”ルート音と5度の音”がメインとなりますが(⇒ルート音のみでも可ではあります)、それに加えて音数を増やしていく場合に、加えるべき音の種類の基本的な優先順位を示します。

@ ルート音と5度音

A @に対する、経過音やアプローチノートの類

B ”3度の音”や”7度の音”等、”ルート音と5度の音”以外のコードの構成音

C その部分のコードおよびコード進行で使用できるスケール上の音

 ただし、Aは各種音に対して使用できます。


<ベーシストが最低限覚えておくべき事項>

 これまでのことから、ベーシストが少なくとも覚えておくべき事項を下に示します。


@ 各弦の何フレットが何の音(音名)であるかを覚える。(特に3弦/4弦部分(←4弦ベースの場合))

A 指板上において、基準となる音(⇒コードの場合はルート音)に対して、各度数の音がどこに位置するかを図形的に覚える。

B 各種コードの構成音を覚える。(⇒各種コードが何度の音から構成されているかを覚える。)

C AとBのことから、各種コードについて、指板上においてルート音に対する各構成音の位置を直ちに見つけられるようにする。

D 一般的な曲で使用される、各種ビート等のドラムスの基本パターンを覚える。(⇒特にバスドラのパターンには注意して覚えるようにする。)

E Dにおける、各種リズムパターンについてのベースラインの例を数多く体得し、それを状況に応じて使いこなせるようにする。


<休符の類の表現は、ノリを出すためには最重要!>

 基本リズムにおける各種ビートやノリをうまく表現するには、休符の部分、またはこれに準ずるような部分を的確に表現することが重要事項となります。(⇒これは他のパートでも同様ですが)
 すなわち、いかに音を出すかではなく、いかに音を出さないようにするかということがリズム表現には大切であるということです。
 
 16ビートのリズムにおいては、16分休符の部分をジャストでしっかりとミュートしないと16ビートには聴こえないことが多いですし、単純な8ビートであっても、的確なミュートピッキングによるゴーストノートを入れる/入れないでは、 ノリの良し/悪しは格段に違ってきます。
 
 このようなことは、教則本等にはなかなか明確に説明されていないことが多いわけですが、その理由としては、言葉では表現しずらく、多くの曲のコピーによって経験値として体得していくしかないということであります。 (⇒逆に、教科書どおりの演奏では、例え”ルート弾き”であっても、つまらない音しか聴こえてこないということでもあります。)

 今一度、現在の自分のリズム表現に対するアプローチを確認してみてください。