中級者のためのワンポイントアドバイス(器材/操作設定編)


・チューブアンプの扱い方の基本事項


・マーシャルや、メサ・ブギーに代表される”チューブアンプ(真空管回路のアンプ)”は、歪ませた場合の音質は最も良いものでありますが、その扱い方においては、覚えておくべき様々な注意事項があります。


1.チューブ(真空管)には寿命があるということ

 ⇒チューブはトランジスタ等の半導体素子と違って、使用すればするほど劣化が進み、結果的に、寿命が早まるということがあります。特にパワーアンプ部のチューブは、毎日数時間ほどずつ使用すれば、半年から1年で寿命が来る可能性があり、交換作業が必要です。作業はメーカーや専門店に依頼することになりますが、チューブ代も含めて数万円はかかることになることが多いです。

 このため、近年では、チューブが劣化しやすいパワーアンプのみをトランジスタ(⇒電界効果トランジスタ(FET))回路とした形式のアンプも増えております。これであれば、多少は音質は落ちることにはなりますが、メンテナンスの面では遥かに効率の良いものになります。

 逆に、プリアンプ部のチューブは、ある程度の年数はチューブがもちますので、パワーアンプ部のチューブほどメンテナンスを気にする必要はないことになります。
 チューブが劣化すると、歪みの度合い、そして音量が低下する等の現象が発生しますが、パワーアンプ部のチューブの劣化においては、アンプのヒューズが切れやすくなるという現象も見られます。


2.アンプのスイッチの入れかたには順序があります

 ⇒チューブアンプには、通常の電源スイッチ(POWERスイッチ)の他に、電源スイッチを入れた後にさらに入れるようにする”スタンバイスイッチ(STANDBYスイッチ)”が付いております。 したがって、これにてチューブアンプかどうかを見分けることもできますが、このスイッチがある理由は、チューブ(真空管)は本動作の前に、あらかじめ内部のヒーター回路のみを動かして電極を暖めておく必要があるからです。(⇒チューブ内部で、カソード(陰極)から電子を飛ばしやすくするためです。)

 よって、アンプを使用する時は、まずPOWERスイッチを入れ、2〜3分経過してからSTANDBYスイッチを入れるようにします。このようにせず、いきなり両スイッチを入れてしまうと、チューブの動作に負担がかかり、チューブの寿命を早めてしまいます。

 また、電源を切る場合も、両スイッチを同時にOFFすると大きなノイズ音が出ることがありますので、スピーカー等を痛めないように、STANDBYスイッチをOFFしてから1分ほど待って、POWERスイッチをOFFするようにしたほうが良いですぞ。(通常の説明書等では、”両者同時にOFFしても良い”と書いてあることも多いですが)


・ヘッド方式のアンプの使い方の基本事項


・通常のチューブアンプのヘッドも含め、アンプの電気回路本体(プリアンプ+パワーアンプ)とスピーカー(キャビネット)が分離されているヘッドタイプ(セパレートタイプ)のアンプを使用する場合には、以下のような注意事項があります。


>1.”アンプの出力インピーダンス”と”スピーカー(キャビネット)のインピーダンス”を合わせること

 ⇒アンプの出力ジャックには8Ωや16Ω等のインピーダンス値が表示されておりますので、これに接続するスピーカーも、必ず同じ値のものとする必要があります。この値が異なると、場合によってはパワーアンプの出力段の回路が壊れてしまう可能性があります。スピーカーキャビネットによっては、インピーダンスの切り替えスイッチが付いているものもありますので、アンプの値に合わせて切り換えるようにします。


2.スピーカーを接続しないでアンプを作動させないように

 ⇒アンプヘッドには、ヘッドフォンジャックや、録音用のラインアウトのジャックが付いていて、スピーカーから音を出さなくてもアンプの音を聴くことができますが、基本的にはアンプの出力に常にスピーカーを接続しておかないと、1と同様にアンプの回路が壊れる可能性があります。
 ラインアウト等を利用して、自室において、スピーカーから音を出さずに音を聴く場合には、そのアンプヘッドにスピーカーを外しても作動させられるような機能が付いている必要があります。これは、マーシャル等では”OUTPUT MUTEスイッチ”というものになりますが、このような機能がない場合は、アンプのスピーカー出力にダミー抵抗というものをつなげば良いことにはなります。


3.空間系エフェクターを使用する場合は、SEND/RETURN機能(エフェクトループ)を使用する

 ⇒これはヘッドに関わらず、アンプで音を歪ませる場合には共通事項ですが、空間系と呼ばれるエフェクター(ディレイ、リバーブ、コーラス、フランジャー、フェイザー等)を使用する場合には、歪ませた後にかけるようにしないと、音が崩れてしまいます。
 よって、アンプ内のプリアンプで歪ませた後に空間系をかけるには、アンプにSEND/RETURN機能が付いている必要があります。近年の大型アンプでは、必ずこの機能は付いていると思いますが、アンプのゲインボリュームをある程度上げたならば、必ず空間系エフェクターはSEND/RETURN間に入れる必要があります。


4.ボリュームペダルの位置にも注意!

