初心者のためのワンポイントアドバイス(器材/操作設定編)



・はじめは、どれくらいの価格のギター/ベースを買えば良いのか?

 エレキギター/ベースの場合、2〜3万円等の安価な価格帯のものでも練習は可能で、とりあえずはバンド活動等においても使うことができるものです。

 2000年代に入るまでは、エレキギター/ベースに関しては、多少価格が高くても、やはり米国製または日本製が品質が良く、中国製/韓国製/メキシコ製等の安価なものは当たりはずれがあるので、避けたほうが良いとされてきました。

 しかし、近年では韓国製や中国製のものでも、作り手の技術の向上によって、安価であってもそれなりに安定した品質の製品ができるようになってきています。 たとえ1万円台のようなものでも、決してバンド活動に使えないような品ではなく、ある程度は対応可能な品質を持っています。

 また、最近では7〜10万円クラスのものでも、中国製の製品などもありますから、米国製や日本製のものを使うとすれば、ある程度高価なものになってしまいがちかもしれません。(生産国に関しては、ネック裏等に表示してある表示(”made in japan”等の表示)を見てみれば確認できます。)


 実際には、下記の項に挙げるような”本体に使われている木材の材質”の問題や、”ピックアップ等の電気部品の品質”による音質への影響の問題などがありますので、あまり安いものではきびしいという面もあるのですが、とりあえずは御予算に合わせて、無理をせず選んでいただければ良いでしょう。


・値段が高いブランドものが、必ずしも良いものとは限らない!

 上記の話とは逆に、近年では、米国製や日本製のものに以前よりも品質の悪いものが現れてきているという現実もあります。
 これに関しては、韓国/中国とは逆で、作り手の技術レベルの低下が原因として挙げられますが、多くのギタリストが欲しがるフェンダーやギブソンの数十万円のギター/ベースが全て良いものとは限らないということです。

 自分の持つ楽器に関しては、自室のインテリアにするのならばともかく、使いやすさや、実際に出てくる音等、総合的に判断して購入する必要があります。
 初心者のかたで、”どうしても、あこがれのブランドものギターを持ってみたい!”ということならば、購入されても良いですが、”高いだけの買い物”にならないように、十分に検討してから購入するようにしてください。


・ボディやネックの木材によって音は変わることになります!

 エレキギター/ベースは、電気信号を使って音を出しているとは言え、本体に使われている木材や金属部品などが全て音に反映されることになります。
 特に、ボディとネックの木材は音色/音質を決定づける要因の1つとなりますので、できるだけ良い種類の木材が使われているものを選ぶべきとなります。

 ネックに関してはメイプルという木材が使用されるのが一般的ですが、ボディに関してはそのギター/ベースの価格によって、使用される木材のグレードが異なってきます。
 4〜5万円以下のものでは、バスウッド等の安価な木材が使われがちであり、あまり良い音とならないので、これに関しては仕方がないところなのですが、一部のものでは、アルダー等、バスウッドよりは好ましい種類の木材が使われているものもあります。

 ギター/ベースを購入する際には、メーカーのカタログ等で、使用木材をチェックすることも行うようにしてみてください。


・安価なギター/ベースにおいては、ピックアップは良いものに交換したほうが良いことが多いです!

 ピックアップは、ギター/ベースの心臓部のひとつです。本体の価格が安いものの場合は、高性能のピックアップに交換したほうが、やはり良い音が出ることになります。

 ただし、ハイパワーなもの(出力の大きいもの)は音質において様々な問題が出ることが多いので、避けた方が無難となります。(⇒高価なギターでも同様なことが言えるということです。)

 交換時には、楽器に詳しい人や、楽器店にてよく相談されたほうが良いでしょう。


・最も問題が多いのは、ネックに関することです

 価格が高い/安いに限らず、ギター/ベースにおいて最も問題となるのが、ネックの仕上がり具合です。

 ネックには反りの調整用の機能(トラスロッドによる調整機能)がありますが、これによって調整できないほど木材が反っているものや、ネジレがあるものは、基本的に修正不可能です。(価格の高いものでも不良品は存在します)

 これに関しては、購入時に実際にものを見て確認する必要がありますので、やはり楽器類に詳しい人に付き添って見てもらったほうが安全です。
 よって、通販等での購入等は、初心者のかたでは、たいへんに危険を伴いますので、十分に注意するようにしてください。


・ディストーションはチューブ(真空管)方式で

 ギター演奏において、良い歪み音が出せなくて困っている人は多いのでは。 アンプで歪ませる場合、エフェクターで歪ませる場合共に、チューブ(真空管)方式のものがベストです。

 トランジスタ(IC)方式では、音ヤセのため他の音に埋もれてしまう、和音が崩れてしまう、ハウリやすい等良いことがあまりありません。 
 チューブ式ではこれらがほとんど改善できますが、チューブものの場合、本体が重い、100V電源となる、比較的高価になる等の問題はあります。

 また、チューブ式でもあまり良くないものもあるので注意です。(⇒電源に9〜12ボルトのACアダプターを使用するようなものは擬似チューブ回路と言えるものなので、避けましょう)


・アンプはJCであっても、チューブアンプに近い音を出すことは可能です!