 ⇒ボーカルのバッキングとギターソロ間における音量調整には、ボリュームペダルの使用が最も効率が良いことになります。(ブースター等の使用は、音量設定の自由度に限界があり、また、ハウリング等の危険性もあります)
 しかし、アンプの前にボリュームペダルを接続すると、ボリュームペダルの状態によってアンプの入力レベルが変化しますので、音量変化に伴ってアンプでの歪みの度合いも変わってしまいます。(ゲインボリュームを調整するのと同様なことになりますので)
 したがって、歪みの度合いを一定にして音量調整を行なうためには、ボリュームペダルもアンプのSEND/RETURNに入れる必要がありますが、長いシールド2本でペダルを足元まで引っ張ってくる必要がある等、なかなかにたいへんなセッティングとなってしまうことはさけられません。
 このような問題対策として、MIDI信号等を使用して、リモートコントロールができるようなボリュームシステムもありますが、回路素子による音質の劣化が心配される等のこともあり、さらなる良い製品の登場が待たれるところです。


5.ヘッドとエフェクターの組み合わせに関しては、要検討です

 ⇒上記3や4のことから、ヘッドを使用した場合には、空間系エフェクターやボリュームペダルはSEND/RETURN間、コンプレッサー等の歪ませる前に入れるべきエフェクター類はアンプの前に接続ということで、複数のエフェクターを使用すると、その接続用のシールド類やコントロール系のフットスイッチ等を含め、大規模なシステムを構築する必要があります。
 したがってこのようなことからも、ヘッドの安易な使用は危険であり、事前に全体のシステムをよく検討しておくことが必要となります。


・ギターの3弦の話

・一般には、弦のセットは.009から始まり、.042または.046に終わるものを使われることが多いでしょう。(または、.010〜.046とか)
 このセットだと3弦は.016か.017であるのが通常かと思いますが,これがくせもの。チョーキングやビブラート時にけっこう負担ではありませんか。と言うより、チョーキングやビブラートに関しては、毎回正しい音程で変化させる等、正確な動作で行えているでしょうか?

 少なくとも初心者にとっては、.016や.017は太すぎ、手首や指を痛めやすいということがあります。(だいたいこれは外人サイズですので)
 ということで、当方としては、3弦に.014や.015の弦の使用等もお勧めします。これでは細過ぎると思われるかもしれませんが、テンションの低下するワウンド弦である4弦とのバランスはむしろこちらの方が良いとも言えるかもしれません。 イングヴェイ・マルムスティーン氏等も、3弦は.014を使っていたという話もありますし。(これは、あまり良い例ではないか・・・)

 とにかく、まずは手首のスナップでかける正確なビブラート/チョーキングができるようになってから弦は太くしましょうという話です。


・ジャック、プラグ、ボリュームのメンテナンスは必須事項です!

 ・エレキギター/エレキベースは、楽器であると共に電気機器でもありますので、良い音を維持するには、この”楽器/電気機器”両者に関する各種メンテナンスが必要になってきます。
 この中で、忘れがちなのが、ギター本体やアンプやエフェクターのジャック、またシールドケーブルのプラグ、またボリューム類の接点のクリーニングです。これらの電気接点は、使用していると空気中の煤煙等の付着によって汚れ、接触不良を起こしますが、この接触不良は、初期症状では”高音域の劣化”を生じさせ、ひどくなると、音が出なくなるという状態に移行してしまいます。

 よって、2〜3ヶ月おきくらいで良いですので、接点クリーナー等を使って汚れの除去を行なうようにするべきです。接点クリーナーはスプレー式のオーディオ用のものが、電器量販店(ビックカメラ、ヨドバシ等)等でも販売されております。
 ジャックやプラグは、その接点部分にクリーニング液を吹き付けてから、表面を綿棒等でふき取るようにするのがベストです。(クリーニング液は汚れを溶かすだけですので、拭き取らないと、汚れが残ってしまうからです)
 ボリューム類は、ギター等であれば、回路部のふたを開けて、ボリュームウラのポッド部分(金属の円筒形のカバーがかかっているところ)にカバーの切れ目(窪み)の穴から中に吹き込むようにし、その後何回かボリュームを回すようにします。(ただし、金属の円筒形カバーでは無く、小型でプラスチックの角型ケースになっているようなボリュームでは、クリーナーが使えないものが多いので注意です。この場合は交換するしかなくなります)

 もし、このようなクリーニングを行なっても、接触不良が直らない場合は、ジャックやボリュームの部品そのものの交換が必要ということになります。(通常は、少なくとも3〜4年以上使用すれば、交換ということになってきます)