 チューブディストーションを使用すれば、アンプがJC(⇒JAZZ CHORUS(ROLAND製))などのトランジスタアンプでも、マーシャルやフェンダー等のチューブアンプに近い音を出すことができます。

 ライブハウスやスタジオにおいては、常に良い状態のチューブアンプを使えるとは限らないので、アマチュアの方はこちらの方が安定して良い音が出せると思います。(JC−120、またはJC−160はスタジオ/ライブハウス共に、だいたいは置いてありますので)


・エフェクターはマルチタイプか? コンパクトタイプか?

 たくさんの種類のエフェクターを内蔵し、その接続、およびON/OFFまでも含めて一括でコントロールできるマルチエフェクターは、接続トラブルも少なく、たいへん便利なものですので、近年では多くのメーカーから発売されています。

 ただし、同じ種類のエフェクターでもそのメーカーによって、音質/音色が異なる場合も多いものです。

 したがって、自分の好みの音の各種エフェクターを組み合わせて使用したい場合は、マルチエフェクターでは不可能ですので、コンパクトタイプのものを使用するしかなくなります。

 また、逆に、2〜3個のエフェクターで十分な場合は、マルチエフェクターの使用では、重量が大きくなり、輸送の際にもかさばるものになってしまいます。


 このように、マルチエフェクターとコンパクトエフェクターは”一長一短”ですので、自分の求めるセッティングの形に応じて、マルチかコンパクトかを選択すれば良いこととなります。


・アンプモデリング機器は本物そっくりの音が出るの?

 ”アンプモデリング”とは、マーシャル、フェンダー、ブギー等の有名なアンプの音をディジタル回路技術(DSP等の技術を使用したもの)により再現し、エフェクター1台で様々な有名メーカーのアンプの音がスイッチ1つで作り出せるという便利アイテムです。

 近年のマルチエフェクターにも標準で搭載されているものですが、これはあくまでも”似たような音が出る”というレベルのものです。
 これは、現在のディジタル技術の限界によるもので、さらにこれから良いものに発展していくものと思われますが、CD製作等のための録音、または宅録ではそこそこ威力を発揮するものの、実際のライブでは、音質的に少々きびしいことも多いものです。(開発/販売コストが絡む、回路技術の理論上の根拠がある話として、本物と同じ音とするのは、現状では困難であるのです)

 結局は、本物のアンプを使用するのが一番なのですが、上記のチューブディストーションの使用等のほうが有効な場合も多いですので、このあたりの音作りに関しては、各自で十分に検討していくことが必要です。


・ラック式のエフェクターのほうがやはり良い音が出るので使うべき?

 (マルチエフェクターでは無く)単機能のエフェクターで比較した場合、近年の電子回路の技術には目覚しいものがありますので、コンパクトエフェクターでも、ラック式に劣らない音質のものがあります。
 また、マルチエフェクターにおいても、切り替えペダルやボリュームペダルを内臓したフロアタイプ(⇒床置き型)のものは、ラック式のマルチと同等な音質を持っているものがあります。

 ただし、レコーディング時に使用するような高品位の音質を追及すれば、ディレイやリバーブ等の空間系エフェクター等では、単機能に絞ったラック式のもののほうが音質的/機能的に優れていることはありますし、また、安価なコンパクトエフェクターやフロアタイプのマルチエフェクターでは、当然、ラック式のものに比べて音質はイマイチとなってしまいます。 

 逆に、単機能/マルチ共に、ラック式では本体の大きさもさることながら、それをコントロールするペダルボード等も必要になることが多いので、けっこうかさばるものになってしまいます。よって、輸送時には、手伝ってくれる人や、器材車がないと、なかなかにきびしいところとなるものです。


 ということで、どのようなタイプのものを使うべきか?は、その音質で判断するというよりも、輸送の問題等に絡み、使用する状況によって判断することになります。
 少なくとも、普段のスタジオ練習時には、各自が輸送する必要があることから、結局は”小さくて軽いもの”こそが一番便利で良いということになってくるものです。よって、自室のみでの使用ならばともかく、一般のバンド活動においては、あまり大規模なラック式のエフェクターを使うには限界が出てくるのが実状です。


・”歪み系⇒空間系”がエフェクター接続での最重要点です

 マルチエフェクターの場合は、内蔵されているエフェクターの種類の接続順は、あらかじめほとんど決められていますので良いのですが、コンパクトエフェクターの場合には、その接続順は自分で決める必要があります。

 これにおいては、エフェクターの種類によって、その基本的な接続順が決まってくるのですが、最も守るべき重要なことは、”歪み系エフェクター(オーバードライブ、ディストーション、ファズ等)の後に空間系エフェクター(ディレイ、リバーブ、コーラス、フランジャー、フェイザー等)を接続する”ということです。
 これを逆に接続してしまうと、ディレイ音の崩れ等が発生し、たいへん聴きづらい音色となってしまいます。

 必ず、歪み系の後に空間系を接続するようにしてください。


・アンプで歪ませる場合には、アンプの”SEND→RETURN”機能を使って空間系エフェクターを入れる!

 上の項で述べたように、”歪み系エフェクターの後段に空間系エフェクターを接続する”ということが基本中の基本となるわけですが、アンプヘッド等で歪ませる場合は、アンプの前に空間系エフェクターを接続することができないことになってしまいます。

 したがって、アンプで歪みを作り、かつ空間系エフェクターもかけたいという場合は、アンプに”SEND→RETURN”の機能(エフェクトループとも呼ばれます)が付いていることが必要となり、これを利用して”歪み系→空間系”の状態を作ることとなってきます。
 
 ”SEND→RETURN”機能は、通常アンプの背面のパネルに、SENDとRETURNそれぞれのジャックが付いており、シールドケーブルをこれに接続し、SEND→RETURN間に空間系エフェクターを入れるようにします。
 このようにすると、アンプのプリアンプ部で歪みがかけられた後に空間系エフェクターがかかり、その後パワーアンプとスピーカーに入るということで(実際にはパワーアンプでも多少は歪みがかかるのですが)、問題なく音作りができるようになるわけです。

 通常は、50W程度以上の出力のアンプには、”SEND→RETURN”の機能が付いているはずですが、この機能がない場合は、アンプで歪ませる際に、空間系エフェクターをアンプの前に接続して使用することはできないことになりますので、御注意ください。(⇒このようなアンプの場合は、歪みもエフェクターで作るしかなくなります。アンプのGAINボリュームは1〜3程度にとどめ、空間系エフェクターより前に歪み系エフェクターを接続することになります。)


・アクティブピックアップのギター/ベースの使用に関しては注意してください!

 アクティブピックアップのギター(ベース)とは、楽器内部に電源(電池)を内蔵して、電気回路によって補助をさせながら、音が出る(信号を出力させる)ようにしたシステムを持つものです。電池を入れなければ音が出ないギター/ベースは、基本的にはこれだと思っていただいて良いわけで、近年のハード系のジャンル等では多く使用されています。

 この方式にすると、ノイズ(雑音)が少なくなり、またより広範囲の音が安定してしっかりと出るようになる反面、ピッキングの強弱が出にくいため、ピッキング力やピッキングのより良いコントロールが身に付きにくくなるという大きな欠点があります。

 よって、初心者の頃から、アクティブ方式のギター/ベースのみを使用してしまうのは危険ですので、このあたりは十分に注意してください。
 はじめはこれを避け、通常のパッシブピックアップ(電池を入れる必要のないタイプ)のもので十分に練習されたほうが良いでしょう。


・音量調整は、ボリュームペダルの使用が好ましいということ

 ギターの演奏においては、ボーカリストが歌っている時のバッキングの演奏や、ギターをソロを弾いている時等、場合に応じて音量を調整することが必要となります。(ベースにおいては、ギターほどの頻繁な音量のコントロールは行わなくても良いことになります。)
 これにおいては、楽器本体のボリュームの使用、エフェクター(ブースター)でのレベル設定の切り替え、ボリュームペダルの使用等が利用できますが、この中においては、ボリュームペダルの使用が、最も機能的かつ問題の少ないものになるかもしれません。

 ギター本体のボリュームを回して音量を調整することに関しては、演奏をしながら頻繁にボリュームを回すのは基本的に困難ですし、また、ギター本体で音量を落としてしまうと(出力レベルを下げてしまうと)エフェクターのかかりが悪くなったり、ノイズが増えてしまったりします。(⇒ただし、このようなことを逆利用するため等の目的で、本体のボリュームで音量調整や音質調整を行う場合もあります)

 また、エフェクターのレベル設定を利用して音量を切り替える方法(レベルを高めに設定したエフェクターのON/OFFや、マルチエフェクターのレベル設定のプログラム(パッチ)切り替えを利用するものです)は、あらかじめ設定したレベル(音量)しか使えない(⇒その場の状況に合ったレベルとならないこともありえます)ことや、もともとのレベルを上げてしまう(ブーストする)とハウリングが発生しやすい等の問題があります。

 この点、ボリュームペダルを使用した音量調整は、あらかじめアンプのボリュームで最大音量さえ設定しておけば、その最大音量から音量ゼロの間で無段階で音量を調整できますし、もともとのレベルをアップ(ブースト)させるわけでは無いので、ハウリング等の危険性も少ないことになり、大変好ましいものになります。
 演奏しながら、足でペダルを踏んでの音量コントロールは多少の練習が必要ではありますが、近年のマルチエフェクターでもペダルが標準装備されていることが多いですので、これは利用したほうが良いということになるでしょう。


 ただし、注意点としては、以下のようなことがあります。

1.音量を下げた時に音質の劣化(高域が少なくなり、音がこもる等の現象)は必ず発生しますので(これはギター本体のボリューム等でも同様ですが)、音質劣化の少ない製品を選ぶこと→BOSS等の製品では、とりあえずは、だいじょうぶです。


2.BOSS等の単品で販売されているペダルにおいては、接続する機器の種類によって、HタイプとLタイプの2種のペダルが用意されている場合があります。

 Hはハイインピーダンスの意味、Lはローインピーダンスの意味で、これは、出力インピーダンスがハイインピーダンスの機器を接続して入力する場合はHタイプ、出力インピーダンスがローインピーダンスの機器を接続して入力する場合はLタイプを使用するということになります。(これを間違えると、ノイズが増えたり、ペダルを踏み込んでいった場合の音量の上がり方が、好ましいものでなくなったりするというような問題が生じます)

 これに関しては、まず、エフェクターやアンプで作った音質(特に歪みの程度)をそのままにして音量調整をしたい場合は、基本的にLタイプのペダルの使用になると言えます。例えば、アンプの前にエフェクターを接続して使用する場合は、エフェクターの最後にペダルを接続してアンプに入力するのが基本ですが、この場合はLタイプの使用です。また、アンプで歪ませる場合の音量コントロール時にも、アンプのSEND−RETURN間にLタイプのペダルを入れることになります。

 次に、ペダルの位置によって、音量調整と共に、歪みの程度(歪みのレベル)もコントロールしたい場合等には、ギターから直接ボリュームペダルに接続することとなり、Hタイプのペダルの使用となります。ただし、プリアンプ内蔵のアクティブタイプのギター/ベースの場合には、Lタイプのペダルを使用します。(ギター内蔵のプリアンプは、エフェクターと同様な出力インピーダンスがローインピーダンスのものなのでこのようになります。⇒パッシブタイプのギターの場合は出力インピーダンスはハイ、アクティブタイプのギターの場合は出力インピーダンスがローと考えてください)



・ロック式のアームユニットは、必要な時のみロックするようにしましょう!

 フロイドローズ等のナットで弦をロックするタイプのアームユニットの場合、ブリッジ部分にファインチューナーが付いているからと言って、ナットでのロックをしたままで常に持ち運んでいる人を多く見かけます。

 確かに、各部が正常であれば、いったんロックしてしまえばチューニングの狂いは基本的には皆無なのですが、これは同じ周囲の環境のもとでの話となります。もし、環境温度や湿度が大きく変われば、ネックの反り状態が変化し、いくらロックしてあってもチューニングは狂ってしまうわけです。
 そのようになれば、”ファインチューナーでチューニングを直せば良いではないか”と思われるかもしれません。しかし、これを繰り返していると、ロックしているナット部分を境として、ここからペグまでの部分と、ブリッジまでの部分で弦の張力に大きな差が出てくる可能性があります。
 このようになると、当然、ロック部分に大きな負担がかかり、ナットおよびロックするパーツにミゾが出来てしまったりして問題を生ずることが考えられます。

 また、ロックしたまま、ソフトケースに入れて持ち歩くと、ペグがいつのまにか回ってしまったりして、やはり部品に負担をかけることが心配されます。

 このようなことで、ナット部のロックは、新しい場所(スタジオやライブハウス等、演奏する場所)に行ってから初めて行なうべきであり、持ち歩く時等は解除しておくべきです。また、同じ建物内でも、他の部屋に持って行って室温等が変わった場合は、いったんロックを解除してチューニングをやり直してから、あらためてロックするということが必要になります